表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

1話 魔法少女の命乞

イケメン×貴女が前提の話なのでヒロインに名前はありません。


「いやもう無理無理死ぬって!靴でもなんでも舐めるから戦うのやめよ?あ、そうだ恋バナでもして時間潰しましょうぜアニキ!好きな子の1人や2人いるでしょ!話聞きますよ!?ね!?!?」


 砂塵の舞う公園に魔法少女ホワイトリリーの情けない叫びが木霊する。魔法のステッキに白いハンカチを結びつけ頭上で情けなく振る姿はどこからどう見てもみんなの期待を背負って戦う魔法少女のものではない。

 「なんなら他の魔法人間の弱点とか喋りますし、マホノワールの本拠地は……ちょいちょい変わるし姿くらましの幻術掛けられてるんでちょっと分かんないですけどそれ以外ならホントに何でもしますから命だけは!!」

 「……」

 土下座しそうな勢い──というかもう膝はついている純白の魔法少女を前に、男は左手に禍々しい赤色のオーラを宿したまま黙りこくった。何かを思案しているような間に、ホワイトリリーは固唾を飲んで目を瞑り白旗を振る手を止める。不規則に輝き揺れるオーラがやがて霧散し、男は力なく左手を下ろした。


 「……ナマエ」

 「へっ」

 「…………同じクラスにナマエというアホがいる。アイツは俺がいないと駄目なくせにその自覚がない。どうすればいい。」


 敵の口から飛び出た自分の本名。ありふれた名前とはいえ、こんなところで同名だなんて珍しい。何故か恋バナに食いついてきた敵に内心舌を出しながら、恋に溺れた男の顔でも観察してやろうとホワイトリリーが瞼を開く。マジマジと敵を見つめれば、髪や瞳の色は違うものの、右目の下に並ぶ特徴的な二つの泣きぼくろと鮫を彷彿とさせるギザギザとした歯はどこからどう見ても友人のもので──


 悲鳴の代わりに口の端が引き攣った。


 ホワイトリリー改めナマエはこの日以降、警報で呼び出される度に敵(友人)から恋バナと呼ぶには過激すぎる相談をされる事になる。

 少しでも機嫌を損ねるような言動をすればホワイトリリーは圧倒的な暴力の前になす術なくその場で塵となって消えるだろう。かといって敵の提案を全て肯定し「やっちゃえやっちゃえ!」と野次を飛ばそうものなら恐らくナマエが精神的に死に周囲の人間が物理的に死ぬ。だってそれくらいやべぇんだもの。男がナマエに向けてくる感情が。


 ナマエは自分本位で俗っぽい人間である。幼い子供十人と自分の命を天秤に掛けられても、ギリギリまで悩んでから子供の命を優先するような人間性。その理由も『自分の意思で子供の命を奪ったという罪悪感に耐えられないから。』であって、結局は自分可愛さなのだ。

 魔法少女ホワイトリリーになったのだって、悪の組織からみんなを守りたいなんて高尚な理由ではない。下校中に出会ったマホノワールの偉い人に脅されて仕方なく、ってやつだ。可能ならあの日に戻ってマホノワールの人間と会わないように学校を休む。それくらいには嫌々変身してるのだ。だって魔法少女のメリットって見た目が少し可愛らしくなるだけだし。


 白を基調としたフリルの衣装。枝毛一つない光沢のある白いロングヘアーに空を閉じ込めたかのような澄んだ水色の瞳、唇は小さくどこか儚げな印象を与える魔法少女ホワイトリリーの姿は普段のナマエとは似ても似つかぬ。


 公園の小さな水溜りに反射したホワイトリリーの姿を見て、ナマエが苦笑いを零す。

 (“コレ”に惚れるならまだしも何でナマエが好きなのかな。レイなら私の性格だって熟知してるはずなのに。)

 敵──もといナマエのクラスメイト兼友人、レイ。お金持ちのいわゆるお坊っちゃまで成績優秀スポーツ万能眉目秀麗の完璧超人。目の下にくっきりとできた隈といつも顔色が悪いせいで取っつきにくい印象を与えるが、話してみれば案外優しく面倒見がいい。まさに漫画のキャラクターみたいな男だ。

 (家業を手伝って勉強もしてジムにも通って裏ではワルイーゾのメンバーとして暗躍して──ってそりゃあんなに顔色も悪くなるか〜)

 友人の隈の原因を突き止め一人納得したナマエは、戦場と化した公園に突っ立っているということを忘れ、能天気にうんうんと頷いていた。

 「おい。」

 「へっへい!何でしょうアニキ!?」

 「その鬱陶しいノリをやめろ。」

 「はい!」

 「お前の命乞いに乗ってやる。有効な働きをしてみせろ。ただし、少しでも俺とナマエの関係が悪化したらその時は分かってるな?」

 「はい……」

 レイの左手に再びオーラが集う。ナマエの背中に冷たい汗がつたう。消えかけていた緊張感が再び戻った。

 「今日はもういい。マホノワールの連中には適当に報告しておけ。」

 空間転移の魔法か。レイはその場から音もなく消えた。

 「……死ぬ……」

 その場にズルズルと座り込み両手で顔を覆う。遠くから駆け付けてきた仲間が自身を呼ぶ声が聞こえるが、まともに返答をする余裕など既になかった。


 (ホワイトリリーの正体に気付かれないように私への恋愛相談に乗る。できるか…?いや、やり遂げて見せる。私の平穏のために!!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