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緋色の封印

「かなり近接戦闘、それも異能の使い方が武装でしかないものだったな」


次試合の準備が進む中、ノアはニヤつきながら呟く。


「ノア様は武術観戦がお好きですよね」


ロアが答えを求められていると思ってないと知りながら返す。


「武術の類は取り寄せられるものだけでも全て資料として手に入れて体得したからな。」


ノアは山奥の武術家に雇った武術家を送り込み、組み手を映像化して見たり、武術大会の映像資料、歴史から消えた流派の文献なども趣味で解析している。

失われた武術の奥義などをその武術体系を知った日に再現して流派の再興に一役買っていたり、宣伝にもその国の武術機関に働きかけて行ったりしてもいた。


「私は好きなのだ、趣向を凝らした実直な奴らがな」


〜・〜・〜・〜・〜・〜


第三試合。


対戦カードは、【翠月華】vs【肉体美偶像】


お互い自身の肉体を異能で操ることができ、強力な自我を反映させた特異な能力タイプでこれまでの相手をほぼ無傷で倒してきている。


「貴方が肉体美に自信のある異能者ね?話は聞いているわ。ノア様に肉体美の素晴らしさを理解させるために参加したらしいじゃない?」


「私の肉体美はもはや栄養なのよ。」


「ふぅん…?」


審判の開始の合図が響く。


「試合開始ぃいいいい!」


「|【 更 に 筋 力 を 】《バルティモアディビズム》!!!!」

合図とともに、アネサンが動く。

即座に喬仙も両手を広げ異能の発動をする。


「いきなり速攻なんてご挨拶じゃない!!」



爆発的速度で闘技場全体に花形の魔法陣が広がり、武舞台から魔法陣と同サイズの実体のない花、異能の発動と同時に拡散された光の粒子が土着したところから草や芽が生えてくる。



「ハァ!」


花が展開し始めるころには、突進してくるアネが喬仙の目の前まで迫って来ていた。


ショルダータックルで肩まで届く程度の髪を靡かせながら突っ込んでくるアネ。


「喬閃粉!!」


両手を伸ばしクロスさせて前に伸ばす。その上で指先を伸び切らせ、一本一本からそれぞれ七色のどれかの光の粒子をランダムに飛ばす。


喬仙としては回避不能の反撃をしたつもりだった。


「甘いねぇ…?」


背後から(・・・・)アネの声を聞きハッとする喬仙だが反応は間に合わない。


ドガァッ!!


