RCS-S2×4【紅蓮風華】(ローゼス・クライシスモデルスタイル-2by4 version スカーレットフーファ)
見えた光に集まるように巨大怪鳥たちが近づいてくる。
「なんだ?!今まで進むだけだったのに!!」
全力で火力攻撃を行なっている分、アンドレガントス達、北方部隊はその全員が無防備だ。
もし、前線を突破してきた巨大怪鳥が突っ込んできたらひとたまりもない。
そして、一度崩れたら立て直さないこともわかっていた。
「クソ!!あの子の光に集まってくるぜ!?隊長!」
「うるせぇ!!俺は今、弾ァ作ってんだ!静かにしろ!!」
ポパルの悲鳴まじりの大声に怒鳴りつけるアンドレガントス。
「しかし、隊長…そんな数発分の魔榴弾で戦況は覆りやしやせんぜ…?」
「わかってらぁ…!この弾を俺たちがぶっ放すだけじゃ、よくて二・三匹…悪けりゃ一匹も堕とせずに終わるだけだ…」
「じゃあ、さっきみたいに数で押すしか…!」
「それじゃ、ジリ貧…博打に出なきゃなぁ!」
「博打…!?」
「そうさ、大博打だ、あの嬢ちゃんは俺が数発の魔榴弾託したらあのクソ鳥ども全部ぶっ飛ばしてくれんだとよ!」
「はぁぁあああああ!!!!!!」
パルラ・メウ=ポポ・ウーが翔ける!
まるで流星が降り注ぐのではなく、撃ち上がるように。
彼女は、人間大はある、光の泡のようなエネルギーの塊を自分の周りに無数に出現させながら、
その間にも自身と共に巨大怪鳥たちへ、高度をあげて接近していく。
「右!!」
彼女の右手が振られた部隊右翼、上空に泡が流れていく。
泡といっても飛び交っている砲弾を追い越すレベルの速さで、巨大怪鳥の群れへ飛んでいく。
「左!!」
同様にして、無数に生成され続ける泡のおかげで先ほどの右翼へ使った数と同じだけの泡の奔流を左翼に飛ばす。
しかし、
「「ギョエエエエエエ!!!」」
前方、パルラ・メウ=ポポ・ウーに1番近い怪鳥が、不快な叫び声を上げたあと、その巨大かつ、鋭利な嘴をまるで、巨大な削岩機のように高速振動させながら突っ込んできた!
「あぁ!!!」
叫んだのはポパルであった。
「(あんな小さな女の子が!激突して…!光って…)」
「(……光って?!)」
巨大怪鳥は即座にパルラ・メウ=ポポ・ウーが展開した泡に触れた。
その瞬間、
人間大の大きさだった泡がさらに巨大になり、
小さなお屋敷程度はある怪鳥のその巨体を完全に包み込んだのだ。
勢いが完全に殺された怪鳥は、
そして、
「はっ!」
一喝であった。
瞬く間に光る泡が、さらに力強く発光し、炸裂したのだ!
「グ、ギャッ!!!」
その炸裂した衝撃がパルラメウに到達する前に、
怪鳥は、
いや、
先ほど両翼に飛ばした泡によって同じように光の泡に包まれた、
怪鳥達、
が一斉に飛行していた速度と同じ速度で、そして同じ体勢で地面に落下した!!
バァン!ドカァン!
アンドレガントス達の目の前で見えない滝壺に落とされるように垂直に落とされる巨大怪鳥達。
その光景に兵士たちは攻撃の手が止まるほどに唖然とした。
「!!…アンドレガントスさん!」
「おお!!嬢ちゃん…」
「まだまだ数が多いし!叩き落としただけでソイツら《・・・・》、"生きて"るよ!!」
「アイツら、あの速度で地面に叩きつけられて…し、死んでないのか…!?」
「だから、大砲の弾を!はやく!」
「あぁ!嬢ちゃん!!…だが、もう少しだけ待ってくれ!」
「わかった!」
アンドレガントスの言葉を信じ、そういってパルラ・メウは目の前のまだ何匹もみえる後続の巨大怪鳥たちに顔を向き直る。
「(これは自分が飛ぶ時と同じ…)」
「(重さとか、形とか、全部無視して!)」
「すべて!泡の中の空気だと思うよう…に!!」
目を閉じて、イメージを膨らませたパルラ・メウはその想像通り、両腕を大きく開き、自分を包む泡と別に大きな泡を、胸元から目の前に一気に作り出した。
「泡の膜が広がるように!」
「でも…薄くではなく…強く膨らむ風船ように!!」
作り出された泡は、先ほどのサイズよりもさらに、はるかに大きく膨れ上がっていく。
ジュポン!
