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【狂羅暗獄】

神に対し、元々、挑戦的ではあったノアだが、

まるで実験動物のように、

世界まるごと自分を観察するために使い潰し、

そのくせ、ホムラに力を奪われておきながら、未だに自分を頂点と勘違いした神々に…



いや、その神々に抗うことすらできない、


今の自分の弱さに、初めて無力感と…


怒りを覚えた。




「【破天裁魔】」


「おいおい…」


神・ハルミナエスは苦笑を浮かべながら、力を発するノアを見下ろす。


既に、議長たる席へと戻っていた。


「わかっている…貴様らの誰ひと柱として、我そのものに興味はないのだろう。」


「だがな!ここに宣言する。」


「我が力を取り戻し、【ホムラ】を片付けた暁には!」


「その【神の力】とやら、御しきり、このような形式だけの議会など、我が解散させる!!!…そして!」





「唯一神として、貴様ら丸ごと、全ての世界、時代、存在を須く治めてやるわ!」





覚えておけ!と言わんばかりの見栄を切り、アンクに向き直ったノアは。




「(我を殺せ。)」




そういった。


〜・〜・〜・〜・〜・〜




【狂羅暗獄】




そこは、影と暗黒に広がる一切の情を許さぬ悪の世界。


そこに、ノアのかの怨敵、【ホムラ】はいた。



巨大な黒球がかろうじて人型を保ったような、


『そこが地球であったなら』、


成層圏まで達するほどの体躯。

そして、内包する空間歪めるほどの『魔』。




「コレは、“足りない”な」




パリィン…!!!





【ホムラ】が指先に灯らせた小さな火。


弱々しいその灯りは、寒々としたその世界において、空気を揺らがせるだけの熱は持っていた。


しかし、その『揺らぎ』。



それだけがかの「黒球の怪物」を縦に“割った”。



「『ココ』は、想定外の異形に逢える…そう聞いて来たんだけどなぁ…」



【ホムラ】は歩き出す。


右手に鏡面のように断じた形状の崖があり。

鏡面とは形状のみで、その暗黒をも招き入れるような黒々とした壁面が続く。

【ホムラ】は崖下を歩いていた。


左手には何もない。


正確には何も見えない。


闇が帷を下ろしているのみだ。


〜・〜•〜•〜・〜・〜・〜


『【焔】、“キョウラアンゴク”という極地を知っているか?』


ある世界を滅ぼし、センチネンクルスの管理下に置いた時、


その世界で見出し、新たにセンチネンクルスの一員となった者『影淵』という名の個体に、

実体のない一族の秘伝として伝えられた【闇の世界】の存在を聞いた。


曰く、そこは「神の影」、

「魔の産道」、

「原初の狂“気”」、

などとさまざまな呼称があり、とりわけ、

忌避されるような存在、

存在そのものが強大なだけでなく純然たる悪意によってその強さが支えられているような、

正道を生きる存在からすれば、

産まれてくることさえ疑問に思うような、

そんな歪な存在を輩出する。


言わば、無から有ではなく、無から負を産む場所があるというのだ。


「我々の使命は知っているね?」


「あぁ…、そのためにも、我々の主たる存在、核であるお前こそが行く必要がある。」


「…なるほど。」


『影淵』の一族は、彼らもまた、その世界において歪な存在であり、生きている存在の実体を宿として、住まい、命が失われる時に成り代わるという特殊な存在であった。


彼ら一族はは、その世界における高等二足歩行生物「ヒト」という人型のゴカイ系生物の社会体制に介在しており、彼ら「ヒト」の誕生・進化と共に彼ら一族も高等生物としての進化を遂げた経緯があった。


故に、その「ヒト」からは忌み嫌われ、彼らの中でも異能を持つ「アマヒト」からは駆逐対象として扱われていたのだ。


そして、その争いの中で異能を持たない実体から生を受けたはずの彼が得た一族初の異能。


影から影へ、実体から虚影へ。


『この世界』以外であっても渡ることができる稀有なチカラ。


それが彼、『影淵』の異能『暗影歩法』だった。


一族唯一にして切り札たる彼は、元々一族で伝えられていた暗殺術・隠遁術に加えて、

実体を虚影に変えられる能力を使って暗器を無数に抱え込み、『影淵』の独自の術へ昇華していた。


その戦闘能力、暗殺能力を持って、「アマヒト」との争いに明け暮れる日々を送っていた彼だが、


遂に死地に追い込まれる。


光を吸い取る鏡面を生み出す異能を持つ「アマヒト」が現れ、罠にかけられた『影淵』は異能「鏡面」に囲まれた空間に閉じ込められてしまったのだ。


飛び先が閉じた鏡面空間のため、その空間から逃げることが叶わず、絶望していた彼は、

一か八か、能力で唯一試していなかった。抽象的な意味での『影』へのダイブを試みる。


『別の世界へ!』


彼がその時、選んだのが一族に伝わる【闇の世界】


だったのは幸だったのか、不幸だったのか。



彼はそこを迷い歩くうちに、別の世界の影から実体としてでることができ、その時、自身の赤子の頃の記憶を思い出す。


彼のいた世界と表裏一体の世界、実体を得る前の一族が幸せに暮らす里があり、彼らこそが「ヒト」として住まう世界。


異能を持って産まれた闇の生物たる自身のルーツをしり。


神に対抗する組織であるセンチネンクルス達の分体はあらゆる闇と繋がっていた【闇の世界】にも出現し、彼の生まれ育った世界「アラヒト」が支配する世界。

そこに降り立った【ホムラ】の分体【焔】と『影淵』は出会ったのであった。


〜・〜・〜・〜・〜・〜


「(彼が、そういうのならば、本当に何か神々に対する武器や力があるのかもしれないな)」


「そう思って来たのだけど…」


左手に広がる闇を振り返る。


確かに、生物学的に…(ソレを生物と呼んでいいのかはさておき、)強大な存在はちらほら確認できた。


「しかし、意志がない。ソレではダメなんだ。」


神々はこの力、【破天裁魔】をどうにかしてモノにしようと画策している。


彼は『独自のルート』でソレを知っていた。



「(ボクの能力と掛け合わせることで、【破天裁魔】としての本領ではなく、ボクの炎羅の本領部分でなら完全に思い通りに破天裁魔をコントロールできるようになった…)」


「だが、神どもをセンチネンクルスの戦力で滅ぼすにはセンチネンクルスとしての強度に関わる、神々に揺らがない圧倒的な個。」


「特に、神に対する反抗の意志がなければ…」


最も神を憎んでいる存在は自分である。と自負している【ホムラ】は故に、センチネンクルスの初期メンバーがいかにしてセンチネンクルス足り得るかの理由をよく知っていた。


それだけに、同等のセンチネンクルスを新たに選ぶには高いハードルとなっていたのだ。


「分体の要領で、味方を増やせればいいんだけどね…」


1人自問自答するような形になって自嘲めいた笑みをが漏れる【ホムラ】。


しかし。



「分体…」




ハッ!と閃いた【ホムラ】口元は神々に対する悪意で歪んだ笑みを作っていた。



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