13話 飛び降り
道路にいた通行人達はパニックになっていた。
「えっ?何が起こったの?」
「なんか落ちてきたけど。」
「と・・飛び降りだ!!人が飛び降りたんだ!!」
「ええっ・・!!」
俺はすぐに飛び降りた人物の顔を確認した。
それはやはり春香さんだった。
春香さんが飛び降りたのだ。
俺は春香さんに呼び掛けた。
「春香さん、大丈夫ですか?春香さん。」
春香さんの意識はすでに無いようで、俺の問いかけに何も返答はしてくれなかった。
目も全く動いておらずずっと天を見て動かなかった。
俺はすぐにスマホを取り出し、救急車を呼んだ。
「消防ですか?救急ですか?」
「救急です。九是山駅前本町通り1丁目のスエダビルの前で飛び降りが発生しました。女性が一人飛び降りた模様、意識不明で大量の出血をしています。すぐに救急車をお願いします。」
「分かりました。すぐに救急車を手配します。なるべく被害者を動かさずに救急隊の到着を待ってください。」
「分かった。」
「誘導もしないとまずいな。」
俺は通行人が足を止めて集まり始めていたので、誘導を始めたのだった。
そこに理沙がやってきたのだった。
「お兄ちゃん突然飛び出してどうしたの?」
慌てて理沙に駆け寄る。
「理沙、落ち着いて聞いてくれ。」
理沙は頷いて聞いてくれた。
「うん、大丈夫。」
「実は春香さんが飛び降りをしたみたいだ。」
「えっ?春香が?」
「ああっ。」
「嘘?」
理沙は驚いて人の壁をかき分けて春香さんの方に向かっていった。
そして理沙は春香さんの変わり果てた姿を見て驚いていた。
「そんなー!!春香!!どうして!!」
理沙はその場に座り込んでしまった。
「理沙、しっかりしろ。気をしっかり持つんだ。」
「う・うん。」
それから数分後、救急車が到着したのだった。
救急隊員が春香さんを救急車に乗せたのだった。
すると救急隊員がこう言ってきた。
「救急車を呼ばれたのはあなたですか?」
「はい、春山浩二と申します。」
「この方のご友人の方ですか?であれば救急車での同乗をお願いしたいんですが。」
俺は理沙に尋ねた。
「理沙、救急車に同乗してくれないか?」
「もちろん同乗するよ。」
「分かりました、ではご同乗をお願いします。」
俺と理沙は春香さんの搬送に付き添う事になった。
救急車の中で理沙は春香さんにずっと呼び掛けていた。
そしてそのまま九是山総合病院へと春香さんは運ばれたのだった。
すぐに春香さんは手術室へと運ばれていった。
そして午後9時過ぎに九是山総合病院の先生達が手術室から出てきたのだった。
その中には矢場先生の姿もあった。
理沙はすぐに矢場先生に駆け寄っていった。
「矢場先生、春香は!!春香はどうなったんですか?」
矢場先生は首を横に振った。
「残念ですが・・春香さんは亡くなりました。申し訳ありませんが、すでに手の施しようがなく。」
「そんな。」
理沙はその場に泣き崩れてしまった。
矢場先生が俺達に説明をしてくれた。
「春香さんは頭部や脊椎に強い裂傷があったうえに、出血量も多かったのでそれらが死因になったと思われます。」
「そうですか。」
春香さんが亡くなったとの言われてとても悲しくなった。
そして理沙はずっと泣き続けていた。
それからしばらくして理沙が落ち着いた頃に、俺は理沙に声を掛けた。
「理沙、大丈夫か?」
理沙は立ち上がると、俺に返事を返してきた。
「ごめんね、お兄ちゃん取り乱しちゃって、もう大丈夫だから。」
「無理はしなくていい。」
「ありがとう、でももう大丈夫だから。」
「ならいいんだが。」
「本当にすまなかった、気晴らしのつもりで九是山に来たのにこんな事になってしまって。」
理沙はハンカチで涙を拭いながら答えてくれた。
「ううん。私の方こそごめんね。お兄ちゃんだって事件で大変なのに、お兄ちゃんにばっかり気を使わせちゃって。」
すると突然後ろから誰かに声を掛けられた。
「今宜しいでしょうか?」
俺は驚いて後ろを振り返ると一人の背広姿の若い男性が立っていた。
「はい、なんでしょうか?」
俺はその背広姿の男に尋ねたが、その男は首を横に振った。
「あっいえ、あなたではなくそちらの女性に声を掛けたんです。」
その背広姿の男は理沙の方を見たのだった。
「私ですか?」
「春山理沙さんでよろしいですよね?」
「はい、そうです。私が春山理沙ですが。」
するとその背広姿の男は懐から手帳を取り出すと、それを俺達に見せたのだった。
その手帳は警察手帳だった。
「自分は九是山署の栗林と申します。佐田春香さんの飛び降りの件を担当する事になりまして。春香さんのスマホを確認したら春川理沙さん貴方の着信履歴がありましたので、この病院の先生から貴方がこちらにいらっしゃると聞きましたので、お話を伺わせてもらおうと思いまして。」
理沙は少し驚いた様子で栗林刑事に答えた。
「刑事さんですか?」
「ええ、そうですよ。」
すると今度は栗林刑事が俺の方を見つめていたのだった。
「うん?まさか?」
栗林刑事はずっと俺の顔を覗き込んできた。
そして不思議そうな顔で俺に尋ねてきた。
「あのう間違ってたら申し訳ないんですが、もしかして春山警部ですか?」
「ええそうですが。」
すると栗林刑事は嬉しそうな顔になった。
「おお!!やっぱりそうですか!!警視庁の敏腕捜査官として名高い春山警部にお会いできるとは光栄です!!」
「ああ、ありがとう。」




