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イノ・ヴォルケー・スタッカート

「つまりはだ、その怪物とやらはセンチネンクルスの分体で、しかし、世界を滅ぼすほどの力を持っているが故に開闢者級でなければ打ち倒せない」


「だから、“我”に奴らを倒させよう…そう言った話だな?」


ノアはそれ以上、その天司“エイ・エル”の来歴を聞く気はないようで、話を簡潔にまとめた。


「驕りすぎだ!貴様らがどんな存在であろうと、所詮この世界の生み出した恩恵に過ぎない!」


「神を名乗るような修羅神仏、その類の化身には何人も会ってきたのだ!我らに一兵卒として…」


ノアは右手を行使し、エイ・エルを黙らせる。


「…何か勘違いしているようだが、奴らは我の力【破天裁魔】によって、極めて特異な群体である…というだけに過ぎない。」


「?!」


エイ・エルは驚きを隠さない。


何か言いた気だが、これまでの例に漏れず、喧しいだけだとノアは取り合わず続ける。


「我は【ホムラ】と呼ばれるセンチネンクルスの個体を探している。」


「貴様らの目的であろうセンチネンクルスどもの撲滅も、其の者さえ見つけ出せば、我が打ち倒し、力を取り戻したのち、即座に実行してやろう。ここまでは異論あるまい?」


しかし、それでは何か不満があるのか抗議する姿勢のエイ・エル、アンクもそれを取り上げる。


「ノア、聞いてあげなよ」


「ぷはぁ…!!」


くだらない話を聞かされたと判断して口を本当に閉じさせたノアも、実際、お灸を据えるだけのつもりだったようですぐに解除した。


「あ、あなたが言っている者の名を聞いたことがあるわ!」


「それは、私たちの神の使徒で序列第2位の組織_…」


それを言い切る前にエイ・エルの後方の空間にヒビが入る。


「…!?」


アンクが咄嗟に右手から炎を迸らせて、裏拳の体で拳を横長に振う。


飛び出した熱量は、ひび割れた空間から伸びた手によって握りつぶされた。


「“アンドレアル”?餌よ。」


バァーン、とそのしなやかな手が見えなくなり、爆発が起きたかと思うと、砕けた空間に赤い装束に身を包んだ女性が立っていた。


「貴女は…!」


エイ・エルが言うよりも早く、投げ捨てた彼女の手から虹色の結晶のようなものに対し、後方の砕けた空間の奥より、竜とも、狼ともつかないような巨大な化け物の口が飛び出し一瞬で飲み込んだ。


「ha〜i☆貴女がノア…【ウルティノア・アルヴァルト】ね?」


なにを持って見抜いたかはわからないが、一目で見抜かれ特に隠す必要もないか、と、


「いかにも。我に何用だ?」


ノアは答える。


「ワタシはイノ。イノ・ヴォルケーよ。」


「【|全神対抗特異存在稟議会アンチ・サーシェス】_…」


「通称、“全神対"、序列2位。」


「【爆羅炎陣會】…第二師団長、及び、全會副頭取をやらせてもらっているわ。」


堂々とした名乗りに、ノアも悪印象を持たなかったようで、返す刀で名乗りをあげる。


「“ウルティノア・アルヴァルト”」


「この世界では、とある国の象徴…「神炎」の化身として振る回せてもらっている。」


「ウルティノアさん。」


「ノアで良い。」


互いに身の上を話したところで、


「貴方の炎は…いえ、ノア様は好きな音楽ってあります?」


「口上はもう済んだ、これ以上我の素性を聞く必要があるか?」


「“要件”を聞こう…」


「あら、そっけないのね。」


クス…と笑うイノ。



「要件は簡単よ、貴方、私たちの“組織”にお入りなさい…?」


「断る」


はい?とアンクが疑問符を頭に浮かべる。



「入ってしまえばいいんじゃないの?」


「阿呆め、これは体よく傘下に降らせようとしているだけだ。」


「あら、残念…でも、貴方なら総頭取…私たちの組織の長も、夢じゃないわよ?」


「だって、“あの”センチネンクルスたちの生みの親みたいなものなのでしょう?貴方。」


「先ほどのやりとりを聞いていたようだな?」


「もちろん。そこのお馬鹿さんにペラペラ、ペラペラ。身の上話までされちゃって…フフ…。」


「お楽しみのようなら…なぜ出てきたのだ?」


長話を展開したエイ・エルは当然のこと、それを真面目に聞いた此方まで少し馬鹿にされた口調だったのを咎めるように皮肉めいた疑問を返すノア。


「そうね、楽しんではいたかもしれないわ…」


「まぁでも?」


「私たちの組織の話までしようとしてたみたいだから!ベラベラくだらないことを言われる前に、こちらから出向いてきたと言うわけ。」


「何を…!別に私は嘘偽りを言うつもりは、」

「お黙り…!貴女方、天司団はやることなすこと独善的なのよ…!」


「(喧嘩ならよそでやってくれないかな?)」


「(御前にしてはしっかりと意見を持っているではないか。まぁ、その通り、迷惑ではあるのだが。)」


因子のつながりによって精神が繋がっているのでテレパシーとはまた違った意味で、以心伝心のやりとりをするノアとアンクの2人。


「…喧嘩をしにここまできたわけではあるまい。続きを聞こう。」


「…あぁ、ごめん遊ばせ…?」


「もちろん、貴方に断られることも想定済みよ。」


「今回は、勧誘“ついで”なの。」


「貴方には、【全神対】(アンチ・サーシェス)に出席してもらうわ。こっちは強制よ。」



キィィイイイン!!!



強烈なオーラ膨張音がイノから解き放たれる!!



唐突も唐突、戦闘のセの字も見せないイノのそのだらけた姿勢、態度が突如として場を制圧する圧倒的な強者のものへと変貌する。


反応できたのはノアだけだった。


「…。」


驚く反応すら見せずに右手を光らせて空間に【破天裁魔】を展開しようとしたノアだったが、




「…“ダンテ”。」




どんな能力であっても、対応するつもりでいたのか、

ノアが何か異能の発動の気配を出した時点で、イノは魔獣『アンドレアル』に指示を出していた。


そして同時に、一同の八方を囲むように炎が八つ巻き起こる。



「グガァアアアアアアオオオオオオゥルルルルル!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


魔獣の咆哮は八方の炎と意味があるようで、


『ダンテ』とはおそらくこの咆哮を指していることがわかる。


「あらぁ?そんなに強制されるのが嫌…?まぁ…」



「逃げられないけどね!!」




「アンプリケーション・スタッカート!!ミ☆」




空間が転移していく。

それを【破天裁魔】で止めることができない。


「…チィ!!」

「(此奴、開闢者級どころではないなッ!!!面白い!!!)」




「(ノアの能力で止められないの?!)」


アンクが驚く。


「(万全な我が権能なら止められられるどころか…この程度、発動させぬことも、発動した後から強制的に行き先を変えることすら可能だが…)」


「(今は身を任せるしか…ないんだね…?)」


ノアとアンク、スターレイン、ルナルイン、そしてエイ・エルを加えた5人は、空間転移術「アンプリケーション・スタッカート」により


部屋から。


いや、世界から忽然と姿を消した。


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