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バイバイ神様、また来年

作者: まふ
掲載日:2026/05/23

神様ってもっと身近であっても構わないと思うんですよね。てことで恋愛も可能です。

今日が都心に帰る前の最終日。次に来れるのはまた来年か…。

「おーい、カミサマ〜」

その声は虚に消えたかと思うと

「おっ、来たね」

鳥居の上から逆さまな顔と長い髪が垂れ、黒曜石のような瞳がこちらを覗く。

「こんにちは」

匂いがする。草木や土のような夏の、それも終わりに近いような匂い。好きだけど嫌いな匂い。

「そんなに、寂しそうな顔しないの。また、来るんでしょ?」

「うん、いやそうだけどさ」

永久の時を生きるとはどのような感覚なのか。それは彼女にしか分からない。少なくとも俺には分かりかねる。

「私はね、ここにしかいれない。ずうっとむかしからここにいる。別れなんかもう慣れっこだよ。」

とても言い慣れたセリフという感じだ。何度繰り返したのだろうか。

「カミサマらしいな」

それはは俺には重い言葉だ。



俺は夏になるといつも地元に帰ってくる。新潟県の亀社町。

田んぼと山と山と山と山と山のド田舎。 

夏季休暇を使った10日間の泊まり。それが終われば都心に帰るということになっている。

家にいても家族は姉と話していて、俺は蚊帳の外。田舎なんで散策する場所も特に無し。前は懐かしいとも思っていたけど…もうこの町にそこまで思い入れもない。なら何の目的があってこんなことをしているのかと言うと…。

古びた神社に通うため。この神社は、なんの神が祀られているのかわからない。近所のじーさんが俺が子供の頃教えてくれた場所だ。外から見ればただの森にしか見えないけど足を踏み入れれば鳥居があってそこに「彼女」はいる。 

一応俺は彼女を神と認識しているけども、本当に神なのか?まあこんなこと、俺にとって何の問題でもない。

彼女がどれぐらい長くここにいるのか?それは彼女にしか分からない。孤独かはたまた自由か。俺には分からないし分かりたくない。



「はい、酒。それと、お土産。東京のおかき。酒によく合うらしいよ」

「おっ、ありがと。いやぁ、誰もお供えをしないからなかなか飲めないんだよね〜。」

もらってすぐ盃を酒で満たした。そのままグイッと。

「うーん、さいこー」

「それは良かったよ」

もう一つ盃が置いてあった。

「君も飲む〜?」

「いや、俺はいいよ」

「まだ、酒のおいしさにまーだ気が付かないか。今年で、21?22だっけ?いやぁ、早いねぇ。あんなにちっちゃかったのに。」

「おばあちゃんみたいだよ。それ」

実際に祖母には会ったことがない。生まれた時にはいなかった。

「年齢的にはおばあちゃんちゃんだよ。私は。カミサマだから若くみえるだけだよー。ていうか、まだ酒飲めないの?こんなに美味しいのにー。ホレ」

コツン。

空の盃が軽く揺れる。

「好きになれないんだよ、苦いし。それに、高い。毎年どんどん値段が上がってるんだ」

「それだけじゃないでしょ?」

「…」

「ごめん、忘れて」

酒、父は酒に酔い俺と母を殺しかけた。稲刈りの鎌を振り回し。祖父がそれを止めたが。父は今何をしてるのか。いや、あんな奴父とは呼べない。もう、俺には関係ない人だ。

「それでも、私にはくれるんだね。へへ、いや、ほんとにありがとぉ。」

ぱぁっとした心の闇を払ってくれそうな屈託のない笑みが俺を襲う。

「…どういたしまして」

ずっとここにいたいなぁ…。



俺の話をしよう。地元の高校を卒業した後。東京の大学へと通い。そのまま、今は大学教授助手をしている。研究内容は…機密事項だ。少なくとも表立って言える内容ではない。一言で言えばオカルトだ。



