表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒューマンズ  作者: 石川十一
本章(旅立ち)
21/37

苦手な男

 平原を歩いて丸3日。


 レイラがついて来てくれたおかげで、食料調達や野営なんかもスムーズに行うことができた。野営をするなら交代で見張りをしようかとも話していたが、平原にも意外と魔物が近寄らないスポットがあるもので、そういった場所を見つけては秋五もレイラも魔物を気にせず朝までグッスリ眠ることができた。


 と、そんなわけで。


 朝昼と休むことなく歩き続けたことで、やっと到着した西の町。パトゥエ村から馬を走らせたら20分のところにある街だと村長が言っていたが、その馬の足はどんなつくりをしているのかと疑わずにはいられない。



「これで『小さい』って、驚きだよなぁ」



 西の町『コルグ』。軍事国家『ストライモン』の支配下に置かれている街である。


 この世界で最も小さな街という定評があるためあまり期待していなかったのだが、少なからず某ネズミの遊園地の4分の1くらいはありそうだ。


 市場は人々が賑わい、そこら中を子供たちが駆け回っている。皆がみな裕福と呼べる者たちばかりではないようだが、活気が溢れていて人々の笑顔が絶えない。



 そんな中、秋五たちは人ごみをかき分けてなんとか人の少ない場所へ出た。



「はぁー、すごい人だね。人ごみを抜けるだけでも疲れた」


「私は小さい頃に何度かお父さんと来たことあるから大丈夫だよっ!」


「そうなんだ。じゃあ案内はお願いしようかな」


「任せて!」



 まずは宿に行って部屋をとる必要がある。どこの街へ行っても最低15は宿屋があるというソウルの受け売りだが、中には食事や接客等のサービスが最悪な所もあるということなので、予め良い宿を絞り早めに部屋をとらないといけない。



「まずは宿屋へ行こう。場所はわかる?」


「うん。じゃあ前にお父さんと泊まった所に行こー!」



 

















「あちゃー、遅かったか」


「ごめーん! 私あの宿しか行ったことないから他の場所わかんない……」


「仕方ない。とりあえず人に聞くしかないか」



 レイラの案内で宿屋まで向い部屋をとろうとしたが一歩遅かったらしい。既に部屋は全て満杯で、もう空きがないとのことだった。


 そうして軽く途方に暮れているところへ、ある一人の男が通りかかった。



「宿屋を探しているのか?」


「え、まあ・・・」


「オレもこれから宿をとろうと思っていたところだ。案内してやっても良いぞ」



 一瞬お願いしようと考えたが、世の中良い人間ばかりではない。案内してやると良いつつ人気のない所へ連れ込み、カツアゲするという作戦なのかもしれない。そう考えると、迂闊に人に頼るわけにはいかなかった。



「警戒するなよ、何も企んじゃいないさ。言っただろう? オレもこれから宿をとる。お前たちはそのついでだ。もっとも、空きが一つしかなけりゃ譲ってもらうことになるが」


「…頼もうか」


「いいの、お兄ちゃん?」


「まあいざとなったら能力を頼むよ」



 そうだ。マズい状況になったらレイラの発火能力を使えば良い。まさかこんなか弱い女の子にすごい力があるとは思わないだろう。


 警戒心を解くことはせず、この男について行くことに決めた。



「オレはジェームス。ジェームス・ヘッドフィールド。せっかくだ、名を聞こうか」


「佐々秋五だ」


「レイラです」



 レイラにとって苦手なタイプなのか下手に出ているのか。おそらく前者だが、いつもの元気な様子はなく、珍しく無口である。かと言って相手を探っている感じでもないので、意外と顔見知りするタイプなのかもしれない。秋五もジェームスに対し、この妙に上から目線なところが少々苦手な部類に属するかもしれないと思っていた。



「オレは冒険者でな。東の小さな村に住んでいるんだが、7日に一度こうして街へ出て金を稼ぐというわけだ。見たところ、二人も冒険者か」


「まあね、駆け出しだけど。だから宿屋の場所はもちろん、今後どうするかについて見当もついてない」


「だろうな、その装備を見れば戦い慣れていないことがわかる。しかしオレも冒険者になったばかりの時はそうだった。わからないことばかりで、いつも周囲の人間に尋ねていたものだ」


「みんな最初は同じってことか」



 話しながら歩いているとようやく目的地が見えた。さきほどの宿よりかは若干小さいが、外装は割ときれいで清潔感がある。



「この宿は安い上に料理の質も良い。部屋やサービスは並だが、劣悪な宿屋よりかはずっとマシだろうな」


「腰を落ち着けられるならどこでも天国だよ」



 無事に部屋の予約をとることができ、ひとまずは安心。まだ宿に入って休むには早いので、少々時間を持て余すことになりそうだ。



「この後はどうしようかな。平原で倒した魔物の素材を売りに行こうか」


「うんっ」


「オレはもう宿に入っている。夜は裏の酒場で飲んでいるから、寄ることがあったら声をかけてくれ」


「恩に着るよ」


「ありがとうございます」



 そうして一時、ジェームスと別れることになった。あの上から目線や独特なとっつきにくさから、秋五はジェームスが大野とかぶって見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