アネが振り絞った右ストレートは、間に合わず咄嗟の両腕の庇いによって逸らした喬仙の右鎖骨を捉え闘技場の内壁まで殴り飛ばす。


前試合の岩鉄斎と違い、シンプルなパワー任せの右ストレートではあるが、であるが故に同じ殴打ならとてつもない破壊力があることが一目でわかる。


「ガッ…ァッ!」


激突の衝撃もさることながら、純粋に一撃による鎖骨付近へのダメージは凄まじく、痛みで一瞬動きが止まる喬仙。

即座に、足元へ指先の光の粒子を飛ばし何かしらの次善策を張ったようだったが、既に(・・)真横に何やら筋肉をアピールするポーズをとるアネがいる。


「何ッ?!?!」


驚き、即座にそちらに腕を向けようとするが、アネに首を真正面から掴まれ、内壁に喬仙の肩は叩きつけられる。


「いっくぞぉおおお!」


叩きつけられた衝撃で砕けた内壁を、割り進むように駆けるアネ。

円形の闘技場外周は全て割り砕かれた。


1周目は対応に遅れまともにダメージを喰らった喬仙だが、2週目には、1周目で手先を砕けた内壁に向けて飛ばした粒子によって生えさせた草木でクッションとした。


草木のクッションにより動きが止まるアネ。


しかし無理やり止められただけで全く込める力は収まらず、むしろ首元にかかる負荷は上がっていく。


「ば…、バ…ク…ッ!!」


「爆種実!!」


よもや首が折られるかと言う流れを、クッションにした草木から実らせた、種を散乱弾とすると爆弾によって切り返す喬仙。


爆風に対して拘束を解き、距離を取るアネ。爆風に紛れて喬仙は追撃できない。


「おのれ…!!」


とはいえ、ようやく反撃のチャンスを得た喬仙。


外壁にすでに飛ばしていた光の粒子は砕けた内壁を土壌として草木を茂らせている。


「痛みを返すわ…!!!」



合わせた両手から握り拳ほどのサイズに光の玉を収束させる喬仙。

しかし、すでに武舞台の中央までアネは後退していた。


「陽華球!!」


アネに向け光球を射出する。


「陽光の裁き!」


アネの目の前に高速で飛んで行った光球は、目前で炸裂し眩い閃光を生み出すが、アナは身動きひとつ取らず胸を張る何かしらのポーズをとっている。


会場が光で包まれ観客にも見えない時間が生まれる。


「ん…?」


光が落ち着くが、目を閉じていたアネは何も起きなかったことに疑問を覚えポーズをとったまま目を開く。


「あなたを狙ったんじゃないわ!!」


そう。

光は相手にダメージを与えるものではなかった。


キィイイイイイイイン!


会場の内壁全てから高音が響き渡る。

アネが目だけで周りを見渡すと、全方向の内壁の草木は花をつけておりそれらが高音を出していることがわかった。


「ふん?物騒ね…」


「回避した方がいいわよ?」





「   避けられるならね(・・・・・)!!!  」





周囲を囲う花が光を花粉を蓄える弁の先端からエネルギーを伴う指向性をみせ、闘技場の中心に光を集める。


光を浴びたアネに向かって喬仙が叫ぶ。



「【鏡収殺】!!」




叫びと共に、頭を垂らした花全てが一斉にしてアネに首を向ける。


先端の収束エネルギーが細い光線としてアネに投射された!



投射されたエネルギーにより武舞台の中心は赤熱し、アネの姿は光で見えなくなる。


「終わりね…」


喬仙は赤熱した武舞台の外から、中心のアネの頭上に塔のように太い茎の蔓を生やし、

伸ばした先端に武舞台と同サイズほどの巨大な実を付けさせた。


「油燃実」


葉の外縁部を光の粒子によって高エネルギーを伴った刃のブーメランにした喬仙が、

名前の通り、油を溜め込んだ果実の宿る蔓の茎を切断し実を落とす。


バゴォオオオオオオン!!!



熱による引火で爆発。


いや大爆発(・・・)させ、炎上による熱風を浴びながら、勝利を確信した喬仙は背にした壁面に茂る草木から桃のような実をつけさせて捥ぐ。


果実にかぶりついた喬仙はそのまま自身に植物をまとわせ、包み込ませた。



「ふぅ…」



一瞬のうちに、姿が見えなくなった喬仙は生じた巨大な桃の実から中を突き破り出てきた。


鎖骨に受けたダメージを見事に完治させた喬仙。


高熱により白煙が登る武舞台中心に向かいながら、審判に顔を向けて歩き出す喬仙。

「さぁ、審判さん、勝利宣言を。」


そう言いながら武舞台につくなり観客席、特にノアに対しアピールをする喬仙だが、

何やら反応が悪い。


「審判?一体、何を…」


そう言いながらも違和感(・・・)に気付き、ハッとして武舞台の中心を見ると、




肩の筋肉を見せる形でアネが立っていた。



それも無傷(・・)でだ。




驚愕に染まる喬仙。


「バカな…!戦車だって装甲ごと焼失させるほどの技なのに…!!!」


想定外の事象で戸惑う喬仙に歩み寄るアネ。


喬仙の肩に手を置き、


「降参しな。あんたじゃ私に勝てないよ。」


実際に喬仙にはここまで無傷な相手に対して突破するだけの攻め手は他に思いつかなかった。


敗北感を感じ、下を向く喬仙。


耳元に口を近づけてアネが囁く。


「私は私の肉体美を広めたいだけなんだ。痛めつけたいわけじゃない。」



「…ちなみに、さっきのオイルは売ってたりすんのかい?」


ガーン!!!


ショックをうける喬仙。

どうやらアネには先ほどのやり取りが攻撃と捉えられていなかったようだ。


「私の…負けですわ…」



観客には余力がありそうに見えた喬仙だが、この顛末により降参となった。



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