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機構帝国

ありえない速度の行軍により、


本来なら2週間はかかる行程全て無視して、

機構帝国の首都、桜花鉄砲城下、

「桜の都」を神裂連合軍は包囲していた。


本来ならいかに、ロアにノアの加護の重ねがけであろうと実態として、戦闘は自前の体で行わなければならないわけであるから、戦闘による行軍停止は避けられないが、


当然、そこは理由があった。


「よく、こんなにすぐ連携できるね…」


感心して見上げる空には暗雲が立ち込めている。


そう、妖の国の術だ。


機構帝国は自動化が進んでおり、様々な方法で機械の力が取り入れられている。


偵察機(ドローン)」もその一つだ。


しかし、そういった観兵や機械は全て


獣人たちによって捕捉される。


自動化されていっているとはいえ、性能が追いついておらず、

獣人の感知が何倍ものアドバンテージで機能することにより、


行軍する神裂連合軍が接触するよりも先に獣人たちが捕捉、その対象に向かって妖の国が妖術で戦闘不能にするというのが、もっぱら行われていたのだ。


実は行軍していた神明皇国の民の純粋な軍力よりも機構帝国の総軍力の方が大きかったのだが、連合の組織として吸収していた、妖の国と獣人の国の軍をアンクを使いっ走りにしたノアが連れて来させてノアの加護で精神的な連携を容易にし、実現させた作戦で無力化していたのであった。


