表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移してチートハイエルフさんになりました。今日も気ままに旅してます。  作者: てんえーとまり
一章 森での新たなはじまりと、世界樹の声
10/12

10.世界樹の森をあとにして

エルフ修行を始めてかれこれ二ヶ月ほど。なかなかにエルフらしくなっていたらいいなと思う。


ずいぶんと里の整備も進み、他に手を入れるような所があっただろうかと頭をひねる。あまりやる事も無いようだし、狩りも必要の無い乱獲はしたくない。


趣味の調合結果はというと、茎無しの体力ポーションは雑味が減った。飲みやすいのは良いことなのかな? 魔力で乾燥させたものは、体力ポーションに魔力回復効果が追加された。……一パーセントだけ。これは私のバカ魔力が原因だ。魔力操作の習熟度が上がると、それがなくなった。では、わざと魔力を込めると? 五パーセント程まではパーセンテージは上がったが、それ以上は失敗になってしまった。しかも入れた魔力に対して利率が低い。それでもまあ、初心者にしては良くやったのではないかと、一応の満足をしておじーちゃんに報告したのだ。


おじーちゃんも一緒に喜んでくれて、そこまでは良かった。


大層喜んだおじーちゃんは、これも使うだろうと、世界樹の葉と果実、花などを大量にプレゼントしてくれたのだ。


言えなかった。こんなに要らないよって。


ありがとうと何とか笑った私の顔は、引きつっていなかっただろうか。


実際とても有難いことなのだ。いずれ習熟度も上がり、エリクサーだって作れるくらいになるだろう。その時の練習に素材が足りないなんて事になりそうもないくらい、たっぷりと在庫が出来ている。


でもね、まだまだ初心者の域を出ない私には過剰だと思うんだ。


そんなこんなで現在は調合を封印しているのだ。もっとおじーちゃんがフィーバーしたらマズイ。

本当はもっと色んな思いつきを実践したかったのだが。


という経緯があって、新たな趣味の木像彫刻始めました。


おじーちゃんと話す時によく座る木の根に落ち着き、家を修復するのに使った木切れを、少しずつ削り取り、バランスを見てまた削る。陽にかざして凹凸を確かめてまた削る。急がずにゆっくり、形を作っていく。水出しハーブティーを飲んで一息ついてから、砥草で滑らかな表面に仕上げた。


「おじーちゃん、みてみて、ウサギ可愛く出来た!」

《本当だ、目のところが特に可愛く出来ているね》

「ふふ、でしょう?」


我ながら、初めてなのによく出来てると思う。


「これおじーちゃんのね」

《僕にくれるの?》

「うん、ちょっと待ってね」


細い小枝で小さな丸籠を作り、その中にウサギを入れる。こっそりと保護魔法を付加して、おじーちゃんの枝に掛けてみた。


《シシー、失くすと怖いから、上に登ってウロに入れてくれないかい》


おじーちゃんは、そわそわと枝を震わせた。

じゃあ、とブーツを脱いで登ろうとすると、


《ああ! ちゃんとハシゴを使わないと危ない!》


叱られてしまった。

なるほど、こういうところが大雑把でダメなんだろうな。今度こそハシゴを立てかけ、よいしょとおじーちゃんの木の枝を見渡す。

木の洞……あった。


「ここでいい?」

《そこの奥に》


念のためクリーンをかけて、ヒールをしてから奥の方に木像を設置する。なんかウサギの巣穴みたいだな。


《そうだ、木材が要るだろう? それから機会があれば杖や弓を作る時にも》

「ちょ、まっ――!」


ドサドサ、と。枝が積み上がっている。世界樹の。


「おじ、おじーちゃん、そんなに枝落として大丈夫?」

《これくらいならどうとでもないよ》


違うんだ。こんなはずじゃなかったんだ。何かの容疑者のような言い訳を、心の中で呟く。

どこが……何が悪かったんです?


《持っていきなさい》

「大丈夫なら、うん、良いんだけど。ありがとう」


弱々しい声でお礼を言う私に、優しい子だね、と言わんばかりにおじーちゃんはご機嫌だった。


もらってしまった好意は返せない、気分転換に近くの沢で蓮の葉モドキを採取していた。ふと思いついて、一番大きな葉を摘み取る。


あのアニメ、好きだったな。おじーちゃんの所へ帰ってお願いしてみようかな。軽い気持ちでそう考えて、足音軽く帰途につく。


「おじーちゃん、お願いがあるんだけど」

《お帰り、早かったね》

「あっ、ただいま。思いついてすぐ帰って来ちゃった」

《何か楽しいことでも思いついたのかい?》

「前に見たお話なんだけどね」


大中小の毛むくじゃらな妖精のお話。その中で夜中にやるあのおまじない。せっかくファンタジーに来たんだからやってみたい。


「おじーちゃん、この葉っぱ、見て」

《おお、大きいね。傘みたいだ》

「そう、それ! 傘! これをこうやって差して」


私は葉を両手で持ち、しゃがんでから飛んでみせた。


「ん〜〜、エイッ! って」


その瞬間、胸の奥で熱い何かが弾けた気がした。


《……シシー? 今、魔力が――》

「え?」


ドォオオーン!!


