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監視役は次男坊

「ん~! やっぱ、外の空気は美味しいね!」

ここ何日か、私は大公様のご命令でお屋敷の自室から出れないでいた。

何日だっけ? 確か、アマリア様と二人でおやつを食べた次の日からだから……一週間くらいかな。

もともとアクティブに動き回るほうじゃないけど、この世界にはゲームとかないから暇の潰し方が分からない。

貴婦人のたしなみ、とか言って侍女さんたちから刺繍とか詩の作り方とか教えてもらったけど、ちっとも面白くなかった。

かろうじて読書だけはうまいこと時間が潰せた。でも、大公家の蔵書は全部読み漁ってしまった。難しい司法大全まで読んじゃいましたからね!!日本にいた頃より法律知ってると思うわ!

流石に一週間も缶詰されちゃってたもんだから耐え切れなくなって、気が狂いそうになると直談判。

おかげで中庭に出させてもらったの。

まずは思いっきり深呼吸!!

お日様もぽかぽかで気持ちいいし、植物じゃないけど光合成してるカンジがするなぁ。

「あまり騒ぐな」

「はいはい」

私のお目付け役なのか、大公様の次男坊が背後でギロリと睨んでるのが分かる。

なんなのかしらね、全く。

私は監視されるような怪しい行動なんてしてないんだけど!

「ねぇ、そんなに睨みつけられるとリフレッシュも出来ないんだけど? そもそも、なんで監視されたり軟禁されたりしてんのか教えてよ」

「拒否する」

……即答かよ!

ってツッコミを入れたくなったわ。関西人じゃないけど。

しっかし、この次男坊、ムカツク。

大公様とアマリア様には三人の男の子がいる。

長男のエリック、次男のラルフ、三男のハロルド。

みんなブロンドでブルーアイ、ヨーロッパ系のお顔でイケメン。

エリックとハロルドはとってもいい人なのに、ラルフだけは超意地悪。

綺麗な顔してるのに性格悪いなんて、すっごく勿体無いと思う。

天は二物を与えず? って事かな?

「いいよ、ハロルドに聞くもん」

もう少ししたらハロルドが学校から帰ってくるはず。

私より五歳年下の彼は、ラルフと違ってとっても親切。

ってか、物凄く懐いてくれてる。

「……父上のところにラファリアット皇国からの使いが来ている。少々面倒な輩だから、お前がここにいるという事が露見すると厄介だ」

「ふぅん」

何でいきなり教えてくれたのかは分からないけど、ま、感謝するわ。

確か、ラファリアット皇国って、お隣にある滅茶苦茶大きな国だったはず。

この一週間で読み込んだ書物に載ってたもんね。確か題名は【大陸の覇者ラファリアット皇国の光と影】。なかなか読み応えがあって、睡魔がよく「こんにちは~」って来てたわ。ははっ。

その国の使者って事は外交官か何かかな。

ここは女神の聖地とも呼ばれてる自治区だから、何か重要な外交問題でもあるんだろうね。

どっちにしろ私には関係ないけど、挨拶しろとか言われたら嫌だから大人しくしておいたほうが賢明かも。

「ありがと。でさ、そのお偉いさんはいつ帰るの?」

「……色いい返事を貰うまで帰らんと言っているそうだ」

「うわ、超迷惑な話! お偉いさんってどこの世界でも我侭なんだね」

「……まあ、そういう事だからあまり目立つ行動には出るな」

どこまでも失礼な男だね、ラルフは。

私のどこが目立ってるって言うのよ?

日本にいた頃は何もしなくても目立ってるって言われた事はありけど!

ここ一週間はお城にずっと閉じこもってお菓子すら作れてないってのに!

私だって街に出て買い物したい!

こっちに来て何にも買い歩きしてないんだよ?

もっとも、この星のお金なんて持ってないけど。

「聞いているのか、アンジュ?」

「はいはい、わかりました」

ムカつくヤツはテキトーにあしらう。コレ基本よね。

あ~、こんな見張られてる感が気にならないように、夜ごはんでも作ろうかな。

こっちの世界の食べ物はなんとなく地球と似てて、調味料もなんとなく一緒。

ただ、味噌とか醤油がないのが残念。

こっちに来て大豆っぽい豆を蒸して味噌っぽく仕込んだけど、まだ食べられるまでにはなってない。

あと二ヶ月は寝かさないといけないから。

早く飲みたいなぁ、お味噌汁。

日本にいた頃はあまり好きじゃなかったけど、離れてみたら懐かしくて飲みたくてたまらない。

シンプルに豆腐とワカメの味噌汁がいい。

豆をどうにか豆腐っぽく作って、海草だったら何でもいいや。

適当にそれっぽいので代用しよう。

それに、お刺身も食べたい。

マグロ、サーモン、ブリ……タイとか白身でもいい。

お父さんが捌いた魚、美味しかったんだよね。

こっちじゃ生魚を食べる習慣がないから、どれが生食に適してるかも分からない状況。

まぁ、コバルトブルーとか蛍光イエローの魚の刺身が美味しいとは思えないけど。

そうだ、一昨日干したイカもどき。

食べられるか味見しなきゃ。

「アンジュっ」

大公様の三男坊ハロルドが真っ青な顔して抱きついてきた。

食べ物妄想に没頭してたから、前からダッシュしてきたのに気付かなかった。

それにしてもビックリした、いきなり飛び掛ってくるんだもん。

駄目だよ、いくら年下だからって女性にいきなり抱きついたら。

セクハラで訴えられるよ!

「何をしている! この馬鹿が!」

あれれ、なんでラルフが怒るんだよ。

私が怒らなきゃ意味ないでしょうに。

「だって、宰相閣下があっちに! 見つかっちゃうじゃないか!!」

さいしょう?

聞きなれないフレーズに「最小」とかって脳内変換しちゃいそうになるけど、違うよね。

多分あれだ、日本で言う大臣みたいなやつか?

「やっとお目にかかれましたな、異世界の姫君」



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