「ところでさ、私のこと今はどういう感じで見てるの?昔は「カミサマだけが僕の友達だー!」とかいってたけど。」

「うん?」今さら…

「いやあ、かわいかったよ。子供に戻しちゃおうかな」

「やめてくれ。はぁ、今はどうだろう…いや、今も友達だよ。大親友だ。」

こんな嘘をいつまでつき続ける気だ俺よ。全然そんなことはないだろう。俺は友達どころか彼女を…。

「友達…ね。ふーん…。それで仕事はどおなのよ」

「まぁ、ぼちぼち。」

「ぼちぼちって。神や妖怪。やっぱり私のせい?そんな仕事に就いたのは。」

「あー、まぁそうだけど。でも決定打になったのは教授だよ。あの人の研究、なんでか惹かれたんだ。」

底無教授。彼の研究はほとんど全てのオカルトを網羅していると言っても過言ではない。彼の目的は愛人の蘇生。狂っている。だが俺も人のことは言えないな…

「おーい、聞いてる?」

「ん、あうん」

「心ここにあらず、だね。ま、その教授にもあってみたいな。ソコナシね…。その野望には底がナシと…。」

「あれ、俺教授について話したことあるっけ。」

「いや、ね。底無なんて名字珍しいからね。名は体を表すというのは私たち神から言わせてもらえばそのとおりでしかないんだよね」

「ふむ、でも仕事したくないなー。あの人変な人だから…。ずっとここにいたいんだけど」

「だめだよーそれじゃ、ずっと人じゃないものに触れていたら君も人ではなくなっちゃう。君がそれでもいいならまあ…。」

「それでもいいなら?」

「えっ?あー、いやなんでもないよ。あははははは。」

盃をグイッと傾けた。俺には酒と一緒に何かを呑み込んだようにみえた。



「にしても、ここは涼しくていいな」

「昨日よりも涼しいね。でも、冬はすっごく寒いよ。雪だってたくさん降るんだから。」

「暑いほうが辛いよ。都心は倒れそうなぐらい暑い」

ヒートアイランドとはよく言ったものだ。

「冬…冬ねぇ。冬の事考えてたら寒くなってきちゃったよ。……。ねぇねぇ?ちょぉっとこっち来て?」

「ん?何」

「いいからいいから」

酒の匂いがすると途端に

「やっぱりあったかーい」

「ちょっと、暑い」

「離さないよー、ふふん」

酒臭いけど。好きな匂いだ。森の匂い。

「…ないで。」

温かい息がかかる。

「なんて?」

「ん?んん、いや。なんでもないよ。いやあ、懐かしいな。子供の頃はしょっちゅうだっこしてたよ。」

「恥ずかしいからやめて」

「あはは」

すごいスリついてくる。犬みたいに。

「髪の毛もサラサラー。よしよし。」

「ん、んん」

悪い気はしなかった。



「じつは用意していたものがあるんだよねー。それがこれ、じゃじゃーん。」

まるまるとした立派な…

「スイカ?どこから取ってきたの?」

「お供え物」

「それって、俺が食べてもいいの?」

「私が決めたんだから大丈夫。まあまあ、私のお供え物なんだから私の自由であるのだ」

自由だなあ

「まぁ、そうだよね。それで?」

「スイカ割り、久々にやってみる?」

あぁ、なるほど

「懐かしいな、やってみよう」

「そしたら私が指示役、そして君がスイカを割る。スイカ1個しか無いし。」

「分かった」

「目隠し、つけてあげるよ」

視界が封じられる。


「はいじゃあ始めるねー。」

「うん」

「前、前。うんいいよ。右もうちょっと右、はいそこで止まって。あと一歩前。」

着実に進んでいる感覚がある。

昔から指示が上手い。

「ここ?」

「そうそう、そこ」

力を込めて棒を振るう

「ふっ!」

パァン!

「おおー!キレイに割れたねえ」

拍手が俺に送られる。

「いや、その指示のおかげだよ」

「ふふん」

腰に手を当てている。誇らしげだ。



「んー。ほひひひえ(美味しいね)」

「そうだね、スイカなんてもしかしたら何年ぶりとかかもしれない」

「ほふはほ?(そうなの?)」

「別に、買おうと思わないから」

「ほふ?(そう?)ふーん」

「ちなみに食べながらは聞き取りづらいかも」

「でも聞き取れてるじゃん」

「まぁ、そうだけどさ」



「交通事故で亡くなった愛人を蘇らせる、ね。なかなかロマンチックじゃない?」

「いやいや、ありえないから。そういうのって生命のルールから反してるんじゃないの?」

「人間の手でそれができればそれはもう科学と変わらないから。まぁ、現代の価値観ではそうだよね。でも君も普通じゃないよ、そんな教授のもとで働くなんて」

「そうだよ。でも、やりたくてやってるからいいんだ。それに研究自体は面白いしね。」

「目的は話してくれないんですねー。焦らすな〜」

「いつか、話すからさ」



その後もカミサマと色んなことを話して…

「そろそろ時間か…」

ポツリと呟く。


「そろそろ、戻らないと」

「…ん、そうだね。また、寂しくなるな〜」

「寂しくないって言ってたじゃん」

「やっぱ嘘」

「はは…。あー、帰りたくない。」

「駄目だよ、さあさおかえり。ほんとに帰れなくなる前にさ」

「うん…、じゃあまた」

「バイバイ」

これで良かったのかな…まあ、また来年も会える…























「まって」

「…せっかく帰る力が出てきてたんだけどなあ」

「このままじゃだめだよ。」

「…」

「これじゃあ何年たってもこのまま。

「…」

「ほんとに。言いたいことあるんでしょ。」


「…。俺、は。」


「俺は、あなたの事が大好きです!」

言えた

「…。はは。ははは。やっと言ってくれた。うん、やっと。」

「何でカミサマが泣いてるのさ」

「そっちもでしょ」

本当に、まえが見えない

「私も、君の事がずっと大好きだったよ。だから、やっと」

「うん…」

「こっち」

「ん、!むぐ」 


「えへへ」 

酒の味がした



「それで、今後のことなんだけど…」

「私はここを離れるよ。一緒に東京に行こうと思う。だからよろしく。」

「行けるの?」

「まあ、カミサマですから。ま、でも君も人じゃなくなっちゃうかも」

「実はさ、研究内容がそれなんだよ。不老不死の研究。いや、それでいいんだ。同じ時間を一緒に過ごせるでしょ」

「まあ、知ってたけどね」

「え」

「わかるよ、きみのことだもん。ありきたりだしその研究。」

「なんだ、バレてたか…。」

「私も協力するね」

「…ありがとう。」

「うん」

「じゃあ」

「これから、よろしくね」






プロローグ

あれから1年、住んでいたアパートから引っ越して家を持った。2人で住むには狭かったから。

不老不死の方は実はもうなりかけだったらしい。子供のころカミサマといた時間が長すぎたみたい。

底無教授に関してはいまだ頭をかかえてるみたいだ。ま、カミサマがいるぐらいだから反魂ぐらいできるのかも。


カミサマは周りには見えないけど。俺は見える。もしかしたらほかの人もカミサマと、一緒にいるのかも?まぁ、分からない。でもカミサマと暮らして分かったことがある。あんま、人間と変わらない。こんなに、楽しいならもっと早く言っておけば良かったな。まあ、これからも時間はいっぱいある。楽しく暮らしていこう。

俺も神様と付き合いたいなって思います。

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