表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/36

2話 不可解な行動

俺は新川刑事と共に亡くなった焼死事件の被害者の3人の一人である野々(ののみや)当夜(とうや)さんを調べる事になった。


俺は新川刑事と共に愛知県の尾琴間(おことま)市へと向かっていた。


「野々宮当夜さんは大学生なんだよな?」


「はい、尾琴間(おことま)大学の3年生だそうです。」


「ならまず当夜さんの自宅に行って聞き込みをして、その後で大学の方にも聞き込みに行くとしよう。」


「分かりました。」


「しかし御琴間(おことま)市というのは割りと大きな町なんだな。」


「そうですね、人口も50万人を超えるらしいですから割と大きな都市ですね。」


新川刑事に案内してもらいながら、当夜さんの自宅へとやってきた。


「ここが当夜さんの自宅です。」


俺達は閑静な住宅街へとやってきた。


その住宅街の年季の入った一軒家が当夜さんの実家だった。


俺達は車から降りて玄関前にあるインターホンを押す。


少しして家の中からはーいという声が聞こえてきた。


そして中年の女性が外に出てきたのだった。


「えっとどちら様でしょうか?」


中年の女性が訝しげに俺達を見つめていた。


俺は懐から警察手帳を出して見せた。


「刑事さんですか?」


「はい、実は当夜さんの事でお話をしたいと思いまして。」


すると正子さんは突然俺達に迫ってきたのだった。


「刑事さん!!教えてください!!当夜はなんで笠歌公園になんて行ってたんですか!!当夜が20日の日に行方不明になって、一昨日に警察から笠歌公園で焼死していたって知らされて、それで大慌てで笠歌にいったら当夜が本当に亡くなってて!!もう私なにがどうなっているのか全然わからなくて!!刑事さん、当夜はなんで笠歌公園なんかに!!」


「お、落ち着いてください。現状では我々にも分からない状態なんです。」


「そうなんですか。」


「ええ、それを解明する為に今日こちらに伺わせてもらったんです。」


「刑事さん達でも分からないんですね。」


正子さんはやっと落ち着いてきたのだった。


「すいません、取り乱してしまって。」


「あっいえ、構いませんので。」


「それでいくつか当夜さんの事を伺いたいのですが、宜しいですかな?」


「分かりました、何でも聞いてください。」


「ありがとうございます。」


「ではまず当夜さんは普段はこの実家に住まわれていたんですか?」


「ええ当夜はこの家に住んでいて、ここから御琴間(おことま)大学に通っていました。」


「でしたら事件があった5月20日の当夜さんの行動って分かりますか?」


「はい、当夜は御琴間(おことま)大学に通っているんですが、あの日もいつも通りに大学に行くと言って、朝の7時頃にこの家を出かけていったんです。いつも通り大学で授業を受けて、夕方頃には帰ってくると思っていたんですけどいつまで経っても帰ってこなかったんです。それで次の日になっても帰ってこなかったんで、警察に捜索願いを出したんです。そしたら当夜が焼死体で見つかったって聞いて、もう何がなんだか分からなくて。」


「当夜さんは大学をサボったりする人だったんですか?」


「当夜はそんな不真面目じゃありません。大学の授業にも毎日ちゃんと出席していました昔から遅刻一つしなかった真面目な子なんです。いつも約束の時間の何十分も前に到着して待ってるぐらいの子なんですよ。」


「そうなんですか。」


「ええ。」


「それでは当夜さんが最近何か悩んでいたり落ち込んでいたりした事はありませんか?」


「うーん悩んだり落ち込んだりはしてないと思います。むしろ何度も挑戦していた資格の試験に合格して喜んでたくらいです。」


「そうなんですか?」


「はい。」


「それじゃあ当夜さんは静岡県の笠歌(かさうた)市にある笠歌公園にはよく行かれていたんですか?」


「たぶん行った事はないはずです。家族でも笠歌公園なんて行った事もありませんよ。」


「でも当夜さんにとってはお気に入りの場所だったとかはありませんかね?」


「当夜のお気に入りの場所は御琴間空港です。当夜は飛行機が大好きで御琴間空港には当夜もよく行っていましたが。静岡の笠歌公園なんて言葉は当夜から一度も聞いた事はありませんよ。」


「そうなんですか。」


「当夜さんに仲のいいお友達とかいらっしゃいましたか?」


「うーん、あの子引っ込みじあんだからあまり仲のいい友達はいなかったと思います。」


「そうですか。」


すると正子さんが大きな声で頼んできた。


「刑事さん!!どうか、当夜になにがあったのかを突き止めてください!!お願いします!!」


「ええもちろんです。今はまだ調査中なのではっきりした事はお伝えできませんが、詳細が判明しましたらすぐにお伝えいたしますので、それまで待ってもらえないでしょうか。」


