23話 見つけた手がかり
俺と理沙は再び増当田物流の倉庫の敷地前へとやってきていた。
「ここがどうかしたの?」
「俺はここが気になって仕方がないんだ。」
「うん私もここは気になってはいたけど。」
そこに車に乗った千田刑事がやってきた。
「春山警部!!」
「千田刑事、忙しいところすまなかったな。」
「いきなりの電話でビックリしましたよ。」
「それでどうだった?」
「春山警部の言った通り、増当田物流は確かにおかしいですね。増当田物流の社長や専務に連絡を取ろうとしましたが、誰とも連絡が取れませんでした。」
「連絡が取れない。」
「はい、増当田物流の関係者とは一切の連絡が取れませんでした。」
「それじゃあここに入る許可は貰えなかったわけだな。」
「あっいえ、それは大丈夫です。」
「この建物は別の会社が所有をしていて、それを増当田物流に貸し出しをしている形になっているようで、そっちの会社とは連絡が取れて、必要なら中に入ってもらって構わないとの事でした。」
「そうだったのか。しかし増当田物流の社長と連絡がつかないというのは、増当田物流の社長は夜逃げでもしたという事なのか?」
「それがどうも夜逃げではなさそうなんです。」
「どういう事だ?」
「それが建物を所有する会社の人から色々話を伺ったのですが、半年ぐらい前から増当田物流の社長や専務とは連絡がつかなかったようです。」
「それで。」
「ただ増当田物流の名義でこの倉庫のレンタル料だけはしっかり払われていたようで、今月分もちゃんと払い込まれていたという事です。」
「経営苦で社長が夜逃げをしたという訳ではなさそうだな。」
「この倉庫のレンタル料だけはしっかり払われていますからね。栗林刑事の話では増当田物流は倉庫業をしている実態がまったくなかったみたいですし。トラックの出入りを誰も目撃していません。これは何かあります。」
「まあここで悩んでいても始まらないな。千田刑事、鍵は借りてきてくれたか?」
「はい、ここにあります。」
千田刑事はそう言うと電子キーを俺に見せてきた。
「それじゃあ開けてくれるか?」
「はい。」
千田刑事はそう言うと、電子キーをメインゲートの前の端末にかざした。
少ししてピピピと電子音が鳴って、扉がゆっくりと開いたのだった。
「それじゃあ中を確認するか。」
俺達は倉庫の中へと入っていった。
「暗いな。」
倉庫の中は真っ暗で何も見えなかった。
「真っ暗で何も見えないね。」
「照明のスイッチはどこだ?」
すると千田刑事の声が聞こえてきた。
「春山警部、こっちにスイッチがありました。今照明をつけますから。」
「頼む。」
少しして周囲が一気に明るくなったのである。
俺達は周囲を見渡した。
「なににも置かれていないな?」
「やはりこの倉庫の営業実態はないようですね。」
「ピカピカの倉庫で設備は最新鋭みたいだが、一切の荷物が何も置かれていないな。」
かなり広い倉庫であったが、何も物は置かれていなかったのであった。
ただただだだっ広い空間がそこには広がっていた。
「それにここに入ってからめちゃくちゃ悪寒がするのはなんでなんだ。」
俺はここに入って以降、気分の悪さと共に悪寒を感じていた。
すると俺の問に理沙が答えてくれた。
「悪寒がするのも当然だよお兄ちゃん。ここには幽霊がいっぱいいるんだから。」
「いっぱいいる、どのくらいいるんだ?」
「数でいったら3千体ぐらいはいると思う。しかもただの幽霊じゃないよ。」
「どういう事だ。」
「みんな青い自然霊だよ。雄太君や春香や笠歌線の被害者達に取り憑いていた奴。」
「その青い自然霊もここにいるのか?」
「ここにいるって表現は少し違うかな。」
「ここにいる幽霊全てが青い自然霊なんだよね。3千体の幽霊全てが青い自然霊なんだと思う。」
「なんだと?」
「お兄ちゃん、ここにいるのは危ないと思う。すぐに出よう。」
「えっ、ああ。」
俺は理沙に強く促されて足早に倉庫の外へと出てきたのだった。
そのまま車に飛び乗って、倉庫を後にしたのだった。
「どういう事だ、理沙?」
「あそこには3千体の青い自然霊がいたのか?」
「うん、しかもどの自然霊達もすごく苦しそうにしてた。」
「苦しそうに?」
「うん苦悶の表情をみんな浮かべてたから。しかもあの青い自然霊はかなり強力な霊だと思う。」
