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もう一つの切り札! 

 あれから1週間が経って、やっと先生のコンディションが治って俺達は次の戦地へと赴くことになった。

「次は密林だな。冒険者達の縄張りだ」

「また撃ち落されて、捕まってってのはごめんですねぇ」

「密林の四天王は弓の名手らしい。あり得るかもしれん」

 ぬわんだってぇ。

「コンフリクトソウル! リアライズ!」

 で、グリフィスちゃんしゅつげーん。

「ふわふわ!」

 と、ゾフィーが抱きつく。アンタも好きねぇ。


「「「ぎゃあああああああああああああ」」」

 やっぱり撃ち落されるのでした。


 でぇ! 今度囚われたのは俺ってわけ。

 姫騎士でも、女教師でもない俺を捕らえたのは

「にゃ!」

 という語尾の猫耳娘さんだった。

「あのー。僕を捕らえてどうするんでしょう」

「ニャアの夫となるにゃあ!」

「はは」

 はい?

「もう一度いいですかね? ニャアさん?」

「にゃんどでも言うにゃよ。ニャアの夫となるにゃ!」

「何故に」

「お前! ティガー・マーシャルにゃよね?」

「なんで知られてるんすか」

「冒険者どもが口々に言ってたにゃ! ティガー・マーシャルが魔槍のリュティガーを打ち取った天才魔法使いのティガー・マーシャルがやって来るって」

「冒険者って馬鹿の集まり? 敵と吞気に会話すんなよ」

「にゃ! ニャアを敵と見抜くとは流石にゃ!」

「いや、その猫耳どう見ても本物だし魔族ですよね?」

「そうにゃ! ニャアは魔弓のニャア! 魔王軍幹部にゃ! 因みにさっきの情報は拷問して得たものにゃ!」

「ロクでもねぇ……」


「ニャアは強い子供が欲しいにゃ! けど四天王のオスどもは皆ブスにゃから、四天王以外の猛者を探していたにゃ!」

「そこで、四天王をうっかり倒してしまった俺に目をつけたわけですかー」

「そうにゃ!」

「いやね。でもね。リュティガーにとどめ刺したのは僕じゃないんですよね」

「知ってるにゃ! ゾフィーヤとかいうメスにゃよね?」

「その通り!」

「メスには興味にゃいにゃよ」

「ですよねー」


 ティガーが捕まった!

「先生! どうしよう!?」

「お、落ち着けぇ。キッペンベルグ。こういう時こそ冷静にだな」

「ティガーがいないと私たちって魔王軍に有効打がないですよね? 特に今回の四天王は遠距離攻撃が得意だから、盤面を無茶苦茶にできるティガーがいないと余計詰みませんか?」

「ぐわ! 急に冷静になるな!」

 つまり、ティガーの自力での脱出を待つしかなくない?


「にゃあ! では早速!」

「やーめーろー! ズボンを脱がそうとするなぁ!」

「にゃ? なんにゃ? これは?」

 ニャアが手にしたのは俺のデッキケースだった。

「お、ちょっと! ダメ! それだけはダメ!」

「にゃあ?」

「おいー! クソ猫! やーめーろー!」

「にゃあ!」

 デッキが宙に舞った。

「ぎゃあああああああああああああ!!!」


「そ、そんな落ち込むにゃよ」

「俺の! 魂! ……」

「魂!? そんにゃに大事だったにゃか!?」

「当たり前だ! それがあるから俺は、空想具現化魔法を使えるんだぞ!」

「にゃあ! それは、いいことを聞いたにゃ!」

「だからお願い! デッキを戻させて! 拘束を解いて!」

「そんにゃこと言っても無駄にゃよ」

 本当に! 大事なものなんだって!

