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ヒューマンズ  作者: 石川十一
本章
7/37

ヒントとサプライズ

 どうやってこの時代にやって来れたのか。秋五の口からそれを語ることはできない。それ自体、自分でも分からないのだから。一応、心当たりのある自分の行動を説明してみるものの、それがこの時代にやって来るきっかけとは言いがたかった。



「ベッドに寝ていたらいつの間にか、ねぇ・・・」


「いや本当なんですよ」



 マリーが疑惑の視線を向けて来たので、すかさずフォローを入れる。



「いや、疑ってるってわけじゃないんだけどね」



 レイラはレイラで、お兄ちゃんのベッドってすごいんだねー、と言って目をキラキラさせている。……ベッドが原因だと、まだ決まった訳ではないのだが。

 

 その一方ソウルは腕を組み、俯いたまま微動だにしない。まったく動きがないと石像のようだ。



「そのリングも気になるわね」


「これですか?」



 言われて、思わず右手をテーブルの上に差し出した。人差し指には、変わらず飾り気のないくすんだ銀色のリングがある。



「一見、なんの変哲もないリングですけど」


「そうねぇ。あれ、でもこの文字」


「スティング文字だな」



 ここでソウルが口を開いた。どうやらリングに彫られている文字が目に入ったようだ。相変わらず腕を組んだままだが、視線だけこちらに向けている。



「スティング文字?」


「かつてファクター同士でやりとりを行うときに使われたという、暗号のようなものだ」



 一見するとアラビア文字のように見えるが、確かによく目を凝らして見るとアラビア文字とはまた違う文体のようにも見える。特にアラビア文字に精通しているわけではないので、大きな違いはよくわからないが。



「あいにく我々はスティング文字が読めない。この村でスティング文字が読めるとしたら。……長か」


「お爺ちゃんのところに行くの?」


「ああ。しかし私はこれから仕事に行かねばならないから、レイラ、彼を案内してあげてくれ」


「わかった!お兄ちゃんいこっ!」


「え?ちょっ・・・」


「まだ二人とも寝間着のままじゃないの。準備してからいってらっしゃい」



 マリーがなだめてくれたおかげで、レイラに掴まれた腕が解放される。



「おそらくこのリングが、君がここへ来たことを証明する鍵となるはずだ。それを解明するためには、その文字を読むことができる人間が必要になる。これからレイラがその人のもとへ案内してくれる」



 どうやら、だんだんと大事になっているような気がする。さきほどの「長」というのも、言うまでもなくこの村の長。村長のことを指すのだろう。あまり目立つ行動は避けたいが、かと言って彼らの好意を無下にするわけにもいくまい。



「そうと決まれば早く着替えてらっしゃい。秋五くんの服は部屋に置いてあるから」


「あ、すみません。どうも」



 レイラはいつの間にかリビングから姿を消している。自分の部屋で着替えているのだろう。昨日から彼女の行動を見ているが、非常に行動が素早いことが見て取れる。思い立ったらすぐ行動、タイプなのだろう。ある意味、少々マイペースな面のある秋五にとっては見習うべき人物なのかもしれない。


 そう思いつつも、レイラを待たせるわけにもいかないので急いで着替えを済ませる秋五である。


















「お待たせ」


「よし、行こっか!」



 レイラに先導され、村を歩くことになった。


 既に外では忙しなく行き交う人々の姿があった。とはいえ、村自体あまり大きくはないので、それに比例して村人も少ないのだが。パッと見で、おおよそ30〜40世帯くらいか。



「そういえば、この村の名前はなんて言うの?」


「パトゥエ村だよ。今のお爺ちゃんのお爺ちゃんのお爺ちゃんの名前からとられたんだって!」


「お、お爺ちゃん・・・?」



 同じ単語が連続しすぎていて、なんの事を言っているのか瞬時に理解ができなかった。そもそもお爺ちゃんとは一体誰の事だ。



「お爺ちゃんは村長のことだよ。わたしが小さい頃から遊んでくれてるの!」



 なるほど。その話からして、村長というのは非常に心穏やかな人なようだ。都会の方だと特にそうだったが、年配の人は気難しい人が多い印象があった。電車で席を譲ろうとするとなぜか怒ったり、逆に向こうが譲ってほしそうにしているのに気づかなかったときも怒られる。じゃあどうすれば良いのだ、と世の理不尽さに嘆いたものだ。



「レイラー」


「あ、レイラちゃん」


「どこ行くのレイラちゃん」


「お爺ちゃんのところだよ。この人の案内をしないとだから、ごめんね。遊ぶのは後でね」



 子供達が集まってきた。みんなレイラを見た瞬間に飛んできたところから察するに、どうやら彼女の人望は非常に厚いようだ。人望というのは社会で生きて行くためには必要不可欠な要素だったりするので、彼女は現代社会の荒波の中でもなんとかやっていける人材に違いない。



「だれだーこのおじさん」



 まだ二十代です。と子供相手にツっこむのも無駄な気がしたので、あえて受け流す。



「ええと、秋五っていうんだ。パトゥエ村には来たばかりでね。いまはレイラちゃんの家にお世話になっているんだ」



 そう言うと子供達は口々に「男と住んでるの!?」だの「同棲だー」だのと叫んだ。そういった必要のない単語をスポンジのごとく吸収していくところが子供の恐ろしさだ。単語の具体的な意味を知らずに連呼するのは、第三者にしては危険極まりない行為にしか思えない。



「いやいや。住むといっても一時的にだし。第一、同棲といってもレイラの両親も住んでいるわけだから」


「両親公認ってやつ?」


「やなかんじー」



 子供は苦手だ。それ以上の感想はない。



「ごめんみんな、もう行かなきゃ!ほらお兄ちゃん!」


「うわっ、たた!」



 そのままレイラにされるがままに手を引っ張られ走って行くと、1分もしないうちにそこに着いた。まぎれもなく、村長宅である。


 他の住居と比べても、特別違う点は見受けられない。おそらくこの村からしても一般的な建築の形だろう。まあ少々大きい作りのような気がしないでもないが。そう考えていると、またしてもレイラが手を引いた。



「ほら、入ろっ」


「ああ、うん」



 レイラはノックもなしにドアを開けて中に入って行く。手を引かれている秋五も、否応なく無理矢理中まで引っ張られる結果となる。



「お、じ、い、ちゃーん!レイラですよー!」


「ちょ、レイラちゃん!近所迷惑だって」


「聞こえとる。聞こえとるからちょっと待っとくれ」



 その声とともに現れた老人。杖をついているわけでもなければ真っ白い髭を蓄えているわけでもないのだが、その姿は想像していたものと遥かにかけ離れていた。



「んむ?その青年は?」



 目の前に立っていたのは、身長2m越えの筋骨隆々なソウル2号だった。

期末テスト、ようやく終了いたしました。

ここからあとは冬休みを待つのみとなったので、これまで以上に作品に力を入れていきたいと思います。


※それと、「作品タイトルが適当すぎるからしっかり考えた方が」とのご指摘をいただきました。確かにタイトルに関しては、面倒だったので超適当につけてしまったこともあって、どうにかしようと考えておりました(キャラクター名然り)。ですのでこの機会にしっかりとしたものを考えておこうと思います。

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