雷に似た爆音が響き渡り、足元の草が一斉に伸び、土が膨らんで暴れる。

目の前のおじーちゃんの体が光に包まれ、ぐんぐんと空へ伸び始める。


「えっ、ちょ、まっ――おじーちゃん!?」


ガタガタの地面に転びそうになりながらも、おじーちゃんを見上げる。


それは見上げても、てっぺんが見えないほどの大樹だった。幾重にも重なった枝葉は濃く茂って空を覆い、陽を拒むように広がって、昼だというのに森の中は淡く翳っている。

梢の影が地面に複雑な迷彩模様を描き出している。

その全てを支える幹は、まるで陶器のように白く滑らかだったが、その白は、決して無機質ではない。確かに生物の息吹を感じさせる力強さがあった。

パールのような光沢を持つ淡い虹色の粒が、幹の周りをゆるやかに漂い、穏やかな流れを描きながら根元へと吸い込まれていく。

それはまるで、世界そのものが大樹と共に呼吸を繰り返しているように感じた。

音はなく、つい先ほど強烈な轟音で逃げ去った鳥や小動物の気配もなく、森は静寂に包まれている。

ただ、淡い光が空気の中できらめき、午後の陽がゆっくりと角度を変え、葉の間を染めていた。


私は口をぽかんと開け見とれたまま、


「……ごめん。こんなに……なるなんて」


と涙目で呟いた。


《怪我はないかい、シシー》

「ないけど、おじーちゃん、おじーちゃんのが」

《進化したね》

「進化した? 世界樹が更に?」

《新たな種族の誕生だ》


とんでもないことをしてしまった。ちょっとした思いつきだったのに。

おじーちゃんに許可を取って鑑定をかける。


種族が大世界樹になっている。称号にも「新たなる種族」と「始まりの大世界樹」が付いていて、本当にいままでになかった種族を誕生させてしまったんだと、実感をかみしめる。


「どうしよう、何か不具合とかは?」

《とても爽快だよ、いままでにないくらいにね》


だからね、とおじーちゃんは言葉を継ぐ。


《あまり自分を責めるんじゃないよ、シシー》

「おじーちゃーん……」


ボタボタと涙が頬を伝う。あまりに優しい声だった。


《それに急いだほうがいい》

「急ぐって、何を?」

《旅立ちをだよ》


ザザーッとおじーちゃんの声が真剣になるが、言っている意味が分からなくて、視線をうろつかせる。


《これだけ真っ昼間に大音量で大きくなったからね、近隣からヒューマンがやってくるよ。シシーが見つかったら、事情を聞くために拘束されるかもしれない》

「こ、拘束ってそんな――」


嫌な響きに、顔が自然としわしわになって、語彙が詰まる。


《だから今から旅立ちの準備をするんだよ。ちゃんと自分の痕跡を消して》


ほら、早く! と急かされて、つんのめりながら駆け出す。


今から? こんなに突然?


そんな思いがこみあげるが、おじーちゃんはただ急きたてるだけだった。


コテージを収納して、地面をならす。里に散らばる道具を片付けに走る。

あとは……あとは? 混乱したまま、おじーちゃんの元に戻った。


「おじーちゃん、終わったよ」

《こちらへおいで》


指し示すところへ行きかけて、あれは……。


《新たな僕の素材だよ! 持って行きなさい》


こんもり山になった素材の数々。


おじーちゃんはおじーちゃんだった。変わりない。


「ありがとー」


やっぱり顔が引きつりそうになるのをこらえて、どうにか微笑んだ。




てくてくと歩く。初めに森歩きをした時とは雲泥の差で、すっかり道なき道を歩くのにも慣れた。

今は逆に、里から出来るだけ離れる為に森を歩く。

結構な勢いで寂しくて不安であると同時に、少しばかりの期待と楽しみ。

ふと小さな生き物の気配を感じる。

いつの間にか、足元には栗色なのに光に反射する毛が金色に見える毛むくじゃら。リスみたいに尻尾が大きい。


「お前、どこから来たの?」

「クルルゥ」

「はは、何言ってるか分かんないや」

「クールルーゥ、クルル?」


話しかけてきたと感じたけど、言語理解でも何を言ってるか分からなかった。


「あっ、コラ登らないの!」


素早く身体を駆け上って、肩に落ち着かれた。

まぁいいか、飽きたら降りるでしょ。


「ルルル〜」

「歌ってるみたいだね」


しばらくこの子を道連れに、森を行こうか。ちょうど寂しかったことだしね。


目指すはドクサペディアダ王国の東側、ラドナの街だ。

一章完結です。

「景色づくり」は毎章ひとつを目標にしているので、また次の旅もぜひ覗きに来てください。

次章の書きために入ります(*^_^*)


幕間を11日に更新予定です。いつもの12時に設定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