表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/63

巨神

眩暈がするほどの閃光と鼓膜を割るような爆音。


 辺りには夥しい死体と咽びかえるような鉄の匂いが充満している。


  砕け散った巨大な金属の残骸。


 膝から崩れ落ち、友の体を抱き上げる。


 次第に自分は何故こんなことをしているのかわからなくなるほど、目の前が絶望で暗く染まっていく。


 友の華奢な胴体を殆んどの内臓を持っていくような形で穿たれた大穴・・。


 穴からは未だ血が流れ、"死"というモノがそこにはあった。


 更には目の前にある金属の残骸と同じ攻城に使われる巨大な兵器が迫っている。


 抗うことのできない絶対的な死の奔流と強くなっていく友の死の感覚を前に、恐怖で動けなくなってもおかしくないような状況。


 しかし、その時内から湧き上がるのは死への恐怖でもなければ敵への怯えでもない。


 あるのは全ての理不尽に対し何も守ることが出来なかった無力な自分への怒りと殺意。


 強い感情とともに莫大な力が自分の身体の内側で鳴動し、鼓動を早くする。


 その瞬間─────





世界は紫電に包まれた。




迸る力は金属・熱・雷電を統べて、


脈動する大地の隆起を促し、


遥か地平に見える山脈を小指で蹴り飛ばして(・・・・・・・・・)しまうほどの巨人へと形ずく。




「…………………………」



もう何も感じない。



周囲に電離したプラズマ空間を展開して自信を本能的に圧死しないように切り取った何もないスペースで、


巨人の心臓部とも言える部分で、



暗闇に


ただボーっと


俯き


ただ浮かんでいた



虚無の中心で、闇と同化する少年に呼応して、





巨人はただ力を振るった。






〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜




 (セント)ルイス学園とはその名の通り聖神王国の中心に立地する巨大な学術施設で、大きく分けて二つの学術部門で所属を分ける。


 個人によって千差万別な『拡理力』(エクステンド)の力を研究したり『魔法』(ソーサリー)を社会の公共事業に利用する方法を研究したりなど研究開発を主とする“学園〟。


 そして超常の力が悪用されないよう監視、また悪用された際はそういった超常能力犯罪者を取り締まる監視者(チェイサー)や国防はもとより過去の大戦の遺物である魔道兵器の確保・破壊など軍に従事する者などを輩出するのが“中央学術院〟だ。


東堂ハジメはその一年生として、


春から学園へ通学する新入生だ。


だが、


「やっべぇ!遅刻する!?」


飛び起きたハジメは制服に腕を通し、


窓から射出(・・)


ハジメは、明らかに目立つカタチで講堂の前に着地したのだった。


魔法や異能がある世界で何をそんなに驚くのかと思われるかもしれないが、もちろん通常通り《・・・・》の方法でチカラが用いられていたのであれば、目立つだけでそこまで波風立てるほどのことではなかったかもしれない。


しかし、ハジメのチカラの異様さ《・・・》は少しでも魔術や異能に対する知識があればわかるのだ。


周りから見て、ハジメの不可思議な点は二つある。


一つ、異能を使った形跡がないこと。


二つ、魔術に必要なものと思しき道具を一切身につけていないこと、だ。


高度な魔術を使えば、ほぼ必ず余波が生まれる。

魔法による世界への干渉は事象が起こるのに必要だったエネルギーを魔力などで補うことで成立させる因果の逆転であり、その際必要なエネルギーが事象を独立保持させるまでのエネルギー経路が露出したり、複数事象の解決エネルギーが混線して発火や放電、爆発などの非目的事象の成立を引き起こしたりなどが起きやすい。

それをゼロにできる技術を持つ魔術師は魔術界隈では高位の術者として特別待遇を受けるなど、とても重用される貴重な存在で、そのレベルの技術をもつ人間が一年生、ましてや入学者にいるはずがないのである。


また、異能に関しても同様に不自然な点がある。

異能の力は大小変異問わず異能者以外が触れている世界の次元とは違う次元空間を伴っており、その力が具現化される際は必ず周辺一帯がその能力者の伴う空間が支配する次元に置き換わるように変遷していく。

これ故に、異能力者たちはどんな能力者でも統一して『拡張者』(エクステンド)と呼ばれており、世界の変遷は魔術異能問わずなんの力も持たない一般市民でも接している世界が書き変わるような感覚を覚えるために能力者はその力を使えばすぐに他人から認識されるのだ。

しかしその兆候すらもない。


これは明らかに異常なことだった。



だがこの東堂ハジメはこの学園において、

すでにその段階を通り越していた。


「死ね!ガキ!!」


「うっとおしわね!避けないでよ!」


「どりゃぁああああ!!!」


「当たってぇーー!?」


四方から飛んでくる攻撃なんのその。



「悪りぃな!まだランク下げるわけにはいかねーんだ!!」



全ての攻撃を潜り抜けてその先へ



廊下でも階段でもどこでも攻撃を受け(潜り抜け)ながら、教室へ



「「「「待ってたぜ!」」」」

「「「「待ってたわ!」」」」

「「「「待ってたよ!」」」」


教室には愛すべきクラスメイトたちの集中砲火がまっていた。


【起動】(アウェイクン)



ここにきて初めて始めが力を解放する。



チカラによって流された各種攻撃は窓へ



ドカァァァアアアン



「ほう。」


窓側の校舎外壁を吹き飛ばし襲撃は終了した。






「そこまで!」




「今日も当日最優秀者(トップランカー)はまもれたようじゃの」



教壇には学園長が立っていた。



「おう!まだ負けるわけにはいかねーからな!」

「…じゃが!」

「ん?」


「左見てみぃ…?」


言われる通り向いたあとその意図に気づき


ビクッ


と動きが止まるハジメ。


「ワシは首位主席(トップオブトップ)の心構えを教えたはずじゃよな…?」


首位首席_______全てを優雅にこなす学生の代表であり、当日最優秀者が目指すべき目標である。



「あー、ゴメンみんなトイレ行くってそこのジジイに…言っといて!!!!」


「誰がジジィじゃボケナスがぁあーー!!!」


そうして、

この学園どころか世界で五指にはいる力を持つ存在である識理の魔翁(でんせつのジジイ)と、


最強の力を持つ起動巨神(しきべつふめいのガキ)

鬼ごっこが始まるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