表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/55

アルドヴァル・カウント

「あれは…!!」


「知ってる、の…?!」


紅い機体が先程までパルラ・メウの秘技【積算乱雲】による爆心地まで接近し、しかし、すぐに回頭して旋回した。

三角錐の機体形状の側面についた推進加速機(アクセルブースター)から、噴出し続ける突風が地表にいる北方部隊とパルラ・メウ=ポポ・ウーの体を撫で付ける。

彼女らが髪を押さえたり、突風に顔を背けたりしている中、機体から拡声器独特の、始めの入出力で起こる甲高いノイズが響く。


「「「我々が追尾中であった『ゲルズ』どもを殲滅したのは貴様らか!」」」


「「「誰の命令であるか明らかにせよ!部隊長は所属と官姓名を名乗れ!」」」


一瞬の後、アンドレガントスが前へ出る。


「北方戦線第八師団所属、ガルヴァンシア・アンドレガントス大尉であります。」


「上官、タチション・ブルペンティ少佐の招集命令を受け集合中、少佐殉職のため、緊急的に市井の民と私の部隊を主体に避難を実行していた次第であります!」


「「「状況は把握した!別件だが、我々はここで大きな魔力反応を検知している。何か知っているか!!」」」


「…戦略兵器級魔術を使用できる者が市井の者にいましたため、私が依頼して行使しました。」


「「「その是非は、”今は“良い。問題はアルドヴァルカウントが非常に高い空間をこの場に作ったことだ!」」」


「アルドヴァル・カウント?」


「「「そうだ、最新の研究で高い密度で魔力炸裂がおこると空間が歪み飽和空間魔力量が著しく下がることがわかっている」」」


「「「それの影響で此処ではしばらく繊細な魔法は使用できん、さらに言えば、我々の機体も大小様々な魔法が使われている。アルドヴァル・カウントの発生地点には近づけん」」」


「「「追っていたゲルズ共には喋る(・・)個体がおり捕獲するために我々は駆り出されたのだが、これでは失敗に終わる可能性が高い」」」


「「「そのため事情を聞いた次第だ」」」


つまり、先ほどの大技で粉々になっていなければ、その個体がどこかにいるということだ。


「我々に何をお求めで…?」


「「「奴らは後続の群れが確認されている、奴らを一度完璧に殲滅した市井の者…その者が殲滅に必要だ。」」」


アンドレガントスは顔を顰めながら、しかし、自分が市井の者が対処したと言った手前取り返しがつかないこともわかっており回答した。


「数刻…いただきたい。」


〜・〜・〜・〜・〜・〜


数十分、時間をもらいその市井の者を探し、説明する。と、了承をもらいアンドレガントスは少女パルラ・メウのところへ向かった。


「嬢ちゃん、すまねぇ…さっきの話だけどよ。嬢ちゃんが嫌でもやってもらうしかなくなっちまったみてぇだ」


申し訳なさそうに伝えるアンドレガントス。

しかし、当のパルラ・メウ本人は、


「いや、別に気にしなくて良いよ…!」


そう言いながら、敵が来るであろう方向に何が見えているのか、軽く笑ったあと、


「コレは私の使命だと思うから」


決意の眼差しで、アンドレガントスを見上げた。


「…」


その言葉を受け、アンドレガントスも決意を決めた。


「コレを受け取ってくれ」


「これは?」


「刻印型の距離無制限発信ビーコンだ。本来、特殊作戦のキーマンが持って合図を出したりするのに使うもんだが、嬢ちゃんが危ねぇって思った時はコレ押してくれ。」


「え…でも、」


「いいんだ、別にこの後のヤツらとの戦闘だけじゃねえ、困った時に俺らが必要なら押してくれれば良いんだ。」


状況を考えれば、今はどう考えてもこの部隊はアーパウに戻るのが正しい。

だがあえて、アンドレガントスは危なくなったらこの後の戦闘にも呼んで良い(・・・・・)

そう伝えているのが、パルラ・メウにもわかった。


「わかった…。で、私はこの後どうすれば良いの?」


「あそこの別部隊のとこにいる隊長さんのとこへ行け。」


「あの赤い機体に乗ってる人のところ?」


「そうだ。…あ、嬢ちゃん、奴さん、お前を高位魔術師か何かだと思っちまってるかもしれねぇから、すまねぇがどんなことができるかくらいは教えてやってくれ。」


「こ、高位魔術師…。」


この世界において、高位魔術師とは仙人や世界的研究者、大国の統治者と並ぶ存在として崇められる存在だ。


とくに、高位魔術師は普段は市井に紛れて生活しているが世界が危機に瀕した時に立ち上がる存在として、伝説の勇者と同格の存在として御伽話にもなっているほどだ。


「き、気が重いなぁ…」


それこそ、彼女に力を与えた「ウー・タオレン」はおそらくそれにあたるであろうが、自分はほんの数時間前までただの獣人少女であったわけでその力も特殊な教え方と、それを応用させるセンスの感覚でどうにかしているだけだ、と彼女は考えていた。


「場合によっちゃ、どんなことになるやら…」



アンドレガントス達と離れ、赤い機体に乗る男へと、

その機体の登場スペースへと飛んでいった。



「やぁ、君が…市井の魔術師くんだね?」


「は、はい…」


「私はシャズ・ブナール大佐だ」

「この機甲飛躍戦闘部隊、アドレン・ナタクリン隊の指揮をしている。」


「あ、アドレ…ナタリー…」


「ハハハ…まぁ、ロボット隊でいいさ。君は心強い味方ではあるが軍人ではないからね。」


そう言うと、シャズ大佐は後部座席のハッチを自動で開放する。


「ここに乗りたまえ。」


「わ、私も乗るんですか?」


「当たり前だ。君が飛べることは承知しているが、無闇に君の力を消費する必要はないからね。」


「喜びたまえ、私は隊長だが戦闘では一匹狼でね、

後部座席に誰かを乗せたことはないのだよ。」


よくわからない祝意をうけながら、

パルラ・メウは後部座席に乗った。


「これを。」


「ヘルメット?」


「イヤホンとマイクも付いている移動中はこの機械はうるさくなるのでね。聞き取りづらかったら言ってくれ」


そう言うと、ハッチを閉め、


一気に上空へと、

その小さな帆船ほどはあるその機体と共に

パルラ・メウとシャズ大佐は駆け上がった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