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王道ですね

イケメン君との面談はすぐに終わった。

秘書みたいな人が血相変えてやってきて、何か耳打ちしたら皇子は断りを入れてすぐに出ていったから。

急な面会が入ったから、って。

忙しいんだね、皇子様って。

私の勝手なイメージとしては、仕事を大臣とかに押し付けて自分は昼間っから飲んだくれたり馬で出かけたり城下町で遊んでたりってのを想像してた。

もしくは、火消しの頭領んとこに居候とか……あ、これは暴れん坊か。

えっと、王子様のイメージは…

イケメンで、金髪碧眼。

もちろん、服装は真っ赤な上着で勲章ジャラジャラつけて、真っ白なカボチャパンツに白タイツ。

物語の王子様って言ったら、コレが王道でしょ!?

でも実際は赤い髪だし、服だって詰襟の学生服みたいな感じで、思い描いてたのと違った。

ちょっと期待してただけに残念。

色んな意味で期待ハズレだった皇子様が出て行ったすぐ後に、上品そうな女官さんが私の部屋に案内してくれた。

通された部屋はとんでもない広さと豪華さ。

体育館みたいな広さの部屋に、ローテーブルと高そうなソファ。

天井にはもちろんシャンデリアちっくなライト。

部屋の中にまた扉があって、そこには旅館の大浴場みたいに大きなお風呂。

そしてもう一つの扉の先には、何人寝るんだよっていうくらいキングキングサイズのベット。

まさにお姫様部屋。王道です。

しかーーーーし!!

無駄に広くて落ち着かない。

「今日はお疲れでしょうから、お部屋に夕食をお持ちいたします。ごゆっくりお過ごし下さい、明日からはスケジュールが詰まっておりますので」

私の部屋を仕切ってくれるというイライザさんが説明してくれる。

イライザさんは二十六歳の美女で、茶髪をきっちりまとめた女官さん。

女官は侍女よりも位が高くて、上位貴族の子女がなれるんだってミュスカが言ってた。

イライザさんのほかに私に付いたのは四人の侍女。

背が高いフラン、丸々して可愛いマリアム、口元にほくろがあるアーセラの三人は私と同じ年代。

残るパレアナは十三歳でちょこまか動く姿がすごく可愛い。

ミュスカもそうだけど、ラファリアット皇国の人って濃い茶色の髪の人が多い。

イライザさんもそうだし、他の四人も茶髪。

だからあのイケメン君の真っ赤な髪は珍しいんだろうな。

「明日の午前中はレイヴィス殿下の御夫人方とお茶会、お昼からは婚姻式の衣装の打ち合わせ、夜はレイヴィス殿下とご一緒される事となっております。ミュスカさん、明日のお茶会用のドレスの準備を。フラン、お茶をお淹れして」

ミュスカはイライザさんの言葉に反応してテキパキ動き始め、ついさっきクローゼットにしまい込んだばかりのドレスを選んでる。

大公様から貰った花嫁道具には十枚以上のドレスが入ってた。

着る機会なんて少ないと思ってたらいきなり必要みたい……って、ん?

今何て言った、イライザさん?

レイヴィス殿下の御夫人方??

「まあ、なんて素敵なドレスでしょう」

「さすが、大公家のデザインは違いますね」

マリアムとパレアナが目を輝かせながらドレスに見入ってる。

そんな二人の様子に眉をひそめたイライザさんが見事な角度のお辞儀をした。

「申し訳ございません、アンジュ様。まだ歳若い者ですので教育が成っていないようです。後で無礼を働かぬよう厳しく申し付けますのでご容赦願います」

「やだ、そんなに畏まらないで下さい、イライザさん。私は堅苦しいのが苦手だし、無礼とか思ってもないから!」

そう、私はあくまで一般人。

様付けされるのだって慣れてないのに、畏まれられると困っちゃう。

「アンジュ様は御心が広いお方なのですね。どうぞ、わたくしの事はイライザとお呼び下さいませ。そのお気持ちだけで存外の喜びでございます」

うっとり喜んでるイライザさんに向かって、さっきの『御夫人方』って何ですか? って聞けないな……。

「お待たせいたしました。ベティア産のお茶でございます」

フランが出してくれたお茶は真っ黒。

見た目がコーヒーみたいなのに、飲むと紅茶。

なのにコクは一切なし。

何かつまむものが欲しいけど、お皿にはこの星特有の砂糖菓子しかない。

お盆におばあちゃん家で出された落雁を思い出すよ、コレ……。

「ミュスカ、作ってきたお菓子、まだ残ってたよね? ドレスが終わったら出してくれる?」

「はい、アンジュ様」

仕事が早いミュスカはすぐにお菓子が入っているバスケットを持ってきてくれた。

「イライザさ……じゃなかった、イライザやみんなも一緒にどう? 早く食べないと油が回っちゃうし」

昼間食べてたパイに、搾り出しクッキー。

大公家で結構焼いたからまだ3日分くらいはあるけど、さすがに味が落ちるしね。

「ありがたいお申し出ですが、大変無礼でございます……」

「いいのいいの。せっかく作ったんだもん、食べてくれないほうが失礼だよ? それにこっちの国の人の舌に合うか知りたいし」

この国じゃ身分意識が強いってミュスカの言。

多分、不本意だけどイライザさんたちより私のほうが身分が上なはず。

こういう言い方したら、きっと折れてくれるだろうと思う。

「ね、イライザ?」

「は、はい。喜んでご相伴に預かります」

ふっ。勝った!権力を傘に着た勝利ってやつだわ!




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