「このカードを奪ってしまえばお前は空想具現化魔法を使えにゃいにゃ! 敵の牙を抜くのは当たり前にゃ!」

「牙っつうか魂なんだって……」


 私たちは歩いてギルドへと辿り着いた。

「つ、疲れた!」

「密林だからな体力が奪われた」

「ティガーならまぁ大丈夫でしょう。取り敢えず、宿を探しますか」

「ま。そうだな」


 もうボロボロ。

 なんとか貞操の危機は免れたが、地面に散らばったデッキを見ると何かが削られる。

 ニャアは飽きたらしくどっかへ消えた。束の間の休みを貰うと眠くなってきた。


 あの時の俺は、空想具現化魔法をうまく扱えなくて、すっかり落ちぶれていた。

 そんな時、出会ったのが、コンフリクトソウルだった。

 色々なソウルズと出会えて、自分の中であやふやだったモンスター、空想のイメージを確立できた。

 魔法のレベルの低い同級生とも仲良くなれなかったが、おっさんという友達もできた。

 だから、コンフリクトソウルは、そのデッキは俺の魂なんだ。

 ふと目に入ったカードは、スカウトザウルスという序盤に出すソウルズだった。

 体長はどれくらいかな? 0.7メートルというところかな?

 重さは100キロくらいか。

 あぁ会いたいよ。俺のソウルズたち……。俺の。俺の魂……。


 その時、唐突に吊り上げられた腕の痛みが引いた。

「もし?」

 誰?

「あぁよかった! 意識がありますね!」

 目を開けると少しびっくりした。それは、女声の主が犬の顔をしていたからだ。

「あんたは?」

「ジョセフィーヌ。ニャア様のお世話をさせていただいております。貴方のことが心配で主には黙って枷を外させていただきました」

「それは……。どうも」

 俺は、眠気を引きずりながら踏みしめた。

「デッキ……」

 拾わなくちゃ。

「お手伝いしますわ」


 やっと集まった。

 砂を払いデッキケースにしまうと呼応するように、意識がはっきりとしてきた。

「逃げなきゃ」

「お供します!」

「けど、君も共犯者になってしまう」

「そのカードを見られれば、ニャア様はすぐに勘づきます。あのお方は残酷な人ですから、貴方と共に逃げた方がいいのです」

「けど、君は魔族だよ? 俺の逃げた先で迫害されるかも」

「迫害なんて命あっての物種ですわ」

「……そういうことなら」

 俺は、彼女の手を握った。


 そして、魔弓のニャアはティガーがジョセフィーヌと共に逃げ出したことに気が付く。

「ふしゃああああああああああああああ!!! あの雌犬! ニャアの番を奪ったにゃあ!!!」


 大量のスカウトザウルスを実体化させ、ニャアの拠点を無茶苦茶に荒らしてやった。

 俺とジョセフィーヌはその内の1匹にまたがって、人類側の拠点へと向かっていた。

「ティガー様! 来ます!」

「スカウトザウルス!」

 カーブをかけると地面が爆ぜた。

「魔法!?」

「いいえ! ニャア様の狙撃ですわ! また来ます!」

「ちぃ!?」

 俺は、デッキからカードをドローした。

 弓には銃だ!

「コンフリクトソウル! リアライズ!」

 現れよ!

「撃ち射貫く竜! ガンナードラコ!」

 龍人がカードから現れる。彼は、入り組んだ密林を駆け上がり、ニャアに対する報復射撃を開始した。


 森の方が騒がしい。それで目覚めると、先生が扉を勢い良く開けた。

「キッペンベルグ! ティガーだ!」

 私は、それを聞いて急いで着替え始める。


 ガンナードラコだが、どうやら、押され気味らしい。アイツ殆どバニラだしな!

 一応、召喚時効果でトラップを破棄できるが。

 ロードナイトドラゴンのようなアタック中の効果は持ち合わせないのだ。

 だから、俺の想像力よりも、相手が上回れば簡単に負けてしまう。

「ぎゃおん!?」

 あぁ! やられた! 次のカード! ドロー!

