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緋色の封印

その明け色の髪はほのかに輝き、


たしかに、何か革新を感じさせる存在感を放っていた。


「ウルティノア・アルヴァルト…人類有史以来初めての世界統一と平和統治を達成し、尚且つ、その若さでも異能でも他の追随を許さないレベルの、曰く、【現人神】。成したこと全てが隔絶した才能を表す指標でしかないとどんな偉業を当然と思われている存在。」



「“現代の絶対者”…か。」


目を閉じながらノアの経歴とも賛辞とも違う第三者視点の概要を語ったホムラは“絶対者”と言うフレーズと共に目を開く。



ノアの前へ進むホムラ。


興味深げに見るノアだけでなく、異能生命体含めた全てのものの視線が集まる。



「貴方が絶対者と言うなら私と1つ勝負をしていただけませんか?」



「…何だと?」


ロアがその言葉に反応し、不穏な気配を発し始める。


その場の誰もがーー(異能生命体を含めて)その発言に驚いていた。


ノアを知るものは不遜どころかその命知らずの発言そのものに驚き、

異能生命体たちは自分たちの全員でことに当たるのが暗黙の了解であり超越した存在である自分たちだけでなく、もはやノア本人ですらそう考えているという意識であったことの裏切りに驚いていた。


「貴方が勝てば、私のチカラの根源たる因子を余すところなく開示し、あなたに全てを捧げましょう…しかし」




「私が勝った場合、貴方の破天裁魔の力をいただきます」



その発言に場が凍りつく。


「…それを受けることに何の意味がある?」

「貴方は“絶対者”なのでしょう?」



ノアの問いに即座に切り返すホムラ。


「それが本当であれば私が勝つ理由はないはずですし、あなたが負ける道理もない」


ロアが口を挟む。


異能生命体(センチネンクルス)と恥知らずにも名乗る貴様たちがどのような企てがあるやも知れぬそのような勝負をノア様に挑むなど!!!」


「あぁ、言葉足らずでしたねノア様のお好きな格闘戦、武術での真剣勝負(・・・・)ですよ。」



憤慨するロアに即座に陳謝するホムラ。


「…ほぅ?」


何を言い出すかと思えばと言った反応を見せるノア。

何か嫌な予感を感じ取ったロアが異能のチカラを全開にする。


「いけません!ノア様!!今度ばかりは私の命を持ってでも止めさせていただきます!」


瞬く間に翻り、光の剣と光の槍を虚空から光と共に取り出したロアはまず光の槍を投擲し、爆速で上段半ばに両手に構えたまま突進する。


「ならん。」


いつのまにか(・・・・・・)光の槍を右手でつかみ、ほむらの眼前で止めたノア。


「我に挑む格闘者は拒まない…知っておろう。」


決して睨まず、ただ強い眼光で見るノア。

ノアへの狼藉を返すようにまたもいつの間にか(・・・・・・)背中から一撃で仕留めんとするところを、すんでのところで押し留めたロア。

ノアの眼光に恐れとは違った意味の震えを纏わせながらミハイルのところまで下がった。





「来い。」




武舞台で待つノア、伴った風圧から、玉座との距離は何百mもあるがロアとのやり取りの間に瑕疵の長距離を異能を使わずに移動していたようだ。


ホムラもロアからの攻撃に顔色ひとつ変えず、ノアからの合図を受ける前からすでに歩き始めており、


武舞台へ歩き進めるホムラからは徐々にオーラが揺らめき静かに灯る炎のように立ち昇り始めていた。


ふと足をとめ、真上に振り上げるホムラ。

脚にまとったオーラごと振り下ろし放たれた炎撃はステージ端でぶつかり、

いつのまにかホムラが立っていた。


「合図は要りませんね」



お互い瓜二つの相貌が視線を交差する。


音もなく2人の姿が会場から消えた。




バガドバババズガガガガガッッッッッッ!!!





