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魔王になろう(本当の異世界を少女と歩むMMO-RPG)  作者: Tand0
Saga 3 少女と異世界を歩んだらこうなりました。
12/52

少女が暗い夜道を

 夜道を歩く。他国(スラッシュ王国)へと向かって。

 メイドのリナと一緒の小旅行。リナは付かず離れず、護衛として任を負っている。


 手には錫杖。その先にはランターン。


 歩くたびに金属同士が擦れる小さな音色。

 つばの広い帽子に、紺で統一した服に、青のマント。

 服装は魔王(マスター)が言うには正当な魔女の格好。

 魔王(マスター)の世界ではそれが魔法使いとしては定番の格好だそうだ。


 私はスルターナの街からスラッシュ王国へと向かっていた。


 一日1時間。夜の時間帯。


 ≪飛行≫をすればちょっとの距離でも、私は歩きたかった。

 ある程度歩いて、時間が来たらその日は終わり。

 家には≪瞬間転移≫スキルで戻る。

 そして明日のスタート地点は、≪瞬間転移≫で戻った所から。


 もちろん、≪瞬間転移≫を使えば視線の先にまで一瞬で飛べる。

 高速で転移を繰り返せば、おそらくそれで一瞬で目的地に着く。


 だけどそれは冒険じゃない。

 私がしたかったのは、冒険。


 それがいま果たされている。


「それで、魔王(マスター)は7日の間に5日。学校というものに通っているのですね」


 歩く道のり。私はずっと魔王(マスター)会話(wis)を続けていた。

 いままで、あまり長時間人と会話をするようなことがなかった私。

 素直に楽しい。

 しかも相手は異界の、多彩な知識を持つ魔王(マスター)だ。

 自らを嫁と呼んでくれる、夫? なのだろうか。


 学校とは、異界で生活するのに必要な常識を先生呼ばれる師から教えられる場所らしい。

 それを9年間連続で受けるのが異界の国民の義務。6年間の初等教育と、3年間の中等教育。

 そして魔王(マスター)はさらに3年の高等教育を受けている最中なのだそうだ。

 そのため、1日中私の相手ができるのは7日の内『土曜日』『日曜日』と呼ばれる特別な日だけで、それ以外のときは夜のこの時間帯だけしかこちらの世界にはアクセスできない、とのこと。

 他にも『祝日』という日があるらしいが、よくは分からなかった。


 こちらの世界には学校というものはない。


 貴族であれば教育者を雇うし、貴族でなければ教会が文字書き等を教える。

 高等教育や技術関係であればギルドで教わるか、または徒弟制度だ。

 私の教育も文字の読み書きとダンス程度でしかない。

 この世界に対する一般知識もあまり深くは持っていなかった。

 農家の教育などについては隣のリナに聞いて始めて知ったぐらいだ。

 魔王(マスター)との会話(wis)によって、いろいろな知識を得ることで頭が混乱してくることもあったが、私はなるべく忘れないように心がけた。

 これらの知識はいずれ糧になるはずだ。


「それで、魔王(マスター)ってどのくらい優秀なんです?」


 顔も姿も分からない魔王(マスター)


 しかし想いとは違い、いろいろ普通らしい。成績とか。

 私は自分の魔王(マスター)はすっごく優秀な方がいいな。というと土日以外に逢えるのは1日1時間になってしまった。異世界の勉強をもっと頑張るらしい。

 自分で言ってしまったのだから仕方がないが、そこは悲しかった。


 他にもいろいろな話をした。


 鶏肉が好きとか。油で揚げるとか、服装の話とか髪型とか。髪型は魔王(マスター)はツインテールというのが好きらしいので、今度したいと思う。

 そんな話をしていると今日も時間はあっという間に過ぎていた。


「では明日、またこの時間ですわね。木曜日の夜は≪飛行≫でスルターナ=スラッシュ国境まで行って朝にリナを通じて国境超え。金曜日の夜はスラッシュ王国の王都まで行って、土曜は一日、妖精族(フェアリー)のエアリ様を探しつつ遊ぶ、ということでよろしいですね?」


 帝国の貴族が帝国外へ越境することは普通に考えれば難しいものではあるが、メイドのリナはスラッシュ王国の間者だ。やろうと思えばどうにでもなるとのこと。


『良いと思うよ。じゃ、明日も楽しもう。じゃねーん』


 会話が途切れる。その日の冒険はそこで終わった。


 ≪瞬間転移≫でリナとともに家へと戻る。

 後は夜着に着替えて寝るだけだ。


 私は寝る前に≪瞬間転移≫のスキル情報を開いて眺める。


『スキル名:瞬間転移――

習得可能 Job.Level.30 / Skill.Level.13 (MAX 20)

空間魔術の代名詞スキル。一度でも見たことがあるのなら、その場所に瞬間転移ができる。

使用MPは距離、最大移動可能距離はスキルレベル、リキャストタイムはINTに依存する。

ただし異世界間移動時にアイテム/装備品は持ち込めない。

また、生存できない地域に転移すると死ぬ。

- Level.1 1cm,

- Level.2 4cm

- Level.3 8cm,

- Level.4 16cm,

- Level.5 1m (1キャラ分),

- Level.6 1m (1キャラ分/ここから攻撃回避可),

- Level.7 4m,

- Level.8 8m,

- Level.9 16m,

- Level.10 32m,

- Level.11 333m,

- Level.12 634m,

- Level.13 2,187km,

- Level.14 3,000km,

- Level.15 6,371km,

- Level.16 12,742km,

- Level.17 10光年,

- Level.18 10万光年,

- Level.19 10億光年.

- Level.20 160億光年』


 今のスキルレベルは13。最大レベルまでは後7足りない。

 13で止めているのは、それだけあれば大抵の近くの場所にいけるから、というのは魔王(マスター)の言だ。

 だけど私は最大の20まで取りたい。

 スキルの説明を何度も読み直す。その一文。


「ただし異世界間移動時にアイテム/装備品は持ち込めない。」


 アイテム/装備品は「持ち込めない」とあるが、逆に言うのであれば。


 もしかしたらこのスキルで、魔王(マスター)の元に飛べるかもしれない。


 空は飛べた。

 これから妖精さんにも会えるだろう。


 そしたら、次は――


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