「なんですぐに出ようと言ったんだ理沙?」
「千田刑事が危険だと思ったから。たぶんあの中の一体に取り憑かれるだけで、命の危険に晒されると思ったから。」
「だからすぐに出ようと言ったのか?」
「うんあそこに留まれば留まるほど千田刑事の命が危険に晒されると思ったから。」
「だったらすぐに千田刑事の除霊をしないとまずいか?」
「いやそれがさ、あれだけ青い自然霊がいたのに、誰も千田刑事に取り憑いてきてないんだよね。」
「そうなのか、それは良かった。」
「うん、私はそこが心配だったんだけど、喜宇だったみたい。あの青い自然霊達はほとんど私達に関心を示さなかったからかもしれないわ。」
「なあしかしなんであの場所に霊が溜まっているんだ?地脈とかの関係なのか?」
「それが全然分からないのよ、ここは別にプラスもマイナスもない土地だから。そういう特別な土地じゃないの。たぶん霊道すらないと思う。」
「それじゃあなんでそれだけの数の青い自然霊がうごめいているんだ?」
「分からない。」
「あともう一つ気になる事があるの。」
「気になる事?」
「うまく表現できてるか分からないんだけど、青い自然霊達って他の青い自然霊と姿や気配がそっくりなんだ。」
「青い自然霊は顔から気配までそっくりなんだ。普通は幽霊と一括りにしても、見た目とか気配とかは全然違うんだよね。道を歩く通行人の人達だってそうでしょ。服装や年齢や髪型とかが違ってくるから、みんなバラバラになるじゃない。でもあそこの青い自然霊達は見た目や雰囲気までそっくりなんだ。」
見た目や雰囲気までがそっくりな青い自然霊達か。
「なるほどな、分かった。」
「理沙、この青い自然霊達を祓ったりはできるか?」
「たぶん無理だと思う。1体でも無理だったのに、それが3000体もいるとなるとさすがに祓いようがないよ。」
「理沙、祓うんじゃなくて御霊として救う事はできないか?例えば五十日祭で。」
「五十日祭か、あの青い自然霊達を祓う事ばかり考えてたから、御霊として救おうとは考えてなかった。うん、やってみる価値はあると思う。」
すると今度は理沙が俺に尋ねてきた。
「ねえお兄ちゃんこそ、なんであの倉庫に来ようと思ったの?」
「理沙が栗林刑事は襲われたんじゃないかって話をしてくれただろう。あの時にある考えが浮かんできたんだ。」
「ある考えってなに?」
「口封じをしてるんじゃないかと思ったんだ。」
理沙は困惑した顔をしていた。
「それって犯人が警察に捕まらない為にする事でしょ。今は祟りとかの話をしてるんだよ。そんなのは全然関係ないように思えるんだけど。」
「理沙の言う事は最もだ。俺達の口封じがしたいなら、呪術なんてまどろっこしい事をせずに直接俺達の口封じをした方がよっぽど早いし確実だ。」
「でしょ。それに口封じの為に人を呪ったり祟りするなんて普通の人にはそもそもできないと思うけど。」
「そもそも呪術や祟りなんてものは世間一般からはかけ離れた世界の話になってしまうからな。ただもし犯人が○○だとすればどうだろうか?」
「えっ?」
理沙はとても驚いた様子を見せていた。
「理沙、今から俺の推理を話すから聞いてくれないか?」
「う、うん。分かった。」
俺は理沙に自分の推理を話した。
「どうだろう理沙、俺の推理は?」
難しい顔をした理沙が言いにくそうに答えてくれた。
「うーーん、お兄ちゃんを傷つけたいわけじゃないだけど、さすがに荒唐無稽すぎると思うよ。それはもはや推理ですらないと思う。」
「ああ、もちろん荒唐無稽ではある事は理解している。だけど神主や霊能者としてはどう感じた?」
すると今度は納得したような顔を見せてくれた。
「霊能者としてだったらお兄ちゃんの推理は、なんか府に落ちるんだ。推理としては荒唐無稽であっても霊能者としてなら納得できるみたいな感じかな。」
「俺的にもこの推理なら筋は一応通るんだ。前提条件が滅茶苦茶ではあるが。」
だが俺は理沙の返答を聞いてすでに確信を抱き始めていた。
「でもそれが不可能ではないとしても、誰が犯人なのかなんて調べようがないんじゃない。」
「そこは一つ考えがある。」
俺は千田刑事に再び電話をかけた。
「千田刑事、すぐに調べて欲しい事がある。」




