ミニチュアハウス
「ついに最高のミニチュアハウスが完成したぞ!」
模型作りを趣味とする友人からそんな連絡を受けた私は彼の家へと遊びに行った。彼は私を歓迎すると家の中へと招き入れる。
「ところでミニチュアの前に一つ良いかい。家の隣にあるあの大きなものはなんだい? ブルーシートがかけられててよく分からなかったけど、もう一つ家でも建てているのかい?」
私の質問に友人はそんなことはどうでもいいじゃないかと言うと、せかせかと私をミニチュアのある部屋へと案内した。
そこには精巧なミニチュアサイズの家が置いてあった。しかもその外観はいま私たちのいるこの家と瓜二つである。
汚れまでしっかりと再現されているその家を見て私は感心するが、しかしこんなものが最高のミニチュアなのか? という疑問が浮かんだ。これくらいのクオリティのものなら彼はいままでも何度か作り上げている。
それを察したのか友人は窓から中を覗き込むように言ってくる。言われるがままにミニチュアハウスの窓から中を覗き込んで見ると、なんとそこには私と友人のミニチュアがあり、しかも私のミニチュアは少しかがみ込んで机の上に置いてある箱のようななにかを覗き込んでいるのだ。よくよく見てみればそれはこの家の小さな小さなミニチュアであるようにも思える。
ここまで作り込めばたしかに大したものだと私が顔を上げると、ふと妙なことに気が付いた。
いつの間にか部屋が少し暗くなっているのだ。窓からの光が遮られているらしい。
どうしたのだろうと窓を振り返った私は思わず肝を潰した。なんと窓の外から、大きな大きな目がこちらを覗き込んでいるのだ。しかもその目は私の目元に似ているような気がする。
驚きのあまり家を飛び出した私を見て友人は手を叩いて笑う。そして家の方を指差した。
「ミニチュアの家を覗き込んでいるの再現したんだよ」
彼の指差す方を見ると、足元にブルーシートが落ちている、目だけが精巧に作られたハリボテのような巨大なロボットが家に張り付くようにして窓に目を向けていた。
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