天道化
「ククク…初めてですよォ…?」
「この私達をここまでコケにしたお馬鹿さん…は!」
カッと見開いた両まなこは、ヴォルフたちを捉えていた。
が。
「ん…?」
おかしい。先ほどまでいたはずの狼のような雰囲気の少年が見当たらない。
風を感じた。
「ハッ!?」
首筋に黒曜の刃が煌めく。
「キェエエエエエエエ!!!!!!」
ヴォルフは光沢を放つ鉱石に体を包んだ、影のようにも、煌めく精霊に見えるような姿で高速の強襲をかけ、バラムロンゾの首を狩にきていた。
しかし、直前にそれに気づいたバラムロンゾの高周波音爆攻撃によって、吹き飛ばされる。
ザァー、と空中で体勢を猫のように捻って、
四肢を肉食獣のような踏ん張りで地を鉤つけて減速し、止まる。
パッ、と顔を上げたヴォルフの目は怪しい赤と紫と青が混ざった光沢のある瞳に変わり、
その瞳孔はまさにオオカミのように爛々とバラムロンゾを捉えている。
「…ガキが…ッ!」
「この俺を舐めるなよォ〜!!!!!!」
バッ、と斜め上に突き出した手に反応して周囲を包囲したマントがはためいて、揺らぎの中、無数の凶器がヴォルフたちの周りで煌めく。
「距離は遠いけどアレは…」
マリヤが何やら読み取ったようで、
アレらの凶器はどれも単なる危険なアイテムというわけではなさそうだ。
「かと言って、無視して本体を襲うのは厳しい…」
「どうする、小僧。」
「オッサン。師匠ヅラすんなよ、気色悪りィ!」
「それに…」
ニヤッと不敵な笑みを浮かべるヴォルフ。
「俺はまだ何の技も使ってねーぜ…!」
ヴォルフが再び駆け出す。
バラムロンゾは腕を組み、
足をそろえた偉そうなポーズで落下してくる。
いや、それは踏みつけ…ですらない。
まるで噴石が麓の家々を潰すように、
爆撃が降り注ぐように。
無数の残像となったバラムロンゾによる「踏みつけ」がヴォルフを襲う。
だが。
「遅ぇ!!!」
かけだしたヴォルフは止まらない。
瞬く間に漆黒の雷閃が地上に刻まれる。
ジグザグと高速で回避と接近を繰り返しながらバラムロンゾへと迫って行く。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお??!!??!?!?!?!?!?!?!」
「だから…」
空中のバラムロンゾの胴体を真一文字に切り飛ばす。
「遅ぇっての。」
バラムロンゾの下半身が煙と消える。
「!?」
吹き飛んだバラムロンゾはその勢いのままホムラの元へと向かっていた。
「ホムラさん…アレ。あの例のターゲットなんじゃないんですか…?」
「そう思うかい?」
「…私の深淵外道術を使う間もなく攻撃されましたよ。アレほどの速さ超越者でもないのであれば当たりかと。」
「じゃあコレを。」
「はいナ…☆」
邪悪な笑みを浮かべて天幕の中へとバラムロンゾが入る。
天幕内でバラムロンゾを見失ったヴォルフは
一瞬で現れた白塗りの顔めがけて飛びかかる。
「バァ!!!」
妖しく煌めくブローチ。
生理的恐怖がヴォルフを捉える。
「いかん!」
「え?オジさん…」
それは一瞬だった。
ヴォルフが光に包まれる前に、
突き飛ばし、岩鉄斎がプリズムの檻にとらえられた。
「オッサン!!!!!」
「ちぃ…!…まぁ良い。」
「この男も相当な異常な気配を持っていた。」
「オイ。」
「オッサンを返せよ」
「【天狼黒牙】!!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
全身から黒い鉱石を噴出させながら大地を叩き割りながら進むヴォルフ。
「(コレはまずい…ですね。)」
バラムロンゾは冷静に死を感じてきた。
深淵道化、その称号を得たのは人間として生きていた頃であった。
対となり、上位評価である称号、
「天道化」を得るため邁進した人生。
それを止めたのは人造天司。
「手を貸そう、バラム。」
隙を見て来たのか、ホムラが右手でヴォルフへすぐに炎を投射できる状態で現れる。
ザン。
ホムラの左手首が斬りつけられる。
天道化、私でその称号を生まれながらにして持って来た存在。
「ミハエル…ッ!!」
「切り落としてやろうと思ったのだがな」
バラムロンゾなど眼中にないと言った様相で現れたのは
ノアの右腕。
ミハエルだった。




