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ブリザード注意報

ずいぶん時間が空きましたが、再開いたします。

「この度は誠におめでとうございます」

壇上から降りた途端に、周囲に人垣が出来て囲まれた。

綺麗に着飾った人達が口々に祝辞を言い、女性はレイヴィスに、男性は私に集中砲火のように話しかけてくる。

美しいとかの褒め言葉に加え、年齢とか趣味とか、そういった事聞いてどうすんのか? って事を聞いてくる。

「アンジュ、踊るぞ」

音楽が流れ出し、レイヴィスは強引に男の群れの中にいた私を引きずりだした。

「踊るの? 料理食べたかったのに」

「文句を言うな。あのまま獣達に囲まれていたほうが良かったとでも?」

「獣達って……私が物珍しいんでしょ、異世界人だし」

やっぱりレイヴィスって毒舌だな。

「何を言う。獣達の目が欲望にまみれておったではないか」

「ああ、この二割増しな胸に寄ってきてたんだ、あの人たち」

男ってどの世界でも一緒なのか。

「あやつらの目的は胸だけではない――が、まぁ、いい。踊っておる間は近付かぬからな」

軽やかにステップを踏みながら、そんな会話をしているとはきっと誰も思っていないだろうなぁ。

先生に言われた通り、顔はにこやか超スマイルを持続してるんだもんね。

「上手いではないか」

「でしょ。練習したもん」

ダンスの先生と猛特訓したんだもん、当然よ!

ダンスは元々好きだったし、先生も楽しくって授業が楽しみで仕方なかった。

「あ、フジコちゃんだ」

濃い紫のドレスを着たフジコちゃんががっちりした体格の男の人と踊ってる。

皇太子夫人でも、他の男の人を踊っていいんだ?

「フジコ?」

「モルちゃんの事だよ」

「モルデイレンの事か?」

「うん、そう。モルちゃん」

「そなたは、私の名といいモルデイレンといい、妙な切り方をして呼ぶな。だが、なぜモルデイレンがフジコなのだ?」

お?

なんだ、レイヴィス。私の言動をいちいち突っ込んでこなくなったね。学習したね、ふふん。

「話せば長くなるから簡単に言うけど、私のいた世界の美女の名前。モルちゃんにそっくりなの」

厳密にいうと現実世界に存在してないけど。

今日のモルちゃんは一段とフジコっぷりが増してる。

レースもドレープもないシンプルなドレスだけど、身体のラインが綺麗で出てモルちゃんの曲線美がゴージャスにあふれ出てる。そこに下品ないやらしさは一切ない。

元から華のある美女は装飾品で飾らなくてもその存在だけで輝いてる。すごいなぁ。

某大泥棒さんじゃなくても鼻血が出るくらいの華がある。

「こういうダンスパーティには夫人でも他の人と踊っていいんだね」

「無論だ。パートナー同伴が出席の条件のひとつだからな。大抵は従騎士がその役目を負う」」

「ふぅん」

パートナー探すのも大変そうだよね。不倫とか疑われないのかな?

皇子の嫁だもん、そんな不埒な事するわけないか。

周囲を見渡すと、ブリブリドレス着たキャロラインも金髪の男の人と踊ってる。

白と黒の、レースたっぷりの本物のゴスロリ的ドレス。私が着たら、間違いなく痛い感じに仕上がると思う。

あのドレスが滅茶苦茶似合うんだもん、キャロラインってすごい。

ケータイの充電が生きてたら間違いなく写メ撮ってただろうな。

「あ!」

「なんだ」

「リジェーナ様、ハージェスさんと踊ってる! いいなぁ」

リジェーナ様は今日は一段と清楚な感じが溢れ出ていて女神感が増している。淡い水色のドレスが幻想的なまでに似合っている。

清楚なリジェーナ様と、男らしいハージェスさんの組み合わせはインパクト大。

っていうか、ハージェスさんがかなり格好良い。

ただでえモロ好み顔なのに、式典用の服を着て、髭まで剃ってるからド真ん中ドストライク!

素敵ですっ!!!!!

「……なぜそこで"いいなぁ"という台詞が出るのだ」

ありゃ、最後のセリフは心の中で言ったつもりだったんだけど、聞こえてマシタカ?

そんなにブリザード吹かさなくてもいいじゃんか~。

「アンジュ。そなた、まさかと思うがハージェスのような無愛想な男が好みだとか言うのではあるまいな?」

うおお、出たよ! 身勝手発言。

自分だって無愛想なくせに、自分の事は棚に上げまくりだね。

「どうなのだ?」

ああ、ブリザードが一層厳しく!

これじゃ南極のペンギンも凍死だよっ。

「レイだってあるでしょ、好みのタイプが。私はハージェスさんの顔がモロ好みなの。顔よりも声がドストライク。今日は髭も剃ってあるし、いつもより格好良さ倍増」

髭のないハージェスさんは最高だ。

あの素敵な声で一曲歌ってくれたら間違いなく落ちる自信がある――私が。

「そなたは髭が嫌なのか」

あ、ブリザードが止んだ。

「うん、なんか苦手。触ったらザラザラして痛いんだもん。無精髭とかはサイアクだよね、お手入れしてないからこっちの柔らかいトコに当たると刺さるんだよね」

「柔らかいトコ……?」

「レイは男だから分かんないだろうけど、髭って刺さると痛いのよ」

朝に髭面でにゃんにゃんされた日には、痛くてテンション下がるって。

――ん? ブリザードが復活してる! 寒い、寒すぎです!

目が据わってるし、眉はしかめてるし、口は見事にヘの字だし!

美人が怒ると怖いっ!

凍死する前に話題を変えるべきか!?

「そっ、そう言えばレイは髭薄いよね。触っても痛くなさそうだね」

レイヴィスの顎とかには髭の痕らしきものはない。触っみると、チクチク感全くなし。

真っ赤な髪だから当然髭も赤いんだろうけど、剃り残しとかないスベスベ肌だ。

ニキビとか一切ないし、これで男なんだから正直悔しい。

「……」

ああ、奇跡! ブリザードが止んで一気に青空広がりました!

これで凍死は免れました!

「色々と聞きたい事が増えた。後でじっくり(''''''')聞く事としよう」

……はい?

何か私、いけない事言いました?

質問した覚えも何かを聞いたつもりもないんですけど?

「聞くって、何を?」

「……色々とあるのだ、こちらには('''')」

うわ、かなり顔つきがダークなんですけどー。

何だか嫌な予感がしまくりだ!






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