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アルヴァンドウズの落とし子

暗がりで何かを触るように空を掴む。

その手が翻ると“場”が震える。

その指が意味のあるであろう動きをするたびに空間が歪む。

その目が開かれた時…。



「調子はどう?」


「…コレをしている時は話しかけるな、と言った。」


「まぁ、そう言わずに。」


黒いレース付きのフードを被ったものが答える。

問いかけたのは【ホムラ】だった。


「そもそも貴様らと違って(・・・)、俺はコレが生活であり人生であり、世界そのものの一部をなす…」


「ーーーーそして、大いなる理。不滅たる概念であるのだ。」


そう言って、干渉されてもうその作品に完成度は求めれないと言った様子で投げやりに空を払う。


すると、




目の前に山脈(・・)と言っていいほどの巨大な黒い岩石の巨兵が現れた。



「しかしねぇ、君、今の所、僕に名前しか教えていないよ?」


「それで何か不足か?たった今言ったはずだぞ、」


「「俺はそれが全て」」



「では、ソレ(・・)が、できなくなった(・・・・・・・)としても君はおなじことを言えるのかな?」


「…!」


言葉を合わせられた上で、気になることを言われて初めて、言葉を交わす以外一瞥もしなかった男が目を向ける。


「なにが言いたい…」


「邪魔者は排除すべき、そう言っているんだ。アルヴァンドウズ」


「…」


男、いやアルヴァンドウズは、

止まらないホムラの言論に不快感を感じながらも話そのものには興味があると言った様子で、表情で続きを促す。

しかしその眼差しを受けながらホムラは


「続き…聞きたいかい?」


ニヤニヤとあえて、続きを語らないホムラにアルヴァンドウズはついに根を上げたように軽く俯いてから、


「悪かった…続けてくれ。」


その言葉に満足そうに頷きながら、ホムラは語り出した。


「そもそもの話からしようか。」


〜・〜・〜・〜・〜


僕たちは、【破天裁魔】によって発生した

真理核『 抽象的金剛絶体センチメンタルアダマンタイト 』

によって全ての時空に存在を刻まれた存在だ。


()が、僕らを生み出したとは言ってもそれは彼自身本能的にやったまでで、黒幕は主神どもさ。


「彼?」


君は直接関わっていなかったね…


ウルティノア・アルヴァルト。

ノアと呼ばれる彼は主神どもが神威を集めて全能型の異能力者の赤子を事実上、現人神とした者さ。


その彼が持っていた異能こそが、

【破天裁魔】

全ての不可能を可能にする…

僕の知りうる限り最強の異能だ。


神どもですら、

己一柱だけでなく、他の数多の神々がその神威そのものを注ぎ込んだその異能には手出しができない。


故に、彼は彼自身の作り出した、模倣存在。

ロアとミハエル。

自分以下の神威の宿った能力者を作り出したり、

自らを生み出した者たちの痕跡を追い、

神々の力を持つ者たちを探していたんだ。


ある種の自己実現。


それが神々が生み出した本能であることに気付かずに、彼は僕らを生み出した。


いや、より正確には、僕たちを世界に刻む遺物

『抽象的金剛絶体』をね。


【破天裁魔】に対し主神級の力を持つ者を呼び出せるその存在を求めたことで、

不可能であった、神々に劣らない特異存在が生まれる土壌としてそれが生み出されたんだよ。


土壌とは言っても、物質的な話じゃなく、

因果でセンチアダマンタイトと繋がる時空連続体全てを指しているけどね。


〜・〜・〜・〜・〜・〜


「待て。」


そこでアルヴァンドウズが話を遮った。


「聞き捨てならんな。」

「それではまるで我は…単に生産的に怪物を生み出しているにすぎないと、」


「世界に対して存在を刻むその遺物によって、本能で動くだけの道化だとでもいうのか…!!」


アルヴァンドウズはその場を軋ませ、


腕を振るう。



不出来な“作品”であった、黒い岩石の巨兵は。


その腕の一振りにより、


その膨大な巨体を捻じ曲がった空間、その歪みの向こうへと消していった。


だが、ホムラはそれに身動ぎひとつせず。



「だから、“ そう(・・)”言っているんだよアルヴァンドウズ。」



逆に睨み返した。


「…!?」


アルヴァンドウズもその圧力に少し驚く。


「…続けていいかな?」


ホムラのその言葉に無言の肯定をもってアルヴァンドウズは答えた。


〜・〜・〜・〜・〜・〜


まぁ、何はともあれ。


僕らは生まれたわけだ、

ノア。

彼の権能でね。


でも考えて欲しいんだけど。

僕らを生み出せるほどの力を持つ者たちが僕らを殺さないはずがない。


そうは思わないかい?


だから僕はどの異能生命体よりも早く行動した。




ノアを殺すことにしたんだ。




しかしね、ことはそう単純じゃなかったよ。


僕はそれこそ半ば本能的に自分の異能をフル回転させたさ。


【焼形写影】。

照らし出したそのものの因果を細部に至るまで映し取って読み取ることができる力。


それで彼の格闘家としての側面を読み取り、


【鏡炎刹羅】。

【焼写武身】。


純然たる格闘術に己の権能の力を上乗せし高める生まれ持つホムラの異能武術と、


乗り越えた相手の力をどんなモノであろうと写しとって自分のものにし、相手のソレを『焼きつけて留まる』異能武術と権能の重ね技、

いわば奥義で、なんとか彼を打ち破ったんだ。


本来の彼を打ち破るのは不可能だから、

異能を使わないように仕向けての騙し討ちにはなったけどね。


ともかく、その結果、彼の【破天裁魔】は僕のものになった。


時空を超えて、あの事象は歴史的転換点(パラダイムシフト)として機能したよ。


〜・〜・〜・〜・〜


「その後は君に初めて会った時の状況をおもいだしてくれればいいかな。」


「…ふん、なるほどな。」

「つまりは、神ども、そして、ウルティノア・アルヴァルトの眷属どもを鏖にすれば良いということか」


「そういうこと。僕たちを殺せる奴らは殺さないとね。」


「フフフ…腕がなるな。駒となる者たちを作り出すのは任せておけ」


「よろしく頼むよ。」


そう言って腕を振るって異形の存在を作り始めたアルヴァンドウズを背にホムラはまたどこかへと消えた。




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