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三国無双

金騎士と呼ばれた騎士がいた。


その男の正式な騎士号は、


グランドミュール領・ミュール・ゼ・ブランプラチナム大公付き騎士団「ナイツオブクロックワークス」団長にして、金騎士の国…もとい、アラヴァンド王国の筆頭騎士、

グランゴルド・ロスコ・ミュールである。


当然のことながら、

彼がいるから金騎士の国と呼ばれているわけで、

最も強力な騎士というだけでなく、国そのものの価値すら高めているというところが彼の偉大なる存在としての格を示している。


その彼が、獣人の国と妖の国を身元不明の人物が突如襲ったという知らせを聞き、即座に動き出したのだからアラヴァンド王国の皆が思った。


世界を揺るがす事件に率先して動き出す…彼はやはり英雄なのだと。


だが、実際のところはロスコの動き出した理由はそんなことではなかった。


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


「あのお方は!?」


金の仮面をつけた男が遠方から騎馬の軍団がアラヴァンド王国の国境沿いに進軍していることに気づき、その先導をしている人物を見て驚愕していた。


しかし、使者として長年アラヴァンド王国に仕えてきたその男はすぐに思い直し他のものを引き連れて金騎士ロスコの前に参上した。


「アラヴァンド王国の金冠賜使団長が参じる!」


「名をチョービッヒ・ゲーニキと申すものでございます!」


貴様、この進軍を見てわからぬのか!と副官とおぼしき男が言うのをロスコが手で制して、使者団長ゲーニキに話を許す。


「…我らは進軍中、時間はあまりない。簡潔に述べよ。」


「はっ!」


ゲーニキはクロスロード王国で起きた事象を簡潔に説明した。


「…なるほどな。フフフ…」


「驚きましたぞ、我々が戻ってきた時にはこれほどの軍が国境沿いに集っていたわけですからな。」


笑みを浮かべるロスコに戸惑いながらも周囲を見返りながら地平線の彼方まであろうかと言う距離に展開した軍を見るゲーニキ。


「まぁ、お前の想像通り、彼の国のものには私が直々に参ろうと思っていたからな。」


その言葉にゲーニキがギョッとする。


「国王の勅命でも発令されたので?!あなた様はともかく我らが国王がそのような機敏な対応をなさるとは…」


国王は金騎士に頼りっきりでお飾りの王と影でいわれているような人物であった。


「…そうだな。」


「…どうされたので?」


話半分に遠方を見据えたロスコにゲーニキが後ろを振り向くと、遠方から文字通り空を切る勢いで何かが突っ込んできていた。


「なんだアレは!?」


展開した他の兵士とともに、ゲーニキも驚く。


が、ロスコは眉ひとつ動かさず、右手を前に出し、黄金の光をその高速で接近する存在に投射した。


流石は金騎士殿だ、とゲーニキは称賛するが、


それを受け、減速したその存在はロスコたちの目の前に姿を現した。


「貴様は…!?」


「「「アンクロスロード!!」」」



当然、自分たちを撤退たらしめた存在を金冠賜使者団のメンバーが忘れるはずもなくゲーニキ含め全員がその名を叫ぶ。


「なるほどコレを受けてなんの反応もないと言うことは…」


ロスコはその言葉を言い終える前に打ち震える。




「ノアさまぁあああああ!!!!!」




その叫び声にゲーニキはギョッとする。


その声の主は金騎士ロスコだったからだ。


「その叫び…お前はまさか…」


叫び声を聞いたアンクロスロードの横にいた見知らぬ男が呟く。


「ロア…?」


そして今度こそ金騎士ロスコは絶叫した。



「我が主ィイイイイイイイ!!」



「流石でございます!!そう、わたくしはロアでございます!」


「やはりか。」



そのやりとりに使者団のメンバーとアンクのみ困惑していた。


「まさか、金騎士殿は…!?」



そしてそのやりとりにどんな意味があるのかをゲーニキは悟る。



「金騎士殿!!一体どう言うことなのです!?」


即座に問い詰めるゲーニキ。



「邪魔だ、伸されていろ。」



しかし、逆にゲーニキ含めた使者団全員が無力化されてしまった。


「しかし、実際どのようにしてこのようなことになったのだ?」


従軍しているものたちに捕縛される使者たちを横目に、ノアが、ロスコ、いや、ロアに尋ねる。


「コレも全てあなた様のおかげでございます。」



そこで、ロアは今朝の光の波動によって目覚めたことを告げる。


「私は【ホムラ】より前時代のものたちを逃がすよう貴方様の命を受けていました。」



「彼らをわたくしの異能とマハの秘術の応用でこの時代に逃がすことに成功したのはいいものの、ホムラによってこの時代の人物としての役割(ロール)を強制される呪いを受けたのです。」


そして私は私の権能と架空の伝説的戦士「金騎士」としてこの国を代表する地位を手にいれていました。と続けるロア。


「本来なら、無垢なるあの時代のものたちの手は借りるつもりはなかったのですが、彼らはこのように快くあなた様についていくことを了承してくれましたよ」


「なるほど、こやつら従軍しているもの全てがかの時代の観客たちか。」


納得するノア。

「本来なら異能者たちもこの輪に加えたかったところですが、彼らはミハイルに別の時代へ連れて行ってもらっています。」


「それでこのように重装した兵士が多いのであるな、お前の加護で怪我をしづらくしているわけだな」


無能力者が観客と言って差し支えないしな。と続けるノア。


そこまで言って、ようやくロアはアンクに気がつく。


「彼は…?」


「こやつは我が弟子だ、現在、我は此奴に取り憑く形で現界しておる」


「なんと…!!」


「初めまして、我が主に選ばれし者よ。」


「私はロア、個の位階や権能の本質を司りしモノ。

ノア様に選ばれたのであれば貴方もまた私の主人です。以後お見知り置きを。」


「金騎士って話にはよく聞いてたんだけど…なんかノアのせいで伝説の神秘性がなくなっちゃったな」


「まぁ、お話を聞く通り、ノア様がこうしてアラヴァンド王国の軍を吸収して、獣人の国、あやかしの国を倒したのであれば私なんかよりノア様の三国無双こそが最も神秘的でありましょう?」


ロアのその見た目にそぐわぬ、ひょうきんな物言いに

ハハハハハ、と一同は笑い、クロスロード領へと入っていくのだった。






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