「この程度のことは、何も驚くことはあるまい。」


ノアは本当に当然といった形で未然もおかしさを感じていない様子でその作戦によって、現在進行形で首都外壁の防備が無力化されている光景を眺めていた。


『電令!首都外壁が瞬く間に無力化されていきます!!』


「何!?敵は!?警備は何をしている!!」


「そもそも、国境警備隊からの連絡もなしになぜこれほどまでの進軍を許した!?」


ハァハァ、吐息を漏らし自動駆動車(いわゆるガソリンで動く自動車ではなく様々な方法を用いて機構的に車輪を回転させる自動化された荷車に近い物)に乗って、

正面ゲートの主任警備隊長が中央司令部に駆け込んできた。


「貴様!電令もせず主任を任されている警備を放棄してここまで来るとは!!」



「お、お聞きください!!」


有無を言わさぬ物言いに司令部の面々も敢えてそれ以上何も言わなかった。


「まず、電令ですが戦略的な攻略によりほぼ情報として無意味なものしか伝達されていません!」


「なに!?」


「そして敵の攻略部隊は妖の国でございます。」


「その情報よくぞここに持ち帰った!」

「妖の国か!…我らのかつての主国であるが、やはり、我らを完全に征服しようと…」



「お待ちください!!」


「なんだ!」


妖の国相手にはどのように軍を立て直すべきか…と、思慮を始めていた中枢の司令部に対し、まだ、何かを伝えようとする警備隊長に苛つきながら返す司令部の幹部。



「それが…敵の主力は妖の国ではありません!」


「何?!」


「獣人の国の兵士たちが機械警備部隊が無力化された途端に一瞬にして内部に侵入しております。」


「バカな?!あそこの国はお互いに長い間敵対している関係だ…!」

「まさか、我らの国を落とすために同盟を組んだとでもいうのか!?…いや、あの軋轢だらけの二国が組むなど…!!」

「獣人が主力となると、ここに侵入されるのも時間の問題か!?では、機動力の高い例の新型を…」



「それだけではありません!!」



もはや、司令部は警備隊長が続ける言葉に怒りではなく恐れを感じ始めていた。

先ほど、怒声を上げた幹部も声を失ったかのように続きを聞いていた。


「侵入した獣人は展開よりも各方角の重鉄鋼門を開門するのに使われており…」


「中から金の装備に身を包んだ兵士たちが一人一人が恐るべきほどの戦闘力で、この桜花鉄砲城へと進軍して来ているのです!?!?」


もはや、自分でも伝えることが精一杯で、それがどれほど恐ろしいことかということを無視して警備隊長は叫んでいた。




「もはや、間に合わぬな。」



全てを聞いていた全軍総帥、機構軍総司令・黒岩岩鉄は立ち上がり目の前の天后直通伝来機にて機構帝国の現状の首長・紅桜天后へ繋げた。


「閣下。」


「…言わずとも良い。」



その言葉に一瞬の疑念が生まれたのち、

まさか!と目を見開く黒岩総帥。


「もう目の前に彼の軍の長がおるわ。」


ハハハ!!!と楽しそうに笑う紅桜天后。


黒岩からの伝来機を切って目の前に直ると



部隊を率いていた金騎士ロスコ、いや、


神明皇国の軍団長・ロアが抜剣していた剣を納めながら天后の前に出て来た。


「辱める気はない。」


「腕がたしかならば、この首。次に瞬く前に…愛すべき我が夫を思い浮かべている間にでも持って行け」


背後に広がる城下町が一斉に開かれた門を起点に金色に染め上がっていく光景でも天守閣から見ていたのか、

それとも、何かした素ぶりは見えないが何かしらの能力か何かで予知さしていたのかはわからないが、


既に覚悟はできていたのか天后は特に抗うことはしなかった。


しかし、ロアは告げる。


「いや、そういうことでもない。」


?と眉を顰め目を静かに開ける紅桜天后に対し、


「我々は一滴の血も流さずに(・・・・・・・・・)ここまで来た。」


と、当然といった面持ちで告げるロア。

降伏でいいな?と告げて後のことは副官の騎士に任せ、部屋を後にする。


「完全勝利に水どころか、血を差されては困る。」


強制的な“無血開城”であった。


〜・〜・〜・〜・〜・〜


「手際がいいな、さては事前に準備していたな?」


「まだカオスフィールド王国が終わっていません故お褒めをいただくには至りません。」


既に制圧を終え、また、数分後に旅立つ前に城壁の上に、ノアはロアを呼び出していた。


そんな話をしているとロアたちの3倍はあろうかという巨躯の兵士が上から降って来た。


目の前で着地したソレは一才の生体パーツもない完全な機械であった。


「ワタシハ、金騎士ロスコヲ、完全ニ対策シタ【神兵シリーズ0号機】個体名称ハ未定。」


「丁寧な挨拶痛み入るなぁ?ロア。」


クックックと、何がおかしいのか笑うノア。

神兵シリーズというもののおそらく名称から試作機かと思われる者がノアの笑いに反応する。


「ナゼ笑ウ。金騎士ガ死ネバ。オマエモココデワタシニ…」





ガシャァン!



殺される…と続けようとした【神兵0号機】は自分の胸元が大きく破損していることに気づき、攻撃を受けた!?と大きく後退する。


「今、ナニヲシタ。」


「…今、何をした…だと?」


機械であるはずの【神兵0号機】が機械的にもその威圧感を観測したのか、ビクッと動きを止める。



「なかなか、良い肉体だな。それほどの動きができるのはホムラの意思とは関係あるまい。」


「ええ、これは思わぬ誤算でしたよ。仮にホムラ以外のヤツらがワタシと相対しても、この肉体のままで相手どれる程度の能力があります。」


「マテ、マダ…」






「黙れ、ガラクタ…

これ以上、“”耳障り“”な音を出すな…!」


右目だけがこちらを見るように見返したロア。


すると、なぜか体が軋み動かないことに気づく0号。


「コレハ!!データニアッタ金騎士ガ一度ダケ使ッタト言ウ、金縛リ攻撃…!!!」




「違うな」




しかしコレには、ノアが返答する。

「“”この程度“”も分からんとは…色々鑑みて試作型…だな?オマエは。」


「しかし良かったよ、ロアは子供の時から掃除機やうるさい機械が嫌いなのだ。量産などされたら堪らん」


「機械に礼節を弁えるのは愚かしいが、一つだけ賛辞を送っておこう。」


ノアは逆に左目で見返す形で振り向く。


「損傷箇所検知不能…稼働時対二匹(・・)勝率100%…損傷検測再開…再計算…」


とある言葉にピクッと反応するロア。しかし、

ロアが見返すのをやめてノアの横まで進んでいく。





「お勤めご苦労。」



「失せろ、ゴミ」




ノアとロアが同時に告げ、それと同時に【神兵0号機】の()が落ちる。


「ガガ…!!首…ガ!」



「修正…勝率大幅下降…ガ…!故障検知!胸部破損…?胸部!?破損?!」


胸元が大きく破損していたことに今更通知が来たことに混乱する【神兵0号機】


「両脚部応答ナシ、左腕損壊率200%、右腕爆発…」


「勝率再計算…」




「勝率0」



既に粉のようになって崩れると言うより風化、消失に近い消え方にする【神兵0号】は首だけになりながら自身の勝率がゼロであると言い残し何が引火したのか、わからないが燃えて無くなった。


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