「分かりました。刑事さん、どうかよろしくお願いします。」


正子さんは何度も頭を下げたのだった。


そして俺達は当夜さんの自宅を後にした。


「特に収穫はありませんでしたね。」


「そうだな。」


「春山警部、次は御琴間(おことま)大学に向かいますか?」


「そうだな次は御琴間大学に向かおう。」


俺達は次に御琴間大学へと向かった。


「ここだな。」


俺達は御琴間大学へとやってきた。


「大きな大学だな。」


「そうですね、駐車場だけでこの広さですから。」


学生用の広大な駐車場に加えて遠くの方にはグランドや体育館や教育棟などが見えていた。


広大な敷地の中に様々な建物が建てられていた。


俺達は駐車場に車を置いて御琴間大学の事務棟へと向かった。


事務棟に入ると受付の人にさっそく尋ねてみた。


「すいません。」


「はい、いらっしゃいませ。」


「我々はこういう者です。」


俺達は警察手帳を見せた。


「刑事さんでしたか。刑事さんがなんの用事でしょうか?」


「実はこの大学に通っていた野々宮当夜さんの事でお話を伺いたいんですが?」


「野々宮当夜さんですね、ちょっとお待ちください。調べてみます。」


受付の人はそう言うと、PCを動かして当夜さんの事を調べてくれた。


「野々宮当夜さんは商業部の3年生のようです。」


「えっと野々宮当夜さんのお話を伺いたいんですが、誰から聞けばいいですかね?」


受付の人は少し考えた後で答えてくれた。


「うーん、そうですね。野々宮当夜さんは粗木田(そきだ)ゼミのゼミ生みたいですから粗木田(そきだ)教授からお話を聞くのがいいと思います。今から粗木田(そきだ)教授にお伝えしますから、少々お待ちください。」


「はい。お願いします。」


受付の人はそう言うと、固定電話の受話器をあげて、通話を始めた。


粗木田(そきだ)教授、お忙しい所失礼します。事務局に粗木田(そきだ)教授と話をしたいと刑事さんがいらっしゃっていますが、今お時間は大丈夫でしょうか?・・はい、・・はい。ではお願いします。」


受付の人が電話を切って、俺達に教えてくれた。


「粗木田教授がこちらまで来てくれるそうですので、そのままお待ち頂けますか。」


「ええ、ありがとうございます。」


俺達はその事務局で待っていると、中年の男性が俺達の前に現れた。


「えっと私に会いたいという刑事さんはあなた方ですか?」


「はい、野々宮当夜さんのお話を伺いたいと思いまして。粗木田教授は野々宮当夜さんの事をよく知っていると聞きましたので。」


「はい野々宮はうちのゼミ生ですからよく知ってはいますが、なぜ刑事さんが野々宮の話を聞きたいんですか?」


「実は野々宮当夜さんが5月20日に静岡県の笠歌公園で亡くなっていたんです。」


「亡くなった、どういう事ですか?」


「5月20日に野々宮当夜さんが焼死体で発見されたんです。」


「なんて事だ!!最近授業やゼミを欠席していたから心配はしてたんです。」


粗木田教授は大きな声を出して驚いていた。


「あっ、すいません。大きな声を出してしまって。ここではなんですから私の研究室へどうぞ。」


粗木田教授はそう言うと俺と新川刑事を粗木田教授の研究室へと案内してくれた。


研究室にある椅子に俺と新川刑事が座った。


向かい側に粗木田教授が座りさきほどの話の続きを始めた。


粗木田教授の研究室には古そうな書物が所狭しと本棚に並べられていた。


「すごい数の本ですな。」


「ええ私の研究分野は民俗学ですからね。」


「これだけの本があれば研究資料には困らないでしょう。」


「いえこれぐらいでは資料としては全然足りませんよ。この5倍の資料が自宅に置いてあります。」


「そうなんですか。」


「ええ。」


「ああそう言えばまだ自己紹介していませんでしたね。私は御琴間大学の主任教授をしております粗木田(そきだ)哲也(てつや)です。」


「それで野々宮が焼死体で発見されたというのはどういう事なんですか?まさか野々宮は殺されたんですか?」


「申し訳ありませんが粗木田教授、なにがあったかについてはまだ捜査中の段階なので詳しくお話する事はできません。」


「そうですか、すいません。分かりました。」


「えっとではいくつかお伺いしたいんですが、野々宮当夜さんはどんな生徒でしたか?」


「そうですね、野々宮は至って真面目な生徒でしたよ、ゼミも一度も欠席した事はないし提出物もいつもちゃんと期限までに出してくれていました。私が受け持っている授業にも毎日遅刻もせずに出席してくれていましたし、成績も優秀でしたよ。」


