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らぶんちゅ ~宇宙で一番君が好き~  作者: CoconaKid
第五章 咲いた恋心 -どうしてこうなるの!?
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 人に尋ねごとをしただけで、簡単に道を外して転げて行く理不尽なこの状況にショックのまま、どこへ連れて行かれるか分からない不安と恐怖が頭の中を真っ白にさせて行く。

 何も考えられず、もしかしたら夢なのかと、放心状態でキャムは床に座り続けていた。


「君、そんなとこに座らないで、シートに腰掛けたら。席は一杯空いてるよ」

 キャムとそんなに年が変わらなさそうな男の子が、見かねて声を掛けてきた。

「あんたさ、一体どんな悪さしたの?」

 隣に座っていた女の子も声を掛ける。

 声のする方向に視線を向けるも、暫く言葉を忘れたように二人を見つめていた。

 そしてようやく自分と同じ状況の存在に気がつき、勢いついて声がでた。


「僕、何も悪いことしてません! ただ人に質問しただけでこんなことに」

 キャムの必死ないい訳に二人はキョトンとしていた。

「とにかくさ、落ち着きなよ。まずはそこの席に座ったら」

 男の子に言われて、キャムは腰を上げ、二人の向かい側に座った。

「まあ、皆、大概は同じこと言うね。悪くないって。あっ、俺、ロビンってんだ。そんでコイツがカナリー」

「僕はキャム。あの、君たちは兄妹なの?」

「一応そんな感じだけど、血は繋がってない。でも俺たちみたいなのは、皆、兄弟みたいなもんだけどね」

「俺たちみたいな?」


「俺たちはストリートチルドレンさ。親から捨てられた者や身寄りのない者が、自分達の力だけで助け合ってこの街で暮らしてるのさ」

「ちょっとロビン、私達には父親がいるじゃない」

 カナリーが口を挟む。

「まあ、血は繋がってないけど、一応父親の変わりとして、時々必要なものとか送って面倒みてはくれてるけどね。スポンサー的なものさ」

「スポンサー的でも、私は助かってる。こんなところで子供達だけで生きて行くなんて厳しいもん。中々会えないけど、あたいは感謝してるよ。それにチッキィだって病院にいけたのもお父さん達のお陰だもん」


「チッキィ?」

 前日、病院で出会った女の子もそんな名前だった。

 まさか同一人物?

 でもお父さん達という複数形の言葉を聞いて、キャムは首をかしげた。

「あのさ、お父さん達ってどういうこと?」

「そのまんまだよ。他にも支援してくれる人がいるってこと」

 ロビンがその後を続けた。


「だから、放って置けないと思って助けてくれる人達がいるってこと。親と死別した子は仕方ないけど、大体の親は育児放棄で勝手に産むだけ産んで捨てちゃったって感じ」

「親から逃げてきた子供もいるけどね」

 カナリーが無感情で付け加えた。

「でも、あたいにはお父さんの代わりになってくれる人がいるからまだ恵まれてるんだ」

 カナリーは手錠が掛かってある不自由な手で自分のポケットを探って、中から出てきたものをキャムに見せた。


「それは鳥笛……」

「うん、良く知ってるね。小さい頃、これで一緒に鳥と会話したの。結構これ珍しいものなんだよ。あたいとチッキィの宝物」

「チッキィって、あの小さくて髪がおかっぱで……」

 キャムは見たままの姿ををなんとか説明した。

「えっ、チッキィを知ってるの?」

 前日病院で見かけたこと、鳥笛のことを話すと、カナリーは益々目を丸くして驚いていた。


「へぇ、チッキィ病院でちゃんと治療受けてたんだね。よかった。やっぱりお父さんが助けてくれたんだ」

「そのお父さんだけど、その人も知ってるかもしれない」

 キャムは荷物の送り主の男の事も話した。

「うん、そうそう。私のお父さんもそんな感じだよ。ということはほんとにキャムは会ったのかもね」

 キャムはなんだか分からなくなってきた。

 あの悪そうに見えた男は、血の繋がらない子供達のために手助けをしていることになる。

 チッキィの治療費を得るために、ネゴット社から嫌な仕事を請け負ったことなのだろうか。


「他にも支援者が居るっていったけど、どんな人なの?」

「ネゴット社って知ってる? そこの社長さんらしいの」

 キャムは益々訳が分からなくなってきた。

 キャムの推理ではネゴット社がチッキィを人質にとって、あの男を脅迫していると思っていた。

 ここでそれが覆される。


「それって本当なの?」

「うん、お父さんがそう言ってたけど、これはあまり公に言っちゃいけないんだ。だから内緒ね。キャムは信用できそうだから言っちゃったけどね」

「カナリー、それぐらいにしておけ」

 ロビンがあまり話したくなさそうだった。

「何か都合が悪いことでもあるの? 僕、絶対いいいませんけど」


 こうなったらどんな小さな情報でも欲しくなってくる。

 キャムは摑まっていることを忘れて、あの時自分の感じた勘をなんとしてでも解明したくなってきた。

 クレートがその時どんなに心配しているか、まだ事の重大さに気がついてなかった。

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