人はいつだってドリーマー
唐突な告白をしますが、ワタクシはファンタジーが大好きです。
ジャンル的な好みの話ではなくて、仮にあるとした架空の世界というものに例えようのない魅力を感じます。
現実では有り得ないような、動力源が不明な空飛ぶ乗り物とか建物とか、乗らなくても自力で空を飛べたりとか、とにかくお空の上まで飛んじゃったりとか。天空〇城を観る度に憧れますよね。浪漫だよね。
スケールが半端ない神秘的な大自然とか良いですよね。表現力に乏しいので具体的な内容には触れないけどね。とにかく、こう、ピカピカ光る玉が浮かんでせせらぎがシャランラ〜な感じ。
魔法とか超必殺技とかもね、もうバンバンぶっ放つのが日常茶飯事なくらいの町の営みとか素敵タウンライフ。もちろん死傷者は出ないご都合設定で。
嗚呼、そんな世界に行けたらどんなに良いか。毎日冒険しまくるというのに。
もしもファンタジーな世界が存在したなら、嬉しさの余り三日は攻略途中のゲームを中断するのに。喜びの奇声だってあげちゃうよ。
あったらいいなあ。行けたらいいなあ。
…なんて考えに耽っていた、ある日のことだ。
「くそう、このマップ見づらいって。なんで今時三人称視点がないんだよ。スタッフに文句言ってやる。後日」
「おーい」
「今取り込み中でダウンロード中だから黙ってて。次はいよいよボス戦だぞ〜、前回は初見殺しなんて初体験をしたからな…。フハハ、現時点での最強装備に身を包んで持ち物回復オンリーな完全勇者オ☆レに勝てるかな?」
「なー、もしもし? そこのヤバげな顔でほくそ笑んでる精神疾患一名様よ。こっち向いて話を聞きなって」
「うるさいなー。飯はまだ良いって、母親ぶるのはやめろよ」
「俺は、お前さんのおふくろになった覚えはないぜ?」
「はいはい、その口調で外を出歩いてみろ。みんな対応に困って、終いには空気扱いだ。苦い経験思い出させるな…って」
聞こえてくるゲーム以外からの雑音に、段々成立してきた会話に、ふとコントローラーを操る手を止めた。
この部屋には、俺一人。毎日三食持ってくるあの人の他に、もう数年以上は誰も訪れていない、俺のプライベートルーム。
ここに、今、赤の他人がいる。
しゃがんで、腹這いになって新作の攻略に勤しんでいる俺の顔を見つめている。うっすらと輝くエメラルドグリーンの髪の男。外人だってこんな頭の奴はいない。とてつもなく“ファンタジー”な雰囲気を纏った人。
「どんな人だよ、そいつは」
「あんたみたいな人だよ。それよりも、不法侵入が罪になるって知らないの? 警察呼んでもいい?」
「ケイサツってのがなんなのかはさておこうか。どちらかと言えば、侵入者はお前さんの方だ」
「ワッツ?」
「いやま、不法には当たらないから安心しろ。侵入ってのも違うな。俺が、お前さんを、喚び出したんだから」
「異世界へようこそ。どうぞ末永く俺にこき使われてくれ、『奴隷』くん」
ありきたりなお話の始まりで大変申し訳ないのですが。
取り敢えず、夢である可能性を十分考慮した上で、現実なんてほろ苦いものは見ない方向で、壮大にぬか喜びかも知れないけれど、叫ばせて下さい。
厨二病的展開キタ――――――――――――――――――――――――――――――っ。
夢なら醒めるな!!!!!