凄まじい爆音が響き、撃ち合う両者。


しかし互いに練り上げられたオーラはどんどん膨らんでいく。


「神羅剛血」


「鏡炎刹羅」


ノアは膨らんだオーラが収縮していき、逆にホムラはどんどん薄く広く範囲を伸ばしていく。



ノアの攻撃の破壊力は見るからに強くなり、

ホムラの攻撃に対して受ける手数を減らしても受け切れる防御力を獲得していっている。


対するホムラは、先読みするかのように避け、受け流し、ダメージを無にする動きで、どんどん加速してカウンターの一撃を加えようと試みている。


速度を上げ続けるホムラを無視し、一撃必殺の重みまで拳撃を練り上げたノアの拳がホムラの芯を捉えようとしたその時。



ホムラの動きが掻き消えてノアの拳とホムラの拳が合わさり武舞台が爆発炎上した。



「何…!?」


「貴方の神羅剛血は当然知っていますよ。」

「もちろんその技が練り上がるまでに一撃加えようとはしたんですが。無理でしたね。」


その間にも幾度となく打ち合うが完全に同じモーションで合わされるノア。


「わたしの鏡炎刹羅はオーラで読み取った互いの武を焼き写して取ります。」


「そうして写し取った武は当然、完全に再現できます。」


互いの拳撃と拳撃が交差しあいスクラムとなって動きが止まる。




「十合。」



「それだけあれば決着は着くでしょう。」


完全に拮抗した戦いであるにも関わらず、まるで勝利を確信しているかのような物言いに、武を極めた者ならこれだけ拮抗した戦いがどう転ぶかなどわからぬが道理であろうと、半ば呆れながらも決着を見越した大技の存在を予想して警戒するノア。


「さぁ、撃ち合いましょう…!」


拳撃は激しくなるが全く打ち合わせられるノア。

異能が介在しない以上、ただひたすらに打ち続ける。


「あと八合。」


それでも格闘スピードは加速していき、常人の目にも止まらぬ速さになっていく。


「五合。」


さらに加速し、遂に決着のために畳み掛けに来たか。と一部の油断なく、ノアはその速さについていく。


「ニ合…一合。」



パッと、動きを止めて先ほど撃ち合っていた時の3倍以上の距離まだ離れるホムラ。



しかしホムラは大技の動きを見せることなどなく、むしろ動きを変えたのはノアの方だった。




疲労してないはずだが身体が重い。


「貴様…何をした…?」


「何も?あえて言うなら私自身が強くなっていってるといいますか。」


よくみるとホムラはノアの神羅剛血を完全に自分のものとしている。


「しかし、その感覚はあながち間違いでもありませんよ?」


また幾度と打ち合う二人。


「今のあなたはまともにチカラを使えないでしょう?」


その言葉に自らの破天裁魔が機能しない状態であることに気づくノア。


「気づかないのも無理はありません。鏡炎刹羅が写し取るのは武だけではない。」


「自らの闘争の記憶、戦闘の記憶それらが魂としての貴方を写しとる。」



「これは“封印”なのですよノア様。」



ロアとミハエルが動けない。

これは破天裁魔の恩恵を受けたものがその恩恵を持つものを攻撃できない仕組みだった。


「あなたを私に写し取ったわけです。」


「さあ、最後の一撃ですよ。構えなさい。」


構えるホムラ。


「…」


ノアも応じて構えをとる。


結末は呆気がなかった。


「焼写武身」


ノアの体は熱を持たない炎に巻かれ、焼かれた部分から光と化していく。


「見事だ…確かに今をもって、貴様に破天裁魔は使えるようになった。」


笑みを浮かべるホムラ。


「だが、このような騙し討ちのテイで、我が権能が貴様に従属はしないな…!」


目を閉じたノアは空を仰ぎ見るように顔を向ける。

一気に光となったノアが不死鳥を模った光となり霧散した。


「(ロア、ミハイルよ、すまないな不覚をとった。)」


「「(我が主!)」」


2人にのみ伝わる意思。



「(ここは退け。)」


「(戦ってみてわかった。奴らは邪な想いを胸に用意周到に準備された存在だ)」


「(ノア様異能者たちはいかがいたすので?)」


「(救えるものは少ないだろうが救ってやってくれ)」


「(ノア様は如何いたしますか?)」


「(我は肉体を失ったことを利用してこのまま異能発展前の2000年代に向かう)」


確かめたいこともあるしな。と続けるノア。


「(過去へ…!)」


「(では私たちも。)」


ロアとミハエルが続ける。


「(貴様たちは時間の檻に囚われぬ存在、好きにするが良い。)」


ノアはその言葉を最後に存在を感じられなくなった。


「ではミハエル…!」


「ええ…参りましょう…!」


2人の神官が動き出す。


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