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らぶんちゅ ~宇宙で一番君が好き~  作者: CoconaKid
第七章 直感の導き -気になるほどに取り乱して
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 クレートの視線は刺さるようにシドを捉えていた。

 言葉なく訴えるその目は、シドの感覚を覚まさせる何かがあった。

「クレート、一つ聞いていいか」

 シドが静かに口をきいた。

 クレートはしっかりと目を見てただ頷く。


 周りのものは、たて突いてるクレートの行動に興味をそそられていた。

 そしてシドがどう扱うのか、その行動にも注目される。

 辺りは神経の高鳴りを敏感にさせるくらいにピリピリとして、音を吸い込んでしまいそうな静寂さに包まれていた。

 誰もが息を飲んで見守っているそんなときだった。


「4-leaf cloverという名前をなぜ組織名にした」

 全く関係のないシドの質問に意表をつかれて、誰もが眉根を寄せた。

 クレート自身なぜこのような質問をされるのか不思議だったが、四葉のクローバーといわれれば、どうしても自分の心に植えつけられた感情が芽生えてしまう。

 シロとコールドスリープカプセルで眠っていたキャムとの出会い。

 それらを思い出し、クレートは心に浮かんだ言葉を伝えた。


「それは導かれたものを感じたからだ。誰でも何かの縁というものがある。たまたま四葉のクローバーがその象徴として、ラッキーな意味合いで自分を導いてくれる。そういうものを感じたからその名前にしたまでだ。それがこの一件と何か関係あるのだろうか?」

「いや、ただの好奇心からだ。四葉のクローバーは私にもゆかりあるものでな。そんな名前を持つ組織のキャプテンがここに居ることに、何か私も不思議な縁を感じ、どこかでふと自分の判断が間違っているのではと導かれたと言えば君はどう思うかね」

「それは貴殿が思うことであり、私がどうこう言えることではない。だが、そうであるのなら、その結果の先には何があるのか知りたいとは思う」

 シドは笑っていた。


「クレート、私もスペースウルフ艦隊の艦長だ。ネオアースと宇宙に住む人類とは距離を保ち、独立した一つの国家を作ったリーダーと自負している。即ち、全 てにおいてニュートラルの地位を保っている。ならば、明確ではない一方的な情報に踊らされて私情を挟むのは自分らしくないと気づいたまでだ。よって、この 者たちを釈放する」

「シド艦長。それは」

「ガース隊長。私的な一件で巻き込んでしまってすまなかった。クレートの言う通りかもしれぬ。憶測で仇をとって万が一それが違ったら、私は恩師に恥ずかしいだけだ」

「しかし、こやつらは、コロニーを破壊した張本人ですぞ」

「それも分かっている。だがあのコロニーはかなり老化している旧型タイプのものだった。偶然が重なったことも考えられる」

「ですが、海賊の言い分を信じろとおっしゃるのですか」

「いや、全く鵜呑みにしているわけではない。だが、私はこの男の言葉に従った方がいいように思えてならない」


 気まぐれを起こしたシドにヤキモキしつつ、ガースはクレートを睥睨した。

 まさに「余計な事をしやがって」といいたそうにしていた。

 シドの命令で、海賊達の手錠が外され、そして自分の船に戻れと銃を背後に突きつけられながら歩かされていった。

 海賊のボスは何度もクレートを振り返り、何かいいたそうにしていたが、それもままならぬままに、部屋から追い出されていた。


 シドは他のものを全て追い出し、そしてクレートと二人で向かい合っていた。

「君は、弁護士に向いてるのかもしれないな。中々面白いところをついていた。楽しませてもらった」

「いえ、それはシド艦長に聞く耳と理解力があったからにすぎません。私は疑問に思った事を口にしたまでです」

「その割には、あの海賊を助けようとしていたように思えたが」

 中々の鋭さにクレートは驚いた。

 だが顔色一つ変えずに堂々と対応する。


「命が無駄に散るのを間近で見たくなかっただけにすぎません」

「まあ、どっちみちああいう者は長生きすることはないだろう。もう今となってはどうでもいいことだが。しかし、クレートのもたらした影響があったからこそ、このような結果になった。私は君に何かを感じたみたいだ。こんな感情は久しく味わってないだけに、不思議な気持ちだ」

「私は別に何も」

「いや、君は何かを隠している」

 クレートはつい息詰まってしまった。

「問い質したところで、君は何も言わないのは百も承知だ。とにかく肝の据わった男みたいだからな。私はそういう男は好きな方でな」

 どう返事していいのかクレートは困りかねた。

「なんか勘違いしているようだが」

 シドは笑いながら、部屋を出て行こうとした。


「シド艦長」

 クレートが呼び止め、シドが振り返った。

「シド艦長にとって四葉のクローバーはどんなゆかりがあるのですか」

 シドは少し間を開けて、微笑んでから答えた。

「”男のロマン”とでも言っておこうか。気障で陳腐な言葉にきこえるだろうが」

 冗談なのか、そうでないのか、それはシドの性格が現れているような気がした。

 しかし、シドにとっても四葉のクローバーが深くかかわりを持っていることはクレートにも大いに理解できた。

 それはお互い不思議な巡り合わせを感じてどこかで通じた部分がある。

 クレートもまたシドに好感を持っていた。

 スペースウルフ艦隊を見る目が変わった瞬間だった。

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