 コストを払って召喚!

「「コンフリクトソウル! リアライズ!」

 現れよ!

「ストライクドラコ!」

 ストライクドラコは必ず相手とバトルさせる能力がある!

 爆発魔法のような射撃に思い切り突っこんでいく。

 よし! こっちへの弾幕がなくなった!

 けど、アイツはロードナイトドラゴンやニーベルンゲンのようなフィニッシャ―じゃないから。

「やっぱりやられた!」

「ティガー様!? ニャア様に対抗できるカードはありませんの!?」

「あるにはあるけど!」

 強力なソウルズは召喚するのに溜めがいるから、誰か。というか。

「ゾフィーか先生の協力がいる!」


 私は、飛び跳ねながら、密林を立体機動していた。

「魔法の補助も無しにそんな動きをするか!」

 先生の称賛は後。先生はラピッドストリームで追いかけてくる。

「ティガー!!!」

 私は彼の名を叫んだ。


 その声を聞いて

「あっちだ! スカウトザウルス!」

「ぎゃお!」

「ティィィィィガアアア!!!」

 目を赤く染めた猫の獣人、魔弓のニャアだ!

「け! そんなんが本性だと思ったぜ! 最初から好感がなかったんだ!」

「許さないにゃああああああ!!!」

 不味い!? 抜かされた!


 不味いティガーがピンチ!

「先生! 私を風魔法で打ち出して!」

「は?」

「早く!」

 私、ゾフィーヤは、勇者軍で新調した剣の抜刀体制に入った。


「なあああああああいす! ゾフィー!」

 割り込んだゾフィーに助けられた。

「にゃあ!? 魔族のニャアと同等の速度で動くにゃか!?」

「素の筋力で劣っていようと、速度を殺さない走り方を知っていれば追いつける!」

 脳筋が何か言ってらぁ。

 これで、召喚できる。

 選ぶのは、ロードナイトドラゴンでもニーベルンゲンでもない。もっと小回りの聞いてエグい効果のソウルズだ!

「コンフリクトソウル! リアライズ!」

 魔法陣が展開される。

「現れよ! 時間の反逆者! ザ・クロノス!」 

 数十秒をかけて、それは姿を現した。

 俺と同じくらいの身長の小型の龍人だ。

 咆哮する! その咆哮は入り組んだ木々をなぎ倒し、その大きさの割にロードナイトドラゴンと変わらない強さを内包していることを示した。

「な、なんにゃあああああ!?」

 そして、クロノスはニャアに突撃する。

「ゾフィー! もういい! 後はそいつに任せろ!」

 クロノスにはCSでも屈指の凶悪効果が内蔵されている。

 それは

「エクストラターンの獲得」

 つまり、2連続で自分のターンを行うものである。

 迫るクロノスにニャアが幾つもの狙撃を見舞いする。しかし、クロノスには効かない。

 俺の想像するクロノスは膂力だけでニャアの狙撃を上回っているのだ。

 そして、ニャアはクロノスの攻撃をなんとか捌く。

 が

「発動」

 時が止まった。

 音の無い空間の中で、俺とクロノスだけが動く。

「クロノスすまないけど攻撃はなし。ニャアが死んじゃうからね。それに、」

 俺は、風魔法で静止したニャアに近づいた。

「コイツは俺の魂に傷をつけた! 許せないんでねぇ!」

 俺は、拳を振り上げると、クロノスの召喚でなけなしになった魔力を込めて振り下ろした。


 正常に動き出した時間で呻くニャアに話しかけた。

「俺は、お前の番にはなれないよ。ニャア」

「な、んでにゃあ?」

「好きな子がいるんだよ」

「ジョセフィーヌかにゃ?」

「彼女はただ善意で助けてくれただけだよ」

 俺は、ゾフィーに手を振った。

「あの子。ゾフィーが好きなんだ。俺は、」


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