クリア
「ここはもしや・・・」
信じられない、といった顔で呟く村長。
「心当たりが?」
「ええ、確証はありませんが。……ここは『神集の地』かと」
「神集の地?」
聞き慣れない単語に思わず聞き返す。
「その名の通り神々が集結する地のことで、この世界各地に『神集の地』は存在すると言われております。あくまで言い伝えに過ぎませんが」
言い伝えだとは言うものの、明らかにこの空間の空気は普通と異なっていた。『外』に比べてこの空間には風もなく、妙に空気が潤っている。どことなく体が軽くも感じる。
すると村長は一瞬、ハッとした表情を浮かべて湖に目を向ける。
「あの湖ですかな?」
「ええ」
「お前たち、周辺を調べてみんさい」
『はい』
村長が若者たちにそう命じると、三人はそれぞれ別れて湖の周辺を調べ始めた。しかしなにも成果が得られなかったのか、ある程度時間が経つと走って戻って来る。
「周辺には特に怪しいものは」
「つーことはやっぱり」
「湖の中。ということになるの」
村長はそう口にするも、若者三人は誰も乗り気ではなかった。事実、こんな不思議な空間に存在する湖の中なんて何があるか分からない。透明度自体は高いため中ははっきり見る事ができるが、秋五の話ではこの湖に入ったらもとの世界に戻る事が出来たのだ。自分が入ってまったく知らない世界に飛んでしまったら、と思うと若者たちは怖じ気づいた。
「秋五殿はその湖の中へ潜ったら、元の時代に戻っていたと言っておりましたな」
「はい」
「という事は当然、もう一度中に潜れば原因を突き止められる可能性があるわけですが・・・」
村長は若者たちに目を向けるも、三人ともサッと視線を逸らす。誰も行きたがらないのは当然かもしれないが、肝心の若者連中がこれでは原因究明をするには心もとない。
「とりあえず、僕が言った事が証明されただけで満足です。今日のところは帰りませんか?」
「そうですな。秋五殿のおっしゃっていた事がこうして明確化されたことによって、秋五殿の時代とその湖の因果関係があることは確か。秋五殿さえ良ければ、急ぐ必要もないでしょう」
『申し訳ねえです・・・』
若者たちは非常に申し訳なさそうに俯いているが、彼らに非はない。未知に遭遇した時は誰だって恐怖を感じるものだ。
「そうと決まれば、早く森を出ましょう。あまり遅くなると、道中なにが起きるかわかりませんからね」
「おっしゃる通りで」
時間が空いて申し訳ないです。
年末の忙しさは尋常じゃありませんでした。
今年から受験生です。。。




