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不死狩りの猟犬《エクセデス・ハウンド》

変な小動物

ポポ・ウーはかつて人…いや、超人であった。


このパルラ・メウの世界はかつて3つある大陸の中でも最大の大陸ユーロシアン大陸北方を支配していた巨大な連邦国家機構による帝国、

“ロンディル帝国”

がこの世界をほぼ制圧したことで、

大陸末端や、思想が大きく異なる部族を集めた特区を除いたほとんどすべての国を統合し、世界はあと一歩で統一政府によって淘汰される…といったところまで行ったのだが。


最後まで統合に対抗した大花趙という大国に生まれた、ポポ・ウー…いや、

“ウー・タオレン”

は、ウー家の跡取りで、神練丹という不老不死の秘薬を生み出すという目的で代々収斂された血族で、代を経るごとに毒に対する耐性、そしてソレを遺伝することにより本来体内で致死量となる物質を取り込むことを可能としてきた。結果、ありとあらゆるものを摂取することが可能になるようになっただけでなく生物として人を外れた存在、亜人族となった。


しかし、タオレンはソレをも凌ぐ存在であった。

生まれながらに金属結合に干渉する能力を持って生まれてきたタオレンは、古代の伝説に乗っ取り水銀を摂取して自身の肉体に組み込み人類を超える存在、

“超人”

へと進化を遂げたのであった。


しかし当然、ソレは彼が能力者であったことと、ウー家の特異体質が噛み合って起きた奇跡と言っていい。


人類の進化を目指していたウー家の後継として大花趙をまとめ上げたタオレンだったが、兵力差、練兵度、ともにU連邦に届いておらず、ロンディル帝国単体の総戦力にも届いていなかった。


そのため、彼は捕らえられ彼の国の実験体となったのだ。


〜・〜・〜・〜・〜


『貴様ら!一体何のつもりだ!我に何をしても通用せんことはわかったはずだ!』


ロンディル帝国はまず、その肉体に対しあらゆる耐久実験を施し、ある目的のため彼を魔法研究局に送り込んだ。


『いえねぇ?貴方の肉体が素晴らしいことはよくわかっていましてよ?』


魔法局の研究者は言った。


『私たちは“精霊”を作りたいのよ。』


ロンディル帝国、いやユー連邦には「精霊に選ばれしものが世界を統治する」という伝説があった。


しかし、帝国が巨大になり、調査機関、研究機関がどれほど規模を大きくしても、ソレらの足がかりすらつかめなかったのである。


そう、精霊なんてものは存在しなかったのだ。


経てして彼らはこう思った。


無ければ創れば良い。




『貴方は私達の偉大なる精霊になるのよ。』




研究の結果、変異魔法、昇華魔法、精神魔法の3種混合魔法を巨大儀式によって対象に用いることでこの世界に存在しないモノを呼び出す方法が採用されたのだ。


【次元招来儀式魔法】と名付けられたソレは、はっきり言ってこの世の理を逸脱していた。


『貴様ら、覚えておけ!我らウー家…いや、大花趙すべての人間が貴様らを滅ぼす!ロンディル帝国の末代まで八つ裂きにしてくれる!!!』


『あら、かわいいわね。』


『何ッ!!』


『いえ、貴方でなく貴方の器よ、この子』


示された先には何やら小動物がいた。


いや、この世界の生物ではない何かだ。


『貴様、何を言っている…?』


『分析魔法で名称開示したら名前はポポっていうらしいわ。』


『だから何を…』


『貴方が逆らえないようタオレンという名をタブーキーとして設定…』


『つまり、貴方の名は、これから

“”ポポ・ウー“”

ちゃんね』


『ふざけるな、このウー・ポポレン!…!?』


このウー・タオレンを舐めるな!そう言おうとした自身が意味のわからない名を名乗ったことに困惑するタオレン


『始まったようね』


『なんだポポ!?…!?』


またも意図と違う、謎の語尾をつけて話してしまう自分に驚くタオレン


『儀式が最終段階に入ったのよ。貴方の存在情報がこの異世界小動物に吸い取られて統合されるの。』


『やめろぉーーーー!!』


〜・〜・〜・〜・〜・〜


そこからは激動の日々であった。


次元は干渉する魔法の弊害か、


空間が割れるようにして“奴等”が現れ、


ソレに乗じてすべての国がユー連邦に対し蜂起を宣言、


事実上、世界戦争へと突入したのだ。


しかし、パルラ・メウはそんな一連のことを知る由もない。


「貴様は我が選ばし御子!」


「魔法精霊子女となり世界を救い、世界を治める指名があるポポ!」


「な、なに…?」


捲し立てるポポ・ウーに対し、パルラ・メウはついていけない。


そんな間にも戦闘は激化していた。


「おい!徹甲魔榴弾はまだか!」


「すみません!この隊でソレが作れるのは僕だけなんです…」


「謝ってる暇があったら集中しろ!お前がそれを作れるかがここを切り抜けられるかの分岐点だぞ。」


アンドレガントスがポパルを叱咤激励する。


魔力を込めれば誰でも作れるとはいえ、先ほどの混撃弾の威力は十分であった。



「「「「ギョエエエエエエ!!!」」」」



しかし、かの怪物には体勢を崩す効果はあったものの、大きな傷にはなっていなかったのである。


よって、弾頭部に分解魔法をかけて、内部で炸裂させる“徹甲魔榴弾”が必要であった。


「できました!3発しかありませんが!」


「十分だ、続けて打てるように次も作っておけ!」


ゴルドンが叫ぶ。

「榴弾ヨォ"シ!!」


アンドレガントスが狙いを定めて怪物に3発連続で撃ち込んだ。


ドン!


ドン!


ドン!


嘴、胴、右翼に直撃したそれは血飛沫をあげて、

怪物を撃墜することに成功した。


が。


「おい、嘘だろ…!?」


接近してくる巨大なその怪物の背で隠れていて見えなかった雲の先、


そこには無数の同型の怪物の姿が浮かんでいたのだ。



「…ここまでか。」


アンドレガントスが呟く。


しかし、聴覚の鋭敏なパルラ・メウはそれを聞き逃さなかった。


「…貴方と合体したらあの怪物を追い払えるんだよね…!」



「そうだポポ!」


「私、やるよ…!」


「その意気だポポ!ではいくポポ!」


光るポポ・ウーに対し意識が吸い込まれていくパルラ・メウ。


「「昇華合体!!」」


無意識のうちにポポ・ウーと精神は同化していた。


「「パルラ・メウ=ポポ・ウー」」


光り輝く魔法少女が爆誕した。


〜・〜・〜・〜・〜

『検知致しましたわ…将軍』

魔性の声で報告をする女。


「あぁ、気づいておるわ。これは…不死者の…それも超人タイプか」


ニヤリと蓄えた口髭を釣り上げる男。


「“猟犬”を放て」


『承知しました。』


不死狩りの猟犬(エクセデス・ハウンド)、放て』


蠢く影が、ひび割れた空間の裂け目へと消えていった。

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