第12話
「うふふふふ!さっすが王族の50回の死のエネルギーだわ!このまま、魔法を壊して失敗させたら、これが全部私のもの〜!」
青い精霊から物凄い魔力が溢れ出ている。
流石にこれはお兄様達だけだと無理そう!
精霊ってやっぱり凄い存在なのね。
「エリー、危ないから下がっていろ。そこの精霊、俺との契約内容を忘れるなよ!」
「わ、わかってるよ…!」
そう言い残して、ルーカス殿下は数メートル先で戦っているお兄様たちの横まで走って行ってしまった。
時間魔法が失敗してしまうと、私はこのまま死んでしまうのよね?
私を庇うように前に立つ、
ルーカス殿下、ユーティスお兄様、エドガーお兄様。
ルーカス様は、剣に特化したお方で、名前は思い出せないけれど何とかっていう王家の剣にも選ばれたらしい。多分今持っているのがそれなのね。
剣を見せてくださった事はないから全部又聞きですが。
ユーティスお兄様は、モヤシ魔法使い。まぁ自堕落で気持ち悪いと評判ですがそこそこの実力とのこと。
意外と器用に多くの魔法を使うことが出来るらしいと聞いたことはあるわ。
エドガーお兄様はモヤシ一族でありながら、魔法も剣も使える、いわば魔法剣士ですわ。身体もモヤシな父と2番目の兄と比べるのも烏滸がましいくらい立派で強そうな体つきをしている。
何度も剣戟と爆音が繰り返される。
こんな場面じゃ約に立たない、エリザベート。
流石に空気を読んで、大人しく離れます…。
少し避難するために更に下がった私の近くに居る、ヘーゼルの精霊。
「あ、あの一応、君に攻撃が向かってこないように守ってるからここから動かないでね…」
あら、あの青い精霊を止めて見せるって言っていたけれど、殿下に私を守る様に言われていたみたい。
「あなた、あの精霊を止めるって言っていたけれど、何か秘策でもあるの?」
あまり期待せずに聞いてみた。
幾らこちらに好意的な様子でも、精霊は精霊だわ。
信じすぎるのも良くないって現在進行系で学んている。
「か、彼女がもう少し追い詰められたら、また封じ込める予定…」
精霊は貴重な石や魔道具、装身具等に宿ると言われている。
「それはルーカス様の作戦なの?」
青い精霊が暴走した直ぐ後に、ユーティスお兄様とエドガーお兄様が現れた。
流石に偶然ではないだろう。
「う、うん。彼は青色の危うさに最初から気づいていた。だから、ぼ、僕とも別の契約を結んでいたんだ。内容はね、彼女が暴走して、彼の邪魔になった時に…か、彼女を僕の支配下に置けるような封印をしてくれるって…。うふふ」
うわ〜。聞かなければよかったわ…。
「そ、そして、僕は時魔法の完成と君を絶対に守り通すことが契約…。だから、勝手な事はしないでね…」
それは、流石に自分の限界を知っているから、あんな爆発音が響く場所に突入なんてしないわよ!
でも、何か引っかかるのよ。
だって、このままあの青い精霊が最強クラスの3人の人間とただ戦って、そのまま自分が弱るまで何もしないなんて事あるかしら。
そんな勝算がない様なことをする?
もし何か企んでいるなら、何処かで一発逆転を狙って弱点を突いてくる筈。
彼女の狙いは、殿下の精神を壊し、さらに時間魔法も失敗させてエネルギーを得る事らしい。
そこまで、彼を絶望させる?
それはどんな事かしら。
「エリザベート!ここに来て!」
青い精霊に名前を呼ばれて指示された。
何故、私は一瞬で移動したの?
気づけば、青い精霊を守る様に、3人の前に立っていた。
今、まさに斬りかかろうとしていたのだろう。
剣を振り下ろす瞬間の絶望的なルーカス様の顔。
愛する人を自分の手で殺してしまう。
そんな悲劇なら、魔法を壊すのに有効かしら。