32話 勝てない相手
一方の粗木田は春山警部の読み通りに住山スパイヤービルへと到着していた。
しかも春山警部が来るよりも早く到着していたのである。
粗木田はとても上機嫌になっていた。
「ふっ、ここまで来ればもうこの大いなる神の粗木田様の目的は達成したも同然だ。」
すると関口を見つけた警察官達が粗木田の近くにやってきたのである。
「君、ここは立ち入り禁止だぞ。現在世界経済開発会議が開かれているから、一般人は立入禁止になっているんだ。」
「ふっ、知っているさ。」
「なに?」
警察官達はいぶかしげに粗木田を見つめていた。
「とにかくここは立入禁止だからまた別に日に来てくれ。」
だが粗木田はその警察官達を無視したのだった。
「こいつらはどうしてやるかな。」
「おい、君、聞いていないのか?ここは立入禁止だから悪いが引き返してくれ。」
「なあこいつの顔どこかで見た事がないか?」
「えっ?」
警察官の一人が手配書を確認する。
「こいつ!!殺人鬼の粗木田哲也だ!!」
「なんだと!!」
警察官達が慌てて粗木田を包囲した。
「粗木田!!おとなしく手をあげろ!!」
すると粗木田が大きな声で言った。
「よし思いついた!!お前らはそのまま職務を放棄して家に帰ってもらうとしよう!!」
「何を言っている!!粗木田、早く手を・・・・」
警察官はそう言いかけたが、途中で言うのを止めてしまった。
そしてその警察官達は粗木田を放置してそのままゾロゾロと歩いていってどこかに消えてしまったのだった。
「はっはっはっは!!たわいもないな!!まあ当然か、俺は大いなる神の粗木田様なんだからな!!春山さえいなければどうという事はないんだ。」
「さてとではさっそく各国首脳にご対面しに行くか!!」
すると俺の周囲にあの男の声が鳴り響いた。
「粗木田!!!お前の居場所は分かっているぞ!!」
「なっ!!春山!!」
間違いないこれは春山の声だ。
俺は慌てて周囲を見渡した。
だが春山の姿は見えなかった。
「春山か!!どこだ!!どこにいる!!」
俺は何度も周囲を確認したが春山の姿は見つけれなかった。
「どこだ!!春山!!どこにいる!!」
するとまた春山の声が大音量で響いた。
「驚いているようだな粗木田!!」
やはり春山の姿は見当たらない。
それにスピーカーから大音量で春山の声が響いていた。
となると春山はここの警備本部から俺の事を見てやがる訳か。
再び春山の声が周囲に響いた。
「粗木田!!そこで待っていろ!!!今から逮捕しに行ってやる!!」
くそなんで春山がここいいやがるんだ。
バレないようにここまで移動してきたのに。
クソクソどうする?春山には守護霊が効かないから操れない上に、直接戦っても春山の方が強い。この大いなる神の粗木田様が負けてしまう。
「くそ、迷っている暇はない!!今は逃げるしかない!!」
粗木田はそう言うと、一目散に住山スパイヤービルから逃げ出したのだった。
「くそ、なんで春山の奴ここに来る事が分かったんだ!!おまけに先回りまでされるなんて!!」
一方こちらは春山警部
俺は粗木田が逃げ出したおよそ1時間後に東京都の住山スパイヤービルにある警備本部へと到着した。
世界経済開発会議の警備本部は住山スパイアヤービルの2階に設置されていた。
俺はすぐに住山スパイヤービルに入ると、すぐに警備本部の中を見渡した。
すると俺が入ってきた事に気がついて中年の男性が声をかけてきた。
「春山警部、よく知らせてくれた。粗木田の奴が現れていたようだ。」
「やはり、現れましたか。」
「うむ、警備についていた警察官で30名ほど職務放棄をした者達がいてな。気になって前後の監視カメラ映像を確認したら粗木田の姿を確認したわけだ。」
「それで粗木田は?」
「監視カメラの映像では関口は尻尾をまいて逃げていった。君の作戦が成功したようだ。」
「そうですか、ありがとうございます。」
実はあらかじめ俺の声を録音した音声データを田島警視に送っておいて、住山スパイヤービルのスピーカーから定期的に流してもらったのだった。
粗木田は俺と直接対峙しては勝てないと判断しているはずだから、俺の声を流せば粗木田はビビッて逃げると考えたからだ。
俺が到着するよりも早く粗木田が住山スパイヤービルに現れる可能性もあったので、念の為に田島警視にやってもらったがやってもらって正解だったようだ。
「粗木田はその場に俺がすぐに駆けつけてくると思い込んで逃げ出したんでしょう。」
「これで粗木田がこの世界経済開発会議に出席している各国首脳を襲撃を企んでいる事が明確になった。なんとしても粗木田の計画を阻止しなければならないな。」
「まさにその通りです。」
「粗木田の捜索にも人を出したい所だが、ここの警戒態勢を解くわけにもいかんしな。ふーむどうしたもんか。」
田島警視は考え込んでいた。
俺は田島警視に尋ねてみた。
「あの後の粗木田の目撃情報は?」
「この住山スパイヤービルに現れて以降の粗木田の足取りは全く掴めていない。」
「おそらくこの周辺に潜んでいると思います。粗木田がこれで諦めるとは思えません。」
「しかし粗木田は君を恐れている。君がここで睨みをきかせていれば、粗木田も各国首脳には手を出せんだろう。このままこの住山スパイヤービルにて各国首脳を守ってはくれないか。」
「それも悪い手ではないんですが、こちらが待ちの状態では粗木田も手出しはできないが、こちらも待ちの姿勢になってしまいます。根本的な解決ができないままです。」
「まあ確かにな。とはいえ粗木田を見つけるのは簡単ではないだろう。」
「ええこれまであれだけ派手に動いていた粗木田が途端に目撃情報がなくなりました。粗木田は自分の居場所をバラさないようにさらに慎重に動いているのでしょう。」
「ならやはりここで待ち構えるしかないんじゃないか?」
「いえ一つやってみたい事があります。」
俺は田島警視に自分の考えを話した。
「面白い作戦ではあるな。」
「ええ問題は理沙の負担が大きい事と東京都に設置されている監視カメラのライブ映像を全て笠歌の警察署に繋ぐ事が技術的に可能かどうかでしょうね。」
「たぶん繋ぐ事自体は技術的に可能だ。笠歌の警察署の会議室にでも新しい回線とたくさんのモニターを設置してもらう必要は出てくるが。」
そして俺は理沙に電話をかけた。
すぐに理沙が電話に出てくれた。
「理沙か?」
「うん私だよ。」
「理沙、そっちは大丈夫か。」
「うん笠歌の警察署にいるけど、私の方は何ともないよ。それよりもお兄ちゃんの方こそ、大丈夫だった?」
「ああ、俺は大丈夫だ。そうだ理沙、粗木田の狙いが判明したんだがどうやら世界経済開発会議に出席している各国首脳を操る事のようだ。」
「そうなの?」
「ああ。」
「なんかすごい事になってるんだね。それでお兄ちゃん、私に何か用事だった?」
「ああ実は理沙に確認しておきたい事があってな。」
俺は理沙にある頼みをした。
「という事を考えているんだがどうだろうか?」
「うん、いいよ。任せて。」
「引き受けてくれるか、ありがとう。」
「いいよ少しでもお兄ちゃんの役に立ちたいからさ。」
理沙は快く引き受けてくれた。




