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パルラ・メウ=ポポ・ウー


「アンドレガントスさん」


「なんだ。」



「ニー!ニーの!これニーのなの!」


「ルーが先に取ったから、ルーの!」


「こら!ニー!ルー!やめなさい!」


薄汚れた廃墟を幾人かの人間がうろつく。


一団としての塊では、中心部で母親が歩きながらおもちゃの取り合いをしている子供を嗜めている。


パルラ・メウは身寄りのない少女だった。


戦争中の大国に割って入った異世界存在「センチネンクルス」、これにより世界は急激に荒廃した。


彼等はその中を生きる難民の集団だった。


難民団のリーダー、アンドレガントス・ガルデライは補欠軍人部隊の隊長で、予備部隊が招集中に基地が攻撃を受け、命令が降る前に基地が壊滅したため、軍規に沿って独立遊軍として活躍していた。


元の配属された北方守備大隊第8基地防衛団として、北方守備大隊の旗下に合流するつもりであった。


しかし、都市部からの難民が混乱の最中行き場を失っているのを、同じく軍規と、そして何よりも人間的モラルのため捨て置けず、センチネンクルスの被害を受けてないとされている都市・「アーパウ」に向かっていた。


「アーパウ、ってどんなとこ?」


「知らん、ドルタス、行ったことあるか?」


「ないっスね。でも確か、アルラウの兄貴が行ったことあるらしくて、デケー機械都市だとか?」


「…ほう?では、ローゼンの新型が機甲部隊と“ヤツら”を追い払ったとか聞くが、アーパウが無事なのはそこにも新型が配備されてるからか?」


「いや、なんとも…アルラウ兄ー!ドルカと交代してこっち来て欲しいっスー!」


おう。じゃあ交代してくれ!と、大声で返って来たやりとりに、アンドレガントスから見て左舷側に展開していた兵士、ドルカが反応する。


「!?…ドルタス!オメーが変われば良いだろ!」


「俺も聞きたいんだよ、お前はそういうの興味ないだろ?」


チッ!と舌打ちしながらアルラウと配置交代するドルカ。彼とドルタスは兄弟である。


「バミドリアの新生騎兵隊も、ローゼンの新型とうまいことやったって聞きますよ」


「そうか、じゃあアーパウも同じような形なのかもしれんな…よし。」


点呼用の通信機で無拍、短信号、長信号を使い分けることで全隊へ命令を下したあと、


「みんな!聞いてくれ!」


ゾロゾロと歩く難民たちの先頭に立ち大型の装甲に包まれた巨大な兵器の砲塔へ登る、アンドレガントス。


「先ほど合流した部下と情報共有したところ、今向かっている湾岸都市“アーパウ”は安全であるようだとわかった。」


「よって、少し辛いかもしれんがアーパウへの進行を早めることにした。皆も辛いだろうがもう少しの辛抱だ頑張ってついてきてくれ!」


『おおおおお!!!!』

と、展開した難民集団であったが、




「(何…?この音……?)」


パルラ・メウは生来の発達した聴覚で、右舷後方、壊滅した大都市“バルザボイ”の方角から生存本能を強烈に刺激する、鈍く、しかし、高音であることがわかる異常な音を耳にしていた。


「…!!アンドレガントスさん!!」


「ウゥン…?」


急に振り向き、遠くを見据えるパルラ=メウにアンドレガントスは怪訝な顔をし、すでに後方を向いていため顔を顰めるような形で遠方を見通した。


アンドレガントスが砲撃手出身でなければ見逃されていただろう。


「!!」


アンドレガントスも気がついたソレは、

大都市バルザボイを襲った黒い人型のセンチネンクルスの群れではなく、鋭利な刃物を翼竜にしたような巨大な怪物であった。


「なんだアイツは…!?」


ゴンゴン!!

と、アンドレガントスは砲塔をノックして操作席の内部から蓋を開けさせ、叫び入れた。


「ゴルドン!!!右舷後方!!“”奴等“”の親玉だ!」

「混撃弾、装填!!」


蓋を開けた、ポパルという若い兵士があたふたしている中、すでにゴルドンという剃髪の熟練兵は装填を完了させていた。


「装填!ヨォ"シ!!!」


野太い声で合図を送ったゴルドンの隣、運転手のバンドという男がアンドレガントスに聞く。


「隊長ォ!!旋回いるかい!!??」


どけ、小僧!とポパルをどかして砲手席に滑り込んだアンドレガントスは同時に、


「要らねぇ…よ!!!」


すでに目測で合わせていたのか、アンドレガントスは座るや否や撃ち放った。



ドガァアアアアアアン!!!



赤熱した楕円の砲弾が、怪物の額に直撃する。


カッ!


ゴォオオオオン!!




「「「「グギョェエエ!!!!」」」」




風を切るような鋭角の翼と違い、バケモノの流線形で完成されたフォルムが窺える頭部が、

炸裂した砲撃の威力により270度ほど反り上がる形で無理やり向きを変えられる。

首が生物的に不自然な方向に曲がったことにより体も必然的に追従し、後方の空に錐揉み回転しながら吹き飛んでいく。


「よし!!」


「やったぁ!!」


バンドが喜びの声を、ポパルは歓声を上げる


しかし、アンドレガントスは全く警戒を解かなかった。


「全隊!投射魔砲兵は火力支援準備!」


「両翼のディングドルも俺の砲撃に合わせてやつにぶち込め!!」


ディングドルとは彼らが駆る機動兵器のことだ。


展開した魔撃歩兵の中でも、大火力の魔法をインプットさせた魔晶を取り扱える、魔砲兵と呼ばれる者たちや、

両翼のディングドルの乗員たち事態に気づき行動を開始する。


「なんだありゃ!?」


「隊長がぶっ飛ばしてくれたみたいだが…アレ生きてんのか?!」


「とにかく俺たちもぶち込むぞ!」


左舷のディングドルが、

ガガガガガ!と、砲塔が回転し、的に向かう

『装填ヨーシ!!』


魔砲兵が、魔晶を光らせた手持ち砲撃用の筒を構えながら叫ぶ。

『魔砲解放!発射態勢!発射まで…2…1…ッてぇー!!』


右舷のディングドルが砲撃を開始する。

『混撃弾発射!!』


ズドン!

ズドン!ドガン!

ドンドンドン!



止まらない砲撃は上空へと吹き飛んだ後、落下してきた化け物に降り注いだ。



「すごい…!」


パルラ・メウはその迫力の光景に圧倒されながらソレを眺めていると、背後に何かいる!と感じて振り向いた。




「やぁ!我が名はポポ=ウー!」



「君は今起きている襲撃を生き延びるためにポポと合体する必要があるポポ!!」




変な小動物がいた。

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