第13話
「さ、させないよ…!」
ギィーン!
鈍い音がして、剣が私の目の前で止まった。
身を凝らすと薄っすらと魔力の膜が見える。
ヘーゼルの精霊が剣戟から守ってくれたみたいだ。
流石に斬られてしまうと思ったわ。
目の前で、殿下が震えている。だいぶ驚かせてしまったみたい。
「ゆ、指輪の力だ…!君が持っている指輪の魔力が、さっき君を操ったんだ…!」
「指輪…?これの事よね」
青い精霊にいきなり投げ渡されて、慌てて掴んだ指輪。それをポケットから出す。
どうすればいいの?遠くに投げ捨てればいい?
「なんで私の邪魔するのよ!解放されて自由になって、力を手に入れて色々遊びたいのに。王族の力なんて中々手に入らないくらい、美味しいエネルギーだわ。全部私の物になれば、どんな精霊よりも強くなれる!なのに私より弱っちい癖に!邪魔ばっかりっ」
ヘーゼルの精霊に邪魔された事が気に食わないのだろう。癇癪を起こしている。
「エドガー!ユーティス!頼む!」
その隙に背後に回っていたお兄様たちが、精霊を縛り上げ魔法剣で貫いた。
「エリー!指輪をあいつに投げつけろ!」
(え!?あ、あーえっと、えい!)
突然すぎるわ、ルーカス様!素人にいきなりは無理よ!
指輪は上手く青い精霊の近くに落ち、彼女は指輪の青い石に吸い込まれてしまった。
ユーティスお兄様が指輪に手を翳して魔力を込める。
よくわからないけれど、ヘーゼルの精霊が言っていた再封印ってやつかしら。
「エリー!さっきはもう駄目だと思った!俺自身で君を斬りつけるところだった。また血塗れで死んでいくのを見送らなければならないかと…」
「う、う〜。僕はちゃんと契約をまもるよ…」
この精霊さんには本当に助けられたわ。後でちゃんとお礼をしないと。
可愛く見えても精霊。
不敬だ〜!とかで恨まれたくはないわ…。
嫌だわ、さっきの青い精霊のせいでイメージが崩れているわ。
やっぱり人知を超える存在って本来は怖いのね。
「君が死んだら、俺はどうなっていたかわからない。保険を掛けていてよかった」
ルーカス様が私を抱き寄せて頭に何度もキスを落としてくる。
いや、心配してくれたのは分かるんだけれども。
ギュウギュウと強い力で抱き込まれているから身動きが取れない。
「あ、あのですね。ルーカス様…」
少し距離を取ろうと、声をかける。
「エリー…エリー…愛している。もう二度と離したくない」
嬉しい。ルーカス様の私に縋るような気弱な告白はとても嬉しくて、可愛らしいですわ。
でもでも、
ユーティスお兄様とエドガーお兄様の前では止めて。
身内が見ているのって物凄いダメージだわ…。
そのままの勢いで口にキスまでしそうだったので、それだけは必死で止めた。