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魔王になろう(本当の異世界を少女と歩むMMO-RPG)  作者: Tand0
Saga 3 少女と異世界を歩んだらこうなりました。
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悲しみにくれる少女が手にした

 男尊女卑がまかり通るこの世界「ディストピア」では、貴族の令嬢といえども、――ごく一部の魔術家であるといった例外を除いて――、子女に対して高度な教育は行われず、齢18歳になるまで隔離された奥座敷――通称深窓――で暮らすのが常であった。


 私、ジア・スルターナは公爵家の令嬢であり、なに不自由のない暮らしをしている。しかし本当の自由はなかった。環境は他の貴族令嬢のソレと同じであり、1日中屋敷から出ないことが殆どだ。どこまでも変わらない生活。ある種の閉塞感に苛まれるのは当然のことだと思う。


 私は今、年15歳になる。あと2~3年もすれば結婚することとなり、見知らぬ殿方の伴侶として嫁ぐ。


 ただ、それだけの人生。


 市井の民であれば女性でも否応なく働かされるという。それと今の環境、どちらが良い生活なのか? 確かに労働は辛いかもしれないが、それは活躍する機会でもある。

 どちらが良いといえるのか? 私には分からなかった。


 朝。


 私はいつものように目を覚す。ベットから起き上がると、机に無造作に置かれた絵本を手にした。昨日もまた同じことをしたと思う。


 その絵本は少女の憧れだった。もはや読まなくても分かる。


 それは、ライオンや案山子と冒険する格好の良い女魔術師。


 それは、モンスターを知恵と勇気で撃退する赤い頭巾を被った少女。


 それは、豚と罵られながらも都市にレンガの城壁を作り、多数の敵軍を打破する従士の三姉妹。


 それは、数々の男を手玉にとって7つの大罪宝珠を得んとする月の巫女。


 少女は憧れた。魔術師のカッコよさに。少女の勇猛さに。活躍する英雄に。女傑の強かさに。

 その絵本を胸に抱く。


 しかし、少女には絵本にでてくるような知力もなければ、ましてや筋力など当然ない。

 さすがに絵本の字は読めた。もちろん嗜みとして書くことも可能だ。

 でもそれだけ。


 魔術の専門知識もなければ、商家のような帳簿作成知識もまたない。

 これででは一人でやっていくことなど、できようはずもない。


 力が、欲しかった。


 もし力があれば――全てを変えることができるのだろうか?

 未来を、自らの手で掴めるのだろうか?


『力が欲しいのか?』


 どこからか声が聞こえる。それは幻聴。

 弱った私に、幻の声が響く。


『力が欲しいなのら、くれてやろう』


 ナニカが囁く。

 そこから溢れ出る、黒く禍々しいナニが。


(ちから――)


 この力を手に入れれば、きっとなんでもできるに違いない。

 そんな多幸感が私の身体を支配する。

 そして声の響きが私の身体を蝕んでいく。


 同時に、これは聞いてはいけない、と理性が抵抗する。

 身体のうちから、これは危険だとする警鐘が鳴り響く。

 これはきっと、人間を言葉巧みに誘い、魂を売り渡すことで闇に堕とす悪魔の囁きだ!

 彼ら悪魔は力を授けるが、その力を授かったものは衝動な破壊的に苛まれ、力はやがて世界を破滅に導くと言われている――


 それでも――


 この閉塞感を打破し、自由に生きられるようなチカラ。

 もしも、それが得られるのなら――


「――。はい」


 私は小さく頷いた。














 それが全ての始まりだった。


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