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リアル着せ替え人形

お茶会はなかなか楽しい? ものだった。

ほんわかした空気感のリジェーナ様とフジコちゃんは割りと友好的な感じ。

でも、動くフランス人形のキャロラインは二人に対しても敵意丸出しだし、私にはイヤミばっかり言ってくる。

イヤミって言っても可愛い類のもんだから、ちっともダメージは受けてないけどね。

陰湿な事この上ない日本のイジメに比べたら、人形ちゃんのイヤミ攻撃なんて寝てる時に時々耳元で蚊が飛んでるくらいの不快感でしかない。『あーウルサイ!』って思うくらいでキレたりするレベルじゃないんだよね。

チョロイもんだわ。

お茶会自体は一時間もなかったんじゃないかな。

リジェーナ様に急な面会が入って、そのままお開きになったから。

フジコちゃんは『お茶会の最中に面会を申し込むなんで無粋ですわ』ってかなり憤慨してたけど、人形ちゃんは嬉しそうに帰っていった。

うん、結構楽しそうじゃん。

ワクワク感が増した会だった。

それで今は、婚姻式ってのに着るドレスの打ち合わせ中。

婚姻式自体は皇族伝統の衣装を着るのが慣わしなんだけど、今回決めるのは披露宴っぽいパーティに着るドレス。

デザイナーさんが色んなデザイン画を持ってきてくれて、どれがいいかを聞いてくる。

どれと言われても、中世っぽいデザインはどうも……現代っ子の私には似合わないと思うよ。

なので、二年前にあった、お父さんの結婚式を思い出してみる。

メインはお父さんじゃなくて、お父さんと結婚したお隣さん ―― 美里ママをだけど。

美里ママはすごく綺麗なピンクのドレスを着ていた。

光沢のある淡いピンクの生地で、肩は大胆だけど下品じゃなくて、背中に大きなリボンと薔薇。

スカート部分は何枚もシフォンが重ねてあって、それが綺麗なグラデーションになってた。

甘すぎないけど可愛らしいドレスだったのを、今でも鮮明に覚えている。

私もあんなドレスが着たい。

「こういう風には出来ない?」

デザイナーさんの許可を得て、思い描いたドレス画に書き込むと、デザイナーさんはビックリして目を見開いた。

「このようなドレスは作った事がございませんが……姫君のご希望とあれば努力いたします」

デザイナー魂に火が点いたのか、メラメラと闘志が噴出しているような感じ。

これは懐かしのアニメ特番とかで見る、スポ根アニメの主人公的な目だわ!

期待大!

助手さんが持ってきた生地の束を幾つも並べて、どういった色目がいいかも打ち合わせする。

美里ママが着てたみたいな生地はなかったけど、綺麗なピンクで妥協。

ピンクって言うより、薄紅色って感じかな。艶があるし。

ウエスト部分とリボンの色は、一目惚れした濃いピンクにした。

うん、楽しみだな、出来上がるの。

同じピンクでも、人形ちゃんが着てたピンクドレスとは違う色とデザイン。

あんなロリータドレス、私は無理だけどコレなら大丈夫。

多分イタくはならないはず。

「では、次のドレスを……」

「姫君、こちらに袖をお通しくださいませ」

助手さんが出したのは、真っ白なマーメイド系ドレス。

シンプルな作りで、露出もほとんどない。

でも、これはかなり体のラインが出るデザインじゃない?

「まさか、コレが皇族伝統のドレスなの?」

「はい、左様でございます」

コレがウエディングドレスか……。

まさにそれっぽいドレスだけど、このタイプは着る人を選ぶドレス。

モデルさんが着ればキマるんだろうけど、私はどちらかというと小柄だから似合わない気がする。

と言うか、普段から私はこんなぴっちり体のラインが見える服は好みじゃないから着た事がない。

自分の身体のラインが嫌いだから。

「姫君のお背を伺っておりましたので、お背に合った標準体型のものを持参いたしました。細かい点は補正いたします」

助手さんプラス針子さんがテキパキとドレスを着せてくれる。

コルセットがそんなにきつくないから、楽勝といえば楽勝。

着せ替え人形されてる羞恥プレイだけ我慢すればいいんだからね。

「お腰部分が余ってますわ」

「お胸とお尻がきつうございますね?」

ちょっと、針子さん。口に出して言わないでよ。

胸とお尻がちょっとばかし肉付きがいいの、気にしてるんだから!

このムチムチした感じのせいで、何度痴漢に会ったか……思い出しても腹の立つ。

まぁ、触られたと思ったら手首掴んで駅員さんとこに連れてってたり、回し蹴りで撃退とかしちゃいましたけどね?

「このまま採寸もいたしますので、動かないで下さいますか?」

色んな場所に針を突きたてられているのに、動く気なんて起こらないよね、普通。

言われたと通りにじっと突っ立ってると、針子さん達はテキパキと作業していく。

早く終わらないかな……窓の外の夕焼け空を見てイライザさんは夕飯準備の指示に出て行っちゃったし。

ああ、お腹空いたな……夕飯、なんだろう……。

あの直球勝負の夕飯はあんまり期待は出来ないんだけど、腹が減るんだから仕方がない。

「まあ! なんて可愛らしいのでしょう」

お腹が空いたプラス突っ立ってるだけの暇状態で思考能力が著しく低下していた私の耳に、突然知らない声が届いた。

大きな姿見鏡ごしに見えるのは、深い緑色のドレスに身を包んだ三十代前半くらいの美女。

背も高く、顔立ちがとても整っている。

きっと地球に生まれていればスーパーモデルとして世界を股にかけ活躍しているだろうと思われるほどの美女だ。

「あの……失礼ですが、どちら様で……」

針に注意しながら振り返り、そこまで口にした時、ピン、と来た。

このクールそうな顔立ち――は。

「……皇太子様のお姉様ですか?」

この人、イケメン・レイヴィス君に似ている。年齢的に姉だろうと見て、そう聞いてみた。

昨日、本人に発音を注意されたから名前は言わないで敬称で。

すると美女は妖艶に笑って唇に手を当てた。

色っぽさ急増です!

「うふふ。わたくしの名前はシシェン。どうぞシシェンとお呼びになって、アンジュ・シャトゥー・ジースト姫」

おいおい。

『佐藤』を『シャトゥー』って……江戸っ子か!?


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