「なるほど。」


「当夜さんは何か悩んでいた様子とか落ち込んでいた様子はありませんでしたか?」


「落ち込んでいた事はなかったけど、経営ビジネス検定の1級が受かって喜んではいましたよ。」


「喜んでいた?」


「ええ経営ビジネス検定の1級は難関試験ですからね。私に何度も合格証書を見せてくれましたからよっぽど嬉しかったんでしょう。」


「落ち込んでいたり、悩んでいたりする様子はなかったんですか?」


「私が知る限りではなかったかと思います。」


「では野々宮当夜さんは静岡の笠歌公園に行かれたことはありますかね?あるいは笠歌公園に行ってみたいとかを聞いた事はありますか?」


「うーん野々宮とはよく話をしてはいましたが、笠歌公園なんて言葉を聞いた事は無かったな。野々宮は飛行機が好きなようで、よく御琴間空港に行ってくるとはよく言っていましたけどね。」


「そうですか。」


「では野々宮さんには仲のいいご友人とかはいましたか?」


「うーん、野々宮は引っ込み思案な所があったから友達とかはいなかったと思います。」


「では次にお伺いしたいんですが、5月20日の日は野々宮さんはこの大学には来てないですよね?」


「5月20日ですか、いやなんかあの日の朝に野々宮を見た記憶があるんですよね。たぶん野々宮は来てたんじゃないかな。」


「粗木田教授、それは本当ですか?」


「ええ恐らくは、なんでしたら確認しましょうか?」


「確認できるんですか。」


「ええこの御琴間大学では学生証にICカードが入っていてそれを各棟の入退場のゲートを通る時にかざして入退場していますから。各生徒の入退場の記録は残っているんです。ちょっとまってくださいね。」


粗木田教授がデスクのPCを操作を始めた。


大学内のシステムを立ち上げて確認をした。


粗木田教授がPC画面を見ながら頷いていた。


「やっぱりそうです。野々宮は5月20日の午前8時23分に講義棟の正門ゲートから入場しています。」


「粗木田教授、その入退記録を見させてもらって構いませんか。」


「もちろん構いませんよ。」


粗木田教授はそう言うとPCの画面を俺達にも見せてくれた。


「本当だ、野々宮さんは確かに午前8時23分に正面ゲートをくぐっているようですね。でも粗木田教授、この日の退場時間が表示されていませんよ。」


「そうなんですよ、そこはおかしいなと私も思いまして。」


「これ見てください。」


「これは。」


「野々宮の5月20日以前の入退記録です。5月19日までは入場も退場もちゃんと時間が表示されているでしょう。」


確かに粗木田教授の言う通り5月19日までは入場時間の他に退場時間もちゃんと表示されていた。


「他の生徒は入退場の処理をちゃんとやっているんですか?」


「ええやっていますよ、というかゲートにICカードをかざさないとどの棟にも出入りできませんから入退場処理をしないなんて事は普通は考えられないんですが。」


「ではどうやって野々宮当夜さんは正面ゲートを通らずに講義棟から脱出したんでしょうか?」


「うーん、考えられるのは講義棟の一階の男子トイレには小窓がありますから、そこからだったら何とか大人一人ぐらいだったら抜け出せるとは思います。」


「野々宮さんはその男子トイレの小窓から抜け出したと言われるんですか?」


「うーん、退場記録がないとなるとそうとしか考えられないんですよね。だとしてもなんでそんな事をしたのか全く分からないんですよね。帰るのであればそのまま正面ゲートをくぐって退場すればいいだけですからね。」


「そうですよね。」


粗木田教授はかなり困惑しているように見えた。


「粗木田教授、まあその件はそこまで詳しく突っ込む気はないので。」


「そうですか、すいません刑事さん。」


「では最後に伺いたいんですが、当夜さんの様子で最近何か変わった事はなかったですか?」


「いや特に変わった事はなかったと思いますよ。いつも通りという感じでした。」


「そうですか、ありがとうございます。」


「粗木田教授、お時間を割いて頂きありがとうございました。」


「いえいえとんでもありません。また何かありましたら遠慮なく来てもらって結構です。野々宮の為にも協力は惜しみませんから。」


「では我々はここで失礼します。」


俺達は御琴間大学を後にした。


「春山警部、この後はどうしますか?」


「この大学の周辺で聞き込みをして行こう。」


「分かりました。」


俺達はその御琴間大学の周辺で一通りの聞き込みをした後で一旦捜査本部に戻る事にした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