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らぶんちゅ ~宇宙で一番君が好き~  作者: CoconaKid
第一章 思わぬ遭遇 -君へのミステリアスな布石
8/100

 海賊達がログハウスの裏手に回るのを確かめ、安全を確認してからジッロがアクアロイドに言った。


「お前、ここに大切なものを引き取りに来る予定だったみたいだな」

「なんかそうみたいですね」


「おい、他人事のように言うなよ、お前のことだろうが。で、その大切なものってなんだよ」

「えっ? 大切なもの? はて、なんでしょう」


 またジッロは我慢できずに頭をコツいていた。


「あんたらさ、見てたらボケと突っ込みみたいよ。なんかいいコンビ」

 マイキーが背後で茶化す。


「だから、危険を冒してまでここにきてるんだぜ。マイキーも、もうちょっと真面目になれよ」

 ジッロは両サイドにボケがいることに疲れてしまった。


 そんな時、ログハウスの裏から恐怖に駆られた悲鳴が聞こえ、ビクッとするほど皆驚いてしまった。

 パニックになった男たちが、次々に走ってきては騒然としている。


「もうこんなところは嫌です。キャプテン、早く船に戻りましょうよ。やっぱりここはホーンテッドコロニーなんですよ。噂で聞いたことあるじゃないですか。 宇宙で死んだ奴らを慰める墓場があるって。それがこのコロニーなんですよ。だからここは霊をなぐさめるために自然が多いって訳ですぜ」


 そしてもう一人がはっとした。

「まさか、今ここで踏みしめてる土ってもしかして、死人のリサイクル……」


 それを聞いた一同は自分の足元を見つめてゾクゾクと震えだした。

 恐ろしい感情に我慢できなくなって「ギャー」と叫び声をあげるものもいて、益々パニックとなった。

 死人で出来た土を踏むのが嫌だと言わんばかりに、幾人も足を交互にじたばたさせている姿は滑稽だった。


「ふざけるな、バカ野郎! 何とぼけた事言ってんだ」

 ボス男も、苛立って叱りつつも、背筋が寒くなるほど気持ち悪く、顔が青ざめていた。

 手下の前では弱みを見せられず、威厳を保とうと真っ当な理由をつける。


「とにかくだ、ここにいても何も利益になるものはない。仕方ない引き上げるぞ」


 その報告を聞くや、折角かき集めたものもそこに置き去りにして、海賊達は我先にと疾走していく。


 海賊達が完全にこのコロニーから出て行くのを確かめさせるために、クレートはマイキーとジッロに後をつけさせた。


 海賊達の撤退は素早いものだった。

 誰もが飛び込むように船に乗り込み、さっさとコロニーのデッキから離れて宇宙に飛んで行く。

 マイキーとジッロは首を傾げつつも、奇妙なその海賊の行動に最後は呆れていた。


 二人が見張りをしている間にクレートはログハウスの裏に回り、海賊達が見つけたといった墓の様子を調べに行った。

 掘り起こした場所を確認したとき、そこには所々骨になりつつある、腐りかけた年老いた男の遺体が横たわっていた。


 さすがにそれは気味の悪いゾンビを想起させるものには違いなかった。


 これを見て悲鳴を上げる気持ちも分からなくはないが、それにしても冷静に見ればただ死体が埋まっているだけでこんなにも驚くものだろうかとクレートは腑に落ちないでいた。


 アクアロイドは相変わらず表情がないまま、死体をみても怖がることなく静かに突っ立っている。


「何かこの男に見覚えがあるか?」

「いいえ」


 顔が腐ってるので判別がつかないのか、本当に知らないのか、それとも嘘をついてるのか、クレートがどんなにアクアロイドの態度を読み取ろうとしても、息づかいや血液の循環の乱れでわかる動揺すら全く伝わってこない。

 人間が嘘をついてるときの目は瞳孔に変化がでるが、その目玉すらもないだけに全く変化する兆候を感じられなかった。


 クレートは辺りを見渡す。

 頭上は人工の青い空が広がり、柔らかな陽光で調整されている。

 本物の地球で見る空と言われたら信じてしまいそうだった。

 木々もバイオテクノロジーを駆使して人工で作られたとはいえ、それは宇宙を忘れさせるくらいのダイナミックな自然が再現されている。

 まるで本物の地球に来たと錯覚してしまうほど見事だった。


 暫く何もかも忘れて、この状況を受け入れてみたいという欲望が表れる。

 クレートは森に魅了されていた。


「よぉ、なんだかここが気に入ったようだな」

 見張りから戻ってきたジッロの声が背後からした。

 クレートは何も答えず、静かにジッロを見つめた。


「奴らはどうした」

「あいつらは一目散にここを逃げて行ったよ。よほど怖かったみたいだ」


 ジッロは墓に近づいて、死体を確認した。

 どきっとしたものの、海賊達が悲鳴を上げたほどのリアクションはなかった。


「なんかあいつら、あれでよく海賊とかできるもんだな。これぐらいの死体で驚くなんてさ。まあそりゃ、気持ち悪い事は確かだけどさ……」

 ジッロは死体に敬意を表すように胸に手を置き、目を瞑って黙祷する。


「ひえ~、なんか俺はやっぱり怖いわ。滅多にお会いしたくないですわ」

 ジッロの後に隠れるようにマイキーは大げさに怖がった。

「お前、ヘタレだな……」

 と後を振り返ろうとしたとき、ふと白いものがすーっと動くのが視界に入った。

 ジッロがドキッとしたその時、マイキーは突然悲鳴をあげた。

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