スポン!
ニュポン!
次々と、泡へと突っ込んでくる怪鳥達は泡のサイズが大きくなればなるほどその数を増やす。
泡の中に入った怪鳥は、時間の流れが緩慢になったかのように、同じ姿勢のまま、泡の中をゆったりと、ほとんど止まったように漂う。
「アンドレガントスさん!!」
「もうできる!!…よぉし!!!」
アンドレガントスの手元の、鈍色の楕円体が輪郭を顕にし出した。
「できたぞ!!嬢ちゃん!!!!」
「こっちに投げて!!」
「なに??投げるだと!?爆発しちまうぞ!」
「信じて!」
ええいままよ!とアンドレガントスは砲弾数発をそのまま魔力の力場で支えて大きな岩を投げ飛ばすかの如くパルラ・メウの方へ勢いよく投げ飛ばした。
「よっ!」
パルラ・メウは、両腕を開いた巨大な大泡を大きくする技を継続したまま、
一瞬だけ右手にスナップを効かせつつ、その場で横にターンした。
元の姿勢に戻り、泡をさらに巨大化させるパルラ・メウだが、右手の指示で動いたいくつかの泡が投げ飛ばされた砲弾全てを包み込み、
右にカーブを描く形で、
北方部隊の中央上空で、アンドレガントス達からは空を覆うようなサイズ、だがまだまだ大きくなり続ける、パルラ・メウの大泡へと一体になるように溶け込んだ。
「う…!」
「(これ以上の大きさは、今の私じゃ、操れない!)」
当たり前の話だが、今日、先ほど力を得たばかりのパルラ・メウには力を操る経験が圧倒的に足りていない。
全てを包み込みたかったところだが、諦めて、【次】へと動く。
「八極【水天】の力よ!!」
「流転示す循環の力で!操るは…雲!」
「はぁああああ!!!!!」
「【積算乱雲】!!!」
パルラ・メウが操っていた泡を地面にぶつけ、
すでに叩き伏せられノックアウトしていた怪鳥を含めて浮き上げる。
取り込んだ砲弾には無数の小さな泡が集まりそれを中心として上空に、内部を乱回転させながら吹き飛ばした。
カッ!
中心の砲弾が爆裂し、その瞬間泡が指数関数的に、急激に増えていく。
眩い光に包まれて爆発した巨大な泡が、
積乱雲と化した。
しかし普通の雲ではない。
内部では無数の泡が摩擦を起こし静電気を起こす。
内部で暴れる怪鳥には、雷と泡が集中し粉微塵と化す。
そうして内包する怪鳥全てを粉砕して、黒々とした
積乱雲は上空へと上がっていった。
「嬢ちゃん!」
「まってね。」
目を閉じていたパルラ・メウが、
パッと目を開けると、
積乱雲が輝かしい光の粒となって上空を照らし雨のように降り注いだ。
「おお…」
「それで、なに?」
「まだ、遠方に怪鳥が見える、とウチの観測手が捉えた。」
「うん、私も感じてたよ」
マジかよ…と、この距離では肉眼で見えないことを踏まえてアンドレガントスが固まる。
しかし、伝えたいことはそれだけではないので向き直り、
「それで…余力は、あるかい…?」
「…」
そう。
もう、すでに全力で無理をした隊に余力はなく、その上、目的であったアーパウへの送り出しを完了させた部隊には肉体的にだけでなく、気力も残っていなかった。
よって、続けるかはパルラ・メウ次第であったのだ。
「ここは一旦…」
退こう。とそう言おうとしたパルラ・メウは左後方から接近してくる何かの、いや何かの集団を感じた。
「!!…あっちから何か来る!」
「なに?…あっちは…ん!?あれは…!」
紅の機体が風を切ってこちらへと飛来していた。




