更なる衝撃の新事実
本日の収穫。
ウィードの核×6、ミドルウィードの核×3、ホワイトウィードの核×1
の三種類。合計十個。
ウィードの他にも複数亜種が存在しているらしく、ミドルウィードという少し大きめのウィードやホワイトウィードという白いウィードなど他にも多数存在するという。
「これ、ギルドに売ったらいくらくらいになるんですか?」
「ウィードの核は銅貨1枚、ミドルウィードの核が銅貨3枚とホワイトウィードの核が銀貨1枚といったところが相場だな。合計で銀貨1枚と銅貨4枚といったところか」
「なるほど」
その値段がこの時代においてどのくらいの価値に相当するのか分からない秋五は、ただ頷くしかなかった。
「それにしてもレイラちゃん、強いですね。さすがに強そうなのは避けましたけど、だいたい一撃でのしちゃってましたよ」
「まああの子も冒険者になりたい、って言ってるくらいだからねぇ」
「まだまだこれからだ。レイラなら、更なる高みを目指せるだろう」
魔物狩りの際に、秋五はレイラに尋ねていた。
『レイラちゃんって女の子なのに、なんで魔物狩りなんて危ないことするの?』
『私ねぇ、冒険者になりたいの! お父さんも昔は冒険者だったんだって。その話を聞いてたらね、私も世界中を旅してみたいなぁ〜って思うようになったんだ。そのためにはこうやって、魔物を倒しながら修行していくんだってお父さんが言ってたの」
『考えてるんだねぇ。俺が十三の時なんて、進路どころか親の手を離れることさえ考えてなかったってのに』
あんなに細い体で、冒険者を目指して修行の日々を送る。
秋五の時代では到底考えられることではないし、なにより自分より年下の女の子が夢に向かって精一杯努力しているところに秋五は感動を覚えた。
「ソウルさんって、昔は冒険者だったって聞いたんですけど」
「ん? ああレイラか。まあな。もう十数年も前の話になる」
レイラは帰ってきて早々、疲れなど知らぬといった様子でスタコラと遊びに出かけている。
「私は王都ベルデンの騎士として仕えていたのだが、当時王妃であったマリーと共に西の小さな街へ二人で逃げて、冒険者として細々と生活を送り今に至る」
「なるほど。……なるほど?」
なんだかとてつもなく重大な事実がとてつもなくサラッと流された気がする。
「お、王妃ィィィィィ!? マ、マリーさんが? そんでもって騎士のソウルさんと駆け落ちって少女漫画かよ!」
「少女マンガ? まあ色々とあってな。あんまり言いふらさないでもらえると助かる」
「いや、信頼されているのは嬉しいですし言いふらす気なんて毛頭ないですけれども。というか色々って、大事なところをかなり端折っていますよね」
マリーはさも自分は関係ないかのように、テーブルに肘をつけてポヤポヤと日のきらめく窓の外を眺めていた。
「まあ今更ほじくり返すことでもないしな。事実、王にマリーの居場所が知れることがあれば我々の生活もあっけなく終わってしまうだろう。妻子のためにもそれだけは避けたい」
「……このこと、レイラちゃんには」
「まだ、話していない。時が来たら話すつもりだ。と言っても、あの子ならこんな事実を知ったところで何も変わらんだろうが」
「確かに」
するとマリーはキュピーンと目を光らせて突然席を立ち、秋五とソウルの視線を集めた。
そして一言。
「夕飯の材料、買ってこなくっちゃ」
子も子なら親も親。思い立ったが、すぐに準備を済ませて「いってきまーす」と言い残して猛烈な勢いで家を出た。
「元王妃、ねえ」
現実味のない話に、いまだ秋五は信じられずにいた。