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ヒューマンズ  作者: 石川十一
序章
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ファーストトリップ

 目を覚ますとそこは異世界だった。

 

 起き上がると、すぐ脇には小さな湖。透明度が高く、覗き込むと中にいる魚や石がはっきりと見てとれた。周囲は木々で埋め尽くされている。枝には見た事のない形の不思議なフルーツのようなものが成っている。その色は紫や緑など、あまり食欲のそそられない色合いの物を含め多様だった。


 そして見上げると、木々の間から黄色の月と赤い月が2つ。真っ暗な空にポツンと浮かんでいる。

 

 以上が、佐々秋五(ささしゅうご)が異世界だと判断した理由である。

 

 ……少し整理をしよう。

 

 昨日は大学進学が決まった妹のお祝いということで実家で鍋を囲い、そのまま11時過ぎに自分のベッドで眠りに就いた。ただそれだけだ。いつもと変わったことと言っても鍋パーティをしたことくらいなもので、一日の出来事しては何も特筆すべき点はない。まさか家族との鍋パーティがこの世界に繋がる扉を開いた、とは到底考えられない。

 

 とりあえず自分の状態を確認してみる。

 

 まず自分の身につけているスーツ。昨日寝たときは寝間着に着替えたはずなのだが、どうやって自分でも知らぬ間に着替えをしたのだろうか。お気に入りのネクタイとベルトもしっかり身につけられている。

 

 そして右手の人差し指にはめられた指輪。装飾は施されておらず、くすんだ銀色のリングに文字が彫られてあるだけだ。文字を読み取ろうと試みたが、ぐちゃぐちゃしたアラビア文字にしか見えないために断念した。

 

 ポケットを探ってみたものの、他には何も身に付けていないようだ。携帯くらいあっても良いような気がしたが、あったとしても繋がるかどうかもわからない。

 

 なんとなく。


 ふと視線を湖に移すと、頬が少しこけた自分の姿がそこにあった。

 

 思えば、就職してからあまり心休まるような日はなかったように思える。入社してすぐに職場の雰囲気が異様に感じ、転職しようとも考えたがこのご時世だ。そう簡単に望めることではない。仕方なく今まで2年間、身を粉にして働いてきたがなんとも空しく味気ない2年間だったように思う。


 既に秋五は、心身共に疲弊している。

 

 もしかすると、これは神の思し召しなのかもしれない。他にも自分のような苦労を味わっている人間がいる中で自分が選ばれたことが甚だ疑問だが、そうでも思わないとやっていられない。

 

 なんにしても、こんな体験は一生に一度しかないだろう。それならとことん楽しむ他にない。なんと言ったって仕事から逃げられる上に、今までほとんどなかった自分の時間を作れるのだから。

 

 小さくガッツポーズを取ったとき、フッ…と足下が浮く感覚がした。

 

 湖に落ちたのだ。水が顔の穴という穴から流れ込んで来る。プールの水を誤って飲んでしまったときの感覚を思い出した。

 

 自分の足下も見れないとは、迂闊だった。早く水中から出ようと、下を向いていた上体を起こそうとする。

 

 するとそのときだった。鮮やかなオレンジ色の光が秋五の体を包み込んだ。なぜか、水中にいるのに暖かく、息苦しく感じない。それどころか心地良く感じる。疲労が蓄積している秋五の体は、その感覚に逆らうことはできなかった。母親の腕に抱かれているときのような感覚に、秋五は光に体を任せて目を閉じた。

筆者の初連載作品となります。

本サイトで掲載されている数々のファンタジー作品に触発され、執筆に至りました。

執筆経験も浅いため、稚拙な表現。又、読者の方に不快感を与えてしまう描写も、もしかしたらあるかもしれません。

なんにせよ、読者の皆様に楽しんでいただけるよう最大限努力していくつもりですので、暖かい目で見守っていただけたら幸いです。

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