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“八極“ 【水天】




『あれ?』




パルラ・メウは気づくと水色の世界に浮かんでいた。


「(空?)」


そう思った。


しかし、すぐにそれは違うと感じた(・・・)

なぜなら、



「!!(私、呼吸をしてない!!)」



視覚が戻ってきて、意識が明瞭になるにつれて、


もう一つはっきりすることがあったのだ。



「ガボッ!バボボ、ルブォ!」



自身が出していると思った、


『声』


は、心の内に思い描いた言葉であり、


今まさに意識的に発した、叫びも、言葉も、息も。


全て泡となって消えるのだ。



「落ち着け、我が半身。」



「!?」



まるで、始めにパルラ・メウがそう思ったように。


『空に浮かぶように』


周りの水の抵抗を受けず、口や鼻から泡を漏らさず、


しかし、


動きは軽やかに。踊るように。


ポポ・ウー…いや、



「我が名は、ウー・タオレン。超越者である。」


『超越者?』


「言の葉を紡げるようになったではないか。」


『あ!』


「まだまだ、未熟ではあるが、今はそれでよい」


「【水天】が司るは流転、されど定まった一つの理そのものであり、すべての個は全を成すのだから。」



何を言っているのかわからなかったパルラ・メウだが、とりあえず、一つ(・・)わかったことがあった。



『その声、貴方は…貴方“が”ポポ・ウーなの?』



「その通り。娘よ、ヌシは良き【波動】の才能がある。」



「【波動】?」



「そうだ。私は流体を司る。ソレを操るのは波動よ…もっとも、演算などは当然お前にはまだできるわけがないが。」


「ケーサンするの?」


「カタコトだぞ…?わかっておらんのだろう。まぁよい。」


そうこうしているうちに自分が問題なく話せていることに気づくパルラ・メウ。


「お前のような幼い者や愚か者には習うより慣れろということだな。」


「何言っているかわかんないよ。」


「そのうちわかる。今呼吸できるようになったようにな。」


さて、と。

ウー・タオレンは後ろを振り返り、滑るように進み始めた。


「ちょっと…!ちょっと待ってよ!」


「これも同じだ。置いて行きはしない…進みながら聞け。」


バタつかせながらも足を動かし浮遊感漂うこの空間をひたすら進む2人。


「ど…どこに…!ハァ…い、くの?」


「あそこに光が見えるだろう?そこまでだ。」


たどり着いた2人の眼前には先ほどまでの光景が広がっていた。


ただ一つ違うのは、


「私…?」


「違うな。私と混然一体…つまり合体したのだ。」


混然一体という言葉に、またしても頭の上に疑問符を出したパルラ・メウにわかりやすく伝えるウー・タオレン。


「あのヒラヒラの衣装は?」


「我の趣味ではない。お前の心象衣装と、能力が表現されたようだな。」


パルラ・メウ=ポポ・ウー


となった、少女が煌びやかな何かに包まれている。


周りの時間は止まってしまったかのように、しかし確実に進んでいると言ったら様態であった。


「あの体を扱うのはパルラ嬢オヌシだぞ。」


「え!?」


「当然であろう。元々、ヌシの身体だ。」


でも、と言おうとして、隣にいたウー・タオレンが元来た暗い方に進んでいることにパルラ・メウが気づく。


「ここからはお前がことを成すのだ。」


まって!と言葉を出そうとするが意識が元の世界、

パルラ・メウ=ポポ・ウーの肉体へと引き寄せられ意識が薄れていく。


「あの忌々しい畜生の姿ではあるが応援している。」




「私を、この姿に戻してくれ。」



意識が、途切れた。



〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


パッと目を開けると。


そこはすでに火事場と化していた。


「撃て!撃ち続けろ!止められなくても倒せなくともいい!なんとか遅らせろ!兵士ではないものたちをアーパウへ!」



「「「「うおおおおおおお」」」」


元々、防衛任務を全うできなかった予備隊で構成されていたこの師団は火がついたかのように全力で最大火力攻撃続けていた。


目の前で光に包まれた少女に周りの兵士が驚きつつも動くなか、


先ほどの中央部隊ととは少し遅れていることに気がついたパルラ・メウ。


その恩人たちの顔を思い浮かべながら、あることを思いついた。



「アンドレガントスさん…!」



その作戦を実行するのに、

アンドレガントスが必要だとわかったパルラ・メウは、


「(あの空間では言葉は伝えるだけじゃない、聞くこともできたんだ…波動で!)」



目を瞑り音波に、ひいてはその音を作る存在そのものの波動を“聴く”。


「(ちっ!あと1時間もかからないところまで来たってのに!!)」


「捉えた!」



目を開いたパルラ・メウは、ウー・タオレンのやっていたように。



周囲の煌めくエネルギーを自分に纏わせた。



「よし!」



そしてエネルギーの形が円、球となり、そしてソレが泡が沸き立つようにパルラ・メウを持ち上げた!



「アンドレガントスさーーん!!!」


「なっ!?」



アンドレガントスが驚くのもそのはず、遅れて前線に取り残されていたために、アンドレガントスが砲撃する方向からパルラ・メウは砲撃を掻い潜りながらアンドレガントスのところへ“飛んで”きたのだ。


「嬢ちゃん、なんでここへ?!」


「いやそもそもなんで飛んでるんだ?!」


「そんなことよりも!最初に1匹倒してたよね?アレってどんな砲弾使ったの!?」


「あ、あぁ…そいつは、徹甲魔榴弾ってやつだ。そいつを眉間にぶち込んでやった。」


「それあといくつある!?」


「俺が造ってるからもう少ししたらあと1発くらいは作れるが…」


「急いで作ってね!そしたら…」



「勝てるよ!この戦い!」


「なにぃ?!」



怪鳥撃退戦が始まった。


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