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らぶんちゅ ~宇宙で一番君が好き~  作者: CoconaKid
第二章 チーム発足 -始まってしまったからやるっきゃない
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 クレート達は難を逃れ、安全な場所まで避難することができたが、ふと冷静になってみると全く予想もしなかった出来事に巻き込まれたことに困惑していた。


 誰もがカプセルの中で眠っている少年を見つめ、いい言葉が浮かばずに黙っている。

 艦内は、暫く静けさが続き、誰かが何かを言うのを待っている様子だった。


 マイキーは好奇心から、すぐにでも起こして話がしてみたいとうずうずしていたが、横目でジッロを見れば、面倒なことに巻き込まれた、ぶすっとした表情が浮かび上がり、お気軽なことを言えば反抗してきそうなのが伺えた。


 クレートも慎重にどうすればいいのか考えるからこそ、目を閉じて頭の中で色々なシチュエーションを想像しているに違いない。


 指示を出すのはクレートと分かっているだけに、マイキーも皆に合わせて黙りこくるしかなかった。


 アクアロイドは厳密にはこの少年の関係者には違いないだろうが、記憶がないだけに無関心さが無表情な顔から思いっきり漂っている。


 本当は何か考えているのかもしれないが、皆が黙っている以上、一番に声を発することは絶対なかった。


 こういう状況で一番我慢がならないのはジッロであった。

 誰も何も言わないことで、イライラし出して片足を揺らし始めた。


「あー、もう、皆なんで喋らないんだよ。いい加減、次どうするか決めてくれないか。このカプセルに人間が入ってる限り、気になるじゃないか。まさかずっと寝かしたままにしておくのか」


「寝かしたままって、置物にしておくのか。まあ、なかなかのお美しいお顔みたいですけどって、生きてる人間を飾るなんて趣味悪ー」

 マイキーはなんだか身震いしていた。


「しかしだぜ、今起こしたところで、どう説明すんだよ。墓には誰かが腐って埋まってたや、住んでたところは消滅してしまったとか、それで助けるために勝手に船に乗せて運んで来たって言っても、素直にはいそうですかって納得できるか? ショックも強いだろうし、最悪の場合、俺たちに責任転嫁されて、無意味に恨まれたらどうするんだよ」


「ジッロは巻き込まれるのとか面倒臭いこと嫌いだからな。でもさ、時間は掛かってもきっちり説明すれば分かってもらえるって。それに彼からも情報引き出せるだろうし、俺たちの知らないことも分かってすっきりするって。俺はすぐに起こすことに一票」


「マイキーは、後先の事を考えずに、その場で恣意的に行動するからな。もっと慎重になれ」


「ジッロだって、強引に自分の意見押し付けて暴走するときあるじゃないか」


 二人はこの時ぞばかりに思っていたことをぶちまける。


「あ、あの、ちょっといいですか」

 アクアロイドが遠慮がちに発言する。


「何か思い出したのか?」

 クレートが静かに尋ねた。


「あっ、いえ、あのですね、このコールドスリープカプセルなんですけど、放っておいても一定の時間が来たら目を覚ますようにセットされてるみたいです」


「誰が、カプセルの仕様を説明しろと。もっと大事なこと思い出せよ」

 ジッロはつい愚痴っていた。


「だから、皆さんがどうしていいのか分からないのなら、起きるまで自然に任せるっていうのはどうでしょう」


「それで、いつ起きるの?」

 マイキーが訊いた。


「はい、1年後の設定になってます」

「おいっ!」

 誰もが呆れてしまった。


「それはいくらなんでも待ちすぎ。それアクアロイドのボケなの? 俺より酷いわ」


 マイキーはやられたと半ば冷めた笑いであったが、ジッロは今にも飛び掛って齧りそうに歯を見せて唸っていた。


「もういい、今日はとにかく皆疲れているだろう。少し休んで体力を回復してから、明日起こすことにしよう。きっと説明するにも労力がいることに違いない」


 クレートの一言で皆、覚悟が決まったようだった。


「そうだな、そうするのがいい。それに腹が減ったぜ。俺たちがまずは落ち着くことだ。なあ、マイキー」

「うんうん、そういうこと、そういうこと」


 さっきまでいがみ合っていた部分はすでに消えていた。

 何でも言い合えては、後腐れない。


 狭い空間で一緒に生きて行くためには、なんやかんやとあるけれど、二人は息がぴったりあっていた。


「それじゃ、私が食事の用意をさせていただきます」


 アクアロイドはすくっと立ち上がり、勝手知ったると食糧倉庫に向かった。

 ジッロとマイキーもお手並み拝見と一緒に着いて行く。


 一人残されたクレートは静かにカプセルに近づいた。

 何も知らずに眠る少年のその表情を見つめ、目を細めた。


「一体どんな瞳の色をしているのだろうか」

 なぜかそれが一番気になることのようだった。

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