幕間 焚き火の夜の、ひとりごと
森を出て、二日が経った。
濃い木々のざわめきが少しずつ遠のいて、夜空が広くなった気がする。
おじーちゃんの梢から見上げた星を思い出した。
あのときは、早く寝なさいと子ども扱いするおじーちゃんと、ちょっと言い合いになったっけ。
今日は見つけた木立の間で、野営することにした。
ひとりで立てた小さなテント。
鍋には煮込んだスープ。
焚き火の火が、ぱちん! と小さく弾けた。
少し寒さが厳しくなってきた。
湯気ののぼるカップに、ふぅ、と息をかける。
「……やっぱり、ちょっとしょっぱいかも」
ひとりごとが夜に溶ける。
旅立ちの時に出会ったリスのような、不思議な生き物。
「クルルゥ」と鳴いたから、クルル。
小さな旅の同行者は、毛布にくるまってお休み中なのだ。
それに――どこかで、おじーちゃんが笑う、葉ずれの音が聞こえるような気もする。
《味は舌だけで感じるものじゃないよ。心もいっしょに味わうんだ》
おじーちゃんの根元で味わったあのスープ。
初めて焚き火で調理したから、ちょっと焦がしてしまって顔をしかめた私に、サラサラと音を奏でて笑う声。
《だからこの味も、いつか思い出して、楽しかったな、懐かしいなって感じると思うよ》
心の揺れ方が、火の揺れ方に重なる。
「ねえ、おじーちゃん。別れてたった二日だけなのに、もう懐かしいって言ったら笑う?」
星がいくつか流れた。
――焚き火の明かりが、私とクルルの影を揺らす。
「……明日は、どんな景色が見られるかな」
小さく呟いて、火を少しだけ強くした。
スープをもう一口。
今度は、ちゃんと、美味しい。
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