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ドルルガン・リオ・ナックル

「夜明けの光が水平線の空を、白く明らめている!!」


アビスはたまらず声を上げた。


日の出は、神の告げたかの怪物の限界、終末の終わりを意味していたからだ。


しかし、


太陽が上がっていくなか、今か今かとそれだけを見て進んでいたアビスに違和感を覚えさせることが起きた。


後ろから聞こえる怪物のうなり声がどんどん大きくなっていくのだ。


日が上がりきる頃には、


それは咆哮と言ってもいいものになっていた。


そして、神の見定めは外れたとアビスに理解させるものとなっていた。


〜・〜・〜・〜・〜・〜



快炎王と呼ばれる王がいた。


この世界における開闢者だ。


そのものは大地に水が満たされる前。


海という概念ができる前に神との争いで負け、それでもなお、抑え切れないがため、生み出された海の化身によって封印された存在であった。


海の化身が滅びてもその有力な眷属達が力を持ち続ける限りその力を十全に振るうことができず。


封印として、その身を包む地の殻と、海の膜により、この世界から、今もなお、押さえつけられていたのだ。


しかし今、


最後の海の眷属、神格代行者ラピス・アビス両名が、その力を弱めたことにより、





「目覚めたぜ?」




暴虐無人の存在を叩き起こすこととなった。


「グゴァ?!」


怪物が腹部に痛みを感じたその瞬間、


ドガァアアアアアア!!!!


火と熱と溶岩が怪物の腹を貫き、飛び出してくる。


「なんだ!?!?」


アビスは突然の出来事に何が何だかわからなかった。




「崩雷閃」



飛び出してきたのは人型だが全身が橙色に赤熱した人型の存在であり、出てくるなり一瞥し閃光と共に、怪物の腹を指を振るって一文字に両断した。



「グォォオオオオオオオオオ!!!!!!」


「うるさいぞ、畜生が。」



サイズ差をもろともしない、その力にある種の感動を覚えていたアビスだが、快炎王はこちらを見ずに空間に響く声で言った。



「これが終われば、次は貴様達…海の眷属どもだ。」


ゾッとし、


「(逃げる?!どこに?!)」


などとアビスが考えていると、突如、ラピスが光の球体に包まれながら目を覚ます。


「ラピス!?」


それを見て、快炎王は即座に振り向き、距離を感じさせないほどのスピードでこちらに殴りかかってきた!


だが、


「ヴァルラァああダァァァア!!!!」


怪物は両断されたまま、上体で突進し真上付近の快炎王に掴み掛かる。


「ッ!…チッ!!」


仕留めたと思っていたのか、反応こそ間に合っていたが掴み掛かる腕を翻って避けた後、振り抜いた裏拳に掠って真横に飛ばされる快炎王。


目前まで迫ってきていたからか、


封印の際に課された鎖が外れ、肩の火のマークの刺青が見える。


「あ、あれはまさか…快炎王!?」


「そう、あれは快炎王・ドルルガンよ。」


立て続けの出来事に後回しになっていた思考が、ラピスが言葉を発したことにより、追いつく。


「ラピス…!それよりその姿は!?無事なのか?!」


「いえ、正確には私はラピス本人ではないわ。お父さん。」


「な!?!?まさか…エリス!…なのか!?」


「私は、母ラピスの記憶と人格を借りて肉体に顕現した天司、エイ・エルよ。」


「同期している以上、胎内のあなたの娘でもあるし、母ラピスでもあると言えるのはそのためね。」


「加護とは、まさか娘が天司の力をもらうことだったとは…!」


「説明はここまで。彼らの戦いを見守りましょう。」


その間にも、怪物は快炎王ドルルガンを捉えようと血眼になって猛攻を仕掛けていた。


「下らん。豚が足掻くのもいい加減にしろ。」


どうやらアビス達が逃げてしまうことの方が問題であるらしく、そちらに影響が及ばさないように避けていた快炎王であったが、


アビス達が逃げ出す素振りが見えないことで向き直り怪物に正面から相対する。



「ト"ラ"エ"タ"ァァァォァァア"!!!」



動きが止まったのを見て、両腕を開くだけでなく、その星を飲み込むような巨大な口を広げて怪物が叫んだ。


「|【B・O・W(忘却曲線上の消失点)】《ブラックホール・オブビリオン・ホワイトスペース》!!!!」



喉の奥から黒い黒球が飛び出したと思ったら、

付近の全てが黒球に吸い寄せられ粉砕、吸収されていく。


しかし、快炎王は。


「下らぬ畜生風情が!一丁前に大技かァア!!」





「失せろ!!」





「【ドルルガン・リオ・ナックル】!!!!」






独特な野性的な構えをとった後、


右拳で正拳突きを放つ。


それはその瞬間より正面と背面に世界を二分した。





拳の向こう側は空間そのものが熱で融解しとけた鉄のような高熱の「ナニカ」が決壊した川の流れのように、爆流で怪物、いや、怪物のいる“側”の世界を押し流し、飲み込んだ。


「だぶぉぅおおおおおおおおあアアアアアアアアアアアア!!!!!!」


「わが復讐の炎に焚べる薪となるがいい!!フハハ!!フハハハハハハハハ!!!!!」



「【アクアリウム・コンパウンド】」



「『!?』」


「気づかなかったでしょ?低温の機微はわからないものね?」



「『貴様!!これはなんだ!!!』」


「貴方みたいな火や熱を固有とする能力者に対する絶対奥義、といえるものかな。」


「熱を受ける氷塊の空間と次元を隔てる境界壁、そして構築結界の三重構造で断熱、冷却して、力を使わせない。」


「『かかってしまった』以上、もう逃げられないよ」


ハッ!とした表情で快炎王ドルルガンはアビスを見る。その後、何やら覚えがあるような悔しそうな顔を浮かべてラピスを睨む。


「“これ”はまた、神の仕業だな!?このオレを番犬のように使ってェエ!!!!」


その言葉にアビスが遅れて理解する。


「ここまで、神には見えていた…!?」


「当然ね。」


その問いにはラピスが答えた。


「この世界は、初の神々の反抗作戦成功世界として、拠点にできるはずよ。」


「アビス、貴方はこの世界をアドミラル・マクラーレンの末裔・後継者として統治する義務があるわ。」


こうして、第何世界かもわからない次元の向こうで初めて、神々がセンチネンクルスに勝利したのである。



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