応用
世界一を誇る軍備の量と質、兵力を抱える軍事国家『ストライモン』。
人々の出入りが激しく、各国の代表も頻繁に訪れる巨大な国ストライモンに、秋五とレイラ、クークは足を踏み入れていた。
「ここが軍事国家ストライモン・・・コルグなんて目じゃないくらいに大きい・・・」
「コルグの街もいっぱい人がいたけど、ここはそれ以上だね!」
コルグの街が小さいと言われていることが分かった気がする、と秋五は思う。このストライモンの領土はコルグの街とは比べ物にならないくらいに大きい。ストライモンと同等、またはそれ以上の領土を持つ国は6つあるらしいが、考えるだけで世界は広いのだと思い知らされる。
「それじゃあとりあえず宿をとってから、その辺歩いてみようか」
「さんせー!」
「ブルルッ」
今回はしっかりと宿をとることができた一行は市場を歩いていた。やはり『国』単位にもなると仕入れる物も街では見られないものばかり。コルグの街では、秋五の世界で一般的な物がそのまま巨大化していたりおかしな色になった物が並んでいた。しかしこの国の市場にはそもそも形すら見たことがないような物ばかり。どれがどんな味でどんな調理法をすれば良い食材なのか、見当もつかない。パトゥエの村でも一般的でない食材ばかりなのか、レイラも首を傾げている。
「というか、色んな匂いが混じり合って気持ち悪いことになってるな・・・」
「私ちょっとダメかも〜・・・」
既にレイラは半分ダウンのようだ。クークは表情に変化がないので何を考えているのか分からないが。
「ちょっと市場は離れようか。ほら。ここを抜けたら色々なお店が並んでるみたいだよ」
「うう・・・頑張る・・・」
ここまで元気のないレイラは実に新鮮である。いつもの元気な彼女も良いが、十三歳の割に魅力的なルックスのレイラなら少しくらい大人しくても十分可愛らしいはずだ。ちなみに秋五はロリコンではない。
「ここまで来れば少しはマシじゃない?」
「うん・・・まだちょっと気持ち悪いけど」
「少しその辺で休んでいこうか?」
「ううん、大丈夫。歩いてれば治ると思うから・・・」
クークも心配そうにレイラの頬に自分の鼻を擦る。
「だいじょぶだよー、クーク」
「ブルル・・・」
するとクークの鼻が触れているレイラの頬が仄かに赤く発光し始める。
「クーク・・・?」
「これは・・・?」
クークの目は白く変色している。それは『クークが能力を使っている』ことを意味するのだ。
「な! ダメだクーク、レイラの体力を奪うな!」
「待ってお兄ちゃん!」
レイラはフッと目を閉じ、心地良さそうにクークの体にもたれ掛かる。
「クーク・・・ありがとう。もう大丈夫」
「ブル・・・」
「ど、どういうことなんだ?」
クークが鼻を離すとレイラは先ほどとは打って変わって、いつもの快活な少女の顔に戻っていた。
「クークが私に力をくれたの。クークは体力を吸収するだけじゃなくて、与えることもできるみたい」
「・・・能力には応用も利くってことか」
応用の仕方によっては役に立たなそうな能力だって生かすことができる。それを動物であるクークは平然とやってのけた、レイラのために。秋五はここで、クークを自分たちの足ではなく仲間なのだと思い直した。
「すごいなクーク、見直したよ」
「ブルルッ」
今日の収穫。
『能力は応用も利く』
なんか雑文になってしまいました、申し訳ないです。




