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らぶんちゅ ~宇宙で一番君が好き~  作者: CoconaKid
第四章 幸運と誘惑 -研ぎ澄まされた感覚が意味するもの
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 目まぐるしく変わるカラフルなライトに照らされたカジノの入り口。

 その両隣には大理石で作られたよくわからない生物のオブジェが並んでいる。

 辺りは着飾った人々が激しく出入りして、一攫千金を狙う者は、その向こう先に続くキラキラ光る黄金色のカーペットに足を踏み入れていく。

 三人も周りの人々と同じように無言で中に入って行った。


 そこは突然宇宙空間が広がり、コロニーを飛び出た気分にさせられ、一瞬足が怯んだ。

 きらびやかな光が煩く灯る中での宇宙空間は、夜空の下のお祭りのようだった。

 全ては立体映像やイリュージョンで空間が特殊なものに彩られているだけだが、足元も宇宙そのものなために、浮いている気分になってしまう。


「なんだか俺、酔いそう」

 ヘタレなマイキーならではの言葉だった。

「ずっと宇宙にいるんだから、こんなとこまで何も宇宙を演出しなくても」

 ジッロも趣味の悪いところだと言わんばかりに、気に入らなさ全開だった。


 他の場所にしようかと二人が暗黙で顔を見合わせている間を、キャムはすーっと通り抜けて、フラフラと奥に入り込んでいった

「おい、キャム、どこへ行くんだ?」

「ジッロ、走るなよ。上も下も一緒に見えてなんか目が回る」

 キャムは二人の声など聞こえないというくらい、何かに導かれるかのように集中して進んでいた。


 薄型スロットマシーンが至る所で浮かんで移動して、客に遊べとアピールをしている。

 テーブルがあるところではルーレットやカードゲームで賑わい、その周りで人々が盛り上がっていた。

 膨大な宇宙空間はやはり見せ掛けで、ごちゃごちゃと色んなものが混ざり合ったその空間は、人がひしめきあってぶつかりそうに閉塞感たっぷりの場所だった。。


 スタスタと歩くキャムの後姿は、その人ごみの中に消えてしまいそうで、ジッロとマイキーは慌てて近づこうとするが、余計に人にぶつかってしまい、キャムとの距離をどんどん引き離されてしまう。

「おい、キャム、待てよ」

 思わずジッロが声を掛けるも、その声は周りの喧騒にかき消されて弱々しく届かなかった。


 とうとうキャムを見失ってしまい、ジッロとマイキーは慌てふためいた。

「おい、キャムは一体どこへ行っちゃったの?」

 マイキーはおろおろとする。

「嘘だろ」

 ジッロはまだ近くにいるに違いないとキョロキョロと何度も首を動かしていた。

 


「キャメロン、こっちよ」

 カジノに入ってから、キャムの耳に何度もその声が届いた。

 柔らかなそよ風のように、すっと耳もとをすり抜けて行く。

 術にかかったように、キャムはその正体をつきとめたい一心で周りのことが見えなくなった。


「誰、誰が呼んでるの」

 どうしても無視できない、波長が合うような心地よさがあった。

 それはこのコロニー内に入ってから、感じていたものかもしれない。

 ジッロが持ち出したカジノの話で、自分が同調したのもこれが大いに影響していた。


 あの時にふと感じたフィーリングが、ここでは何倍にも膨れ上がって胸をドキドキとさせた。

 こんな感情初めてだ。

 何かと通じてしまった一本の糸。

 いまその端を辿り寄せて歩いているような気持ちだった。

 やがてその先が見え、立ち止まったとき、周りの人々やカジノの様子は何も見えなくなった。。

 薄暗い中、仄かに灯った青白い光が一掴みほど揺ら揺ら前方で揺れている。


「僕を呼んだのは、誰?」

 青白い光がその時大きくなり激しく揺れた。

 その光に釘浸けになったキャムの瞳孔が開き、ぐるっと辺りが回転するようにバランス感覚を失いそうになった。

「大丈夫だから、自分を信じて」

 確かにそう聞こえた。


「誰なの?」

「いつか会える時が必ず来るわ。自分の感覚を見失わないで。あなたには感じ取れるはずだから」

 そして青白い炎が段々と小さくなり、今にも消えゆく。

「待って、行かないで」

 その光が消滅したら、その声も聞こえなくなると本能で感じていた。


 光は弱くなりやがて吹き消されるように最後はすーっと消えた。

 ふと気がつけば目の前には液体のように潤っている丸い銀の塊が、揺ら揺らと上下に揺れている。

 それは噴水から吹き出た水の上で転がされているオブジェの飾りだった。

 その形が認識できたとき、一気に周りの景色が飛び込んで、自分がカジノにいることに気がついた。

 全く訳のわからない体験だった。


 だが、どこか体の中にエネルギーが漲っている感覚があった。

 興奮冷めやらずにぼーっとする中、急に感覚が研ぎ澄まされ敏感になると、一気に目が覚めたようにびくっとしたその時だった。


「さあて、次の勝負に挑戦の方はいらっしゃいますか?」

 突然耳に入った声。

 それに反応するように、キャムはそこへと足を向けた。

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