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アルバドリーの凜環

ギャイン!



弾けたのは二つの剣戟。


一方は、天道化、ミハエル

紡ぎ出されるは限りない光の剣。


一方は、緋炎の化身ファイアレッド・センチネンクルス、ホムラ

迸るは滅ぼし尽くす緋炎の刃。



「…。」


「焦っているのか?人造天司。」


「焦る?何故だ。」


「フ…、仮に焦っていないのだとしても、今の状態が冷静でないことくらいはわかるぞ…?」


「戯言を…」


「まぁ、なんにせよ、何もお前が案ずることはない」


「お前の主がこの時代に戻ってくることはないのだから!」


バキン!


砕けるような音は、ミハエルの光の剣から発せられたものだが、それはその剣先が欠けたり、砕けたものではなかった。


同時に。


揺らぐ炎の先端を鋭い炎の刃として剣戟を展開していたホムラは、それを囮にして展開した。


元々実体のない炎の刃は受け止められるごとにその場所に瞬間的な熱分布を作っていたのだ。


そうして作られた温度差で生まれたのは大気圧の歪み(・・)


完全なる不壊の刃である“光の剣”では、

ましてや完全防護である“光の加護”を纏ったミハエルには、

その各点の、ごく限られた空間の一点一点が恒星の中心温度ほどまで高められていることに気づく要素すら得られなかった。


「…!」


「遅い!」


発生した気流により纏う光の加護ごと揺らされるミハエル。

だがそれだけではない。


「【陽炎葬送刃(プロミネンスグレイブ)】」


その大気圧が生み出したのは風。


太陽の表面でさえ温度差で乱気流が発生し火焔地獄のような荒れ狂う環境であると言う。


恒星の中心温度に達するその温度と、かたや十数度にすぎないこの場の気温ではその温度差で発生する風の刃は想像を絶するものである。



そしてさらにその大気の移動に、ホムラは己の炎の素であるチカラを媒介させ炎熱の噴出風斬撃(ジェット・ブレード)を作り出していたのだ。



ギャギャギャギャギャ!



「…ッ!」


「逃れられるとは思わない方がいい。」


「そのヤイバがお前を焼き斬るまで止まらぬよう常に熱による乱気流を起こしている」

「この音は、その光の護りを打ち破らんと表面を削っているモノだ。」


「かと言ってその護りを纏ったまま、その暴風から逃れられるほどの速度で脱出することはできまい?」


「そんなことができるなら私をスピードで圧倒し、倒している…それほどには先ほどの何合かの打ち合いでお前の力を見させてもらったからね」






「【GGR】」


「!!」



瞬時に反応したホムラは背に炎環を出現させ、

全身を燃やした姿に変化して高速移動し、回避挙動をとった。




ドォ!



ホムラの背、向こうで天を貫く火柱が立つ。

もはや、確認する必要すらなかった。



「…彼らを止めるには君はつきっきりになると踏んだのだけれど、ね」


「貴様のように抜かれるものがいないかの確認としてしばらく様子を見ていたが…やはり貴様だけだったようだな、逃れられるのは。」


神の咆哮、ロアである。


そして、


「助かった…と今回は素直に感謝しよう」


「お前は余計な文句をつけずには感謝できんのか!」


陽炎葬送刃(プロミネンスグレイブ)】から脱出したミハイルだった。


「…。」


自身に向けられたと思っていた【GGR】であったが、当然ホムラを狙ってはいたものの、本当の狙いは一瞬でも敵の攻撃から逃げれずにいたミハエルを狙ったものであった。


ホムラは回避した直後それに気づき再干渉して【陽炎葬送刃(プロミネンスグレイブ)】を再起動したがミハエルのいた空間を消し飛ばしたにすぎなかった。



「しかし、ミハエルに手傷を負わせるとは。」


「…驚くようなことでもあるまい、卑劣な手段を用いたとはいえノア様からお力を奪うような者なのだ、多少は覚えのある者でないと逆に困る。」


「まぁ、変に複雑な権能や得意なチカラを持っていると言うよりはノア様にある程度近しい特別な存在であったと言う方がしっくりくるといえばそうだな。」



2人はホムラへの所感を交換する。


ミハエルが、手傷はおろか衣服に汚れをつけられることですら見たことがないと言うのは彼らの組織では有名な話であった。


「さてどうするか。」


「ロア、プランBでいく。」


「…承知した。」


「…。」


2人の会話を聞いていたホムラであったが、特に要領を得ない会話であらかじめの通りに進めると言った話を聞いて意味がないと思ったのか、彼らが動き出す前に手を後方に伸ばした。


ボォ!


空間が燃えるようにして縦の楕円に燃え広がるとその中から女性が現れた。


「そいつは…!」


ロアは知っていた。

ロアの【GGR】は対象を完全に支配下に置く都合上その対象の情報をある程度読み取ることができる。


そして彼女は…



2人はホムラを真正面から両サイドから挟むように曲線を描いて突進し、お互いの得意な得物で攻撃を仕掛けようとしていたところであったが、


「ハァッ!」


ロアが切り開く方向を切り替えて女性、

いや、見た目はその背丈に見合わぬ少女性を持ったツインサイドテールのワイルドカットな15〜18歳程度の銀髪、そして前髪を目深にしたその娘にきりかかる。


髪から覗いた隈のような目元のアイラインを引いた特徴的な眼差しをロアに向ける娘。


が、それは一瞬だった。



「【GGG】」



その眼差しはミハエルに向いていた。


光の加護をうけほとんどの攻撃を受け付けないミハエルを捉えたその眼光がミハエルを抑える。


「…ッ!」


間に合わなかったが!だと言った形でせめてその娘の首を飛ばしてやろうとしたロアの攻撃をホムラが巨大な火で模った腕で遮る。


「…おいおい、彼女が君のなんに当たるのか分からなかったわけじゃないだろう?ロア」


それを尻目に、指で輪っかを作った彼女はそれを覗き込むようにしてミハエルを見る。


「ポルシェワリング」

光の輪が出現しまるで彼女が人差し指と親指で作った輪がミハエルを直接拘束した輪と連動するように動く。


「素晴らしいよ、アルバドリー」


ホムラは嬉しそうにその名を呼ぶ。


そう、彼女は神の眼光


アルバロアの姉、アルバドリーだった。




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