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いざっ!皇宮っ!

ラファリアット皇国――絶対的権力を持つ皇帝が統治する、世界屈指の大国。

高山と海に挟まれた肥沃な土地、豊富な鉱山資源を有する豊かな国。

農業、工業、漁業も盛んで『世界の台所』と言われているほど食材に恵まれている。

人口も多く、中でも帝都マルヴォーデリアには人口が集中している。

……大公邸を出る前にハロルドが教えてくれた、ラファリアット皇国の予備知識。

悪いけど、何の役にも立たないかも。

だって、私の旦那様となる人の情報は一切入ってないんだもん。

どんな人なんだろう、と不安になる。

見たこともない人と結婚なんて、現代日本人には考えられないもんね。

テレビで見る時代劇のドラマではよくある事けど、江戸時代とかその前に時代の女の人って、不幸だったなって思う。

結婚して初めて会って気が合えば不幸さなんて感じないんだろうけど、相性最悪だったら、もう不幸な事この上ないよね。

まだ見ぬ私の旦那様。どんな人なんだろう……。

「アンジュ様、もうすぐティーフォ川です。あの川を越えるともうすぐ帝都ですよ」

同じ馬車に乗っているミュスカが嬉しそうに説明してくれる。

この世界には自動車とか飛行機とかないから、移動手段は徒歩か馬車しかない。

今乗ってる馬車は観光地によくあるようなやつだけど、乗り心地は抜群。

クッションが低反発枕みたいな感じで気持ちいい。

馬は地球の馬と変わらないけど、かなり大きい。象なみの大きさ。

象なみのお馬さんが引いてくれる馬車は、わたしが乗っているのを含めて三台。

この馬車を挟む形で進む二台には沢山の嫁入り道具が入ってる。

もちろん、ジースト大公様が持たせてくれたもの。

ドレスとか家具とか、その他もろもろ。

ありがたやありがたや。

ほんと、大公様には感謝しかないよね。養女で、しかも三ヶ月しかお世話になってないっていうのに、こんなによくしてくれるなんて。大公領に足向けて寝れないよね。

ラファリアット皇国の大臣さんは、侍女をひとり付けての嫁入りを許可してくれた。

大公様は複数人を、と言ったのだけど、セキュリティの問題で許可されなかったの。

ミュスカのお母さんがラファリアット下級貴族の出らしくて、皇国のしきたりとかにも詳しいからって私に付いて皇国入りしてくれてる。

ラファリアット皇国に五年前まで住んでいたミュスカにとっては懐かしい光景なんだろうな。

「皇国ってどんな所? ジースト大公領とは違う?」

ハロルドが教えてくれなかった予備知識を補足しようと、ミュスカに聞いてみる。

ミュスカは昨日焼いておいたお菓子を取り出しながら、少し首をひねって考えている。

「そうですね、気候風土はそう大差ありませんよ。ただ、大公様ご一家は身分の低い者に対しても気安く話しかけられておられましたけど、皇国ではそういう事はありません。身分制度がしっかりしているので、平民は貴族を敬い、貴族間でも位によって差別化されてます」

「ふぅん……何だか面倒臭いカンジがするね」

「面倒、といえばそうですけど、皇国では当たり前でしたから」

ミュスカはくすりと笑って、紙皿にお菓子を綺麗に並べた。

馬車の中でも食べれるように、って焼いた、パイ生地の焼き菓子。

バターたっぷりの生地の上に砂糖をまぶして、両端からくるくる巻いてハート型にして焼いたもの。

名づけて『平家パイ』。

著作権とか商標登録は関係ない世界だけどさ、商品名を言っちゃ駄目かなって思ってのネーミング。

うん、遠足にはやっぱりコレだよね。

しっかしミュスカ。

そこそこ揺れてる馬車の中で、よく動けるよね、感心だわ。

「皇国下級貴族の息子は士官学校へ寄宿し、娘は上位貴族の屋敷に行儀見習いとして上がります。余程の下級貴族は別ですが、平民で貴族の家に侍女や下男として上がれるものはほとんどいません。私もそれに従って十二歳の時に伯爵家に上がり、そこでジースト大公様に引き抜かれてきました。下級貴族にとって、よりよい家格の家に上がれる事は自分の家に箔をつける事につながるんです」

ミュスカは器用に紅茶をカップに注ぎながら、どこか誇らしげに言う。

彼女は慣習に従って侍女になり、どんどん良い家にスカウトされてる事になる。

そして、今度は皇国の中央部である皇宮。

これって、すごい事なんだろうな。

「アンジュ様にお仕え出来て光栄ですわ。皇宮に上がれるなんて夢にも思いませんでした。これで実家も安泰です」

本当に嬉しそうな顔してミュスカが言うもんだから、皇宮に行くのが不安だなんて考えるのが馬鹿らしくなってきた。

考えてみれば、いきなりこっちの星に飛ばされて混乱した時より、マシだよね。

今から行きます、っていう心構えがるから。

よし、いざ皇宮っ!





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