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ヒューマンズ  作者: 石川十一
本章
14/37

冷静な判断

 ソウルとマリーの衝撃の新事実が判明して一ヶ月。


 秋五がこの時代に来て、既に2ヶ月の時が過ぎていた。


 その間、秋五はソウルから肉弾戦の戦闘法の基礎を学び、魔物との戦闘によって力をつけていた。未だウィード相手にも苦労するレベルであるが。


 レイラも着実に力をつけ始め、今ではソウルの魔物狩りの仕事の手伝いをするために森に出向いているほどだ。先日は2mはある熊を引きずって帰ってきて、「熊ってどんな料理に使えるの?」とポヤッとした顔でソウルに尋ねていた。もはや規格外である。


 話は変わり、この世界も12月に突入した。この時代にも暦という概念は存在しているらしく、この点に関しては数百年前と変わらず1年は12ヶ月となっている。


 雪こそ降っていないものの、子供たちは寒さなど知って知らぬか、毎日のように外を駆け回っていた。北海道や東北に比べたらそこまで寒いというわけでもないが、それでもこの辺りの地域の人々はみな寒さに弱いらしく、大人たちは基本的に家の中で過ごしている。


 とはいえ男たちはいくら寒くても仕事をしに外に出なくてはいけない。その一方で奥様方は皆、一様に家の中で暖炉の暖かさに身を委ねていた。


 そしてマリーもその一人。朝からレイラは近所の子供たちのもとへ遊びに出かけ、ソウルもギルドへと出かけているために家には秋五とマリーの二人だけだ。マリーは「レイラにマフラーを編んであげるの」と言って、暖炉の前でロッキングチェアーに座って身を揺らしていたのだが、しばらく経つと暖かさに負けてその瞳は閉ざされていた。



「ありゃ、寝ちゃった」



 外で薪を割っていた秋五がリビングに戻ると、スヤスヤと眠りに就いたマリーの姿があった。



「そりゃ寝るよな。こんな暖かいところに長時間いたら」



 秋五は自分の部屋から毛布を取り出してきて、リビングで寝ているマリーにかけた。暖炉の前にいるのだから必要ないのでは、とふと思ったが、このような状況下では毛布は必須なのだと秋五の中の間違った常識がその行動を強要させた。



「仮にも若い男がいるんだから、そんな無防備にされたらこっちが困りますよ。ほんとに」



 自分の中に潜む邪念を振り切り、秋五はイスに腰掛けて窓の外を眺めた。しかしその目は外を見ているようで見ていない。状況の整理、そして今まで起きたことを振り返るために脳の力を費やしているため、いま秋五の視覚情報は完全にシャットダウンされている。


 『神集の地』『召喚』


 キーワードを一つひとつ吟味していく。思えば村長はこんなことを言っていた。「高位の魔術師によって召喚された」のだと。つまりその魔術師にも目的があって召喚したわけで、予想外にも自分の思っていた地点とは別の場所に現れた秋五を放ってはおかないだろう。


 もしも。


 もしも自分のせいで、パトゥエ村の人々が犠牲になったら。


 以前ソウルから聞かされた。「能力を良からぬ目的のために使う人間も多く存在する」と。秋五を召喚した魔術師がもしソウルの言っていたような人間だったら、こうしている間にも水面下で動いているかもしれない。この村にいることがバレたら、被害が自分だけで収まるかどうか。


 それなら、もとの時代に戻ったほうが良いのではないか。それがベストなのではないか。


 できることならこの時代に留まっていたい。自分にとって新しいことが溢れているこの時代でずっとやっていきたい、命が尽きるまで。


 しかし、自分と村を天秤にかけた時。その結果は言うまでもない。



「またもとの生活に戻るだけだもんな」



 それで村の人々を危険に晒さずに済むのなら。



「さて、と」



 秋五はマリーを起こさないように、ソッと部屋に入って身支度を済ませた。この時代に来た時に身に着けていたスーツ一式と指輪をリュックサックに詰める。そしてここへ来た時にソウルからもらった皮のコート。とても簡素だが、大量に荷物があっても困るだろう。


 もしかしたら自分の勘違いかもしれない。思い過ごしかもしれない。


 しかし万一のことがあれば。


 秋五は物音を立てないように家を出た。

なんかいろいろ矛盾点が、、、なきにしもあらず。

お気づきの点等あれば、よろしくお願いいたします。

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