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三国吸収・獣と妖

「(さっきのはいったいなんだったの…?)」


正直、5歳のアンクからすると埒外なやりとりであった。


「(弟子たる幼きお前に教えることがあるとすれば、善行は慈善事業ではないと言ったところか。)」


「(抽象的すぎない?)」


そんなことを話しているうちに、ダビダルの案内により、目的の地下施設に到着した。


すると中からローブに身を包んだ青年が出てきた。


「…」


「此奴は?」


「ハイ…こちらの者があなた様の器、【空の器】でございます。」


「…随分と既に成長させたようだが。」


「じ、実を申し上げますと、あなた様が炎王と争われる際にその器をご用意していたのでございます…」


「そうか、あの場にいた3人は【空の器】の形跡があった…彼らは炎王の器となる者だったわけか。」


「ッ!?…そのようなことまでお分かりになられているとは…!?」


「あの者らのうち、カイセイとやらは“あの世”へ送ってやった。その時我が権能で確かめた。」


「?!…さ、左様で…」


どうやら既にカイセイがこの世界にいないことを今知って動揺している様子のダビダル。


「まぁ、この者でも良いのだが…リリス。」


ノアが指を鳴らすと、


「メリーア…!?」


動揺に追い打ちをかけるように先ほど部屋に寝かせてきたはずのメリーアが平然と姿を現し混乱するダビダル。


「我に近寄る目的があまりに我が読み取ったそのシスターの情報と違ったのでな。先ほどの光は加護というわけではなくこの者の正体を暴くためのものだ…」


はぁ…と珍しくため息をつくノア。


「お前の胎内にあるのが我の【空の器】だな?リリス。」


大正解(だーいせいかーい)!」


声がメリーアのものとブレて別のものが被る。


その声は聞き覚えのあるものだった。


「(お母さん!?)」


「(そうか御前はリリスの神聖を母と勘違いしていたか。)」


精神世界的には、安価にも語りかけながら、ダビダルへと語りかけるノア。


「この者は貴様の妻、メリーアではない。」


「(もちろん、御前の母でもない。)」


「此奴は我と同じ世界より来た、出生を司る者だ。」


「名をリリスと言う。」


「驚かせちゃってごめんねー?」


リリスはそう断りを入れながら姿を変化させていく。


そこにはメリーアでも、アンクの母でもない、ツーサイドテールの女性が立っていた。


「このヒトって全然私に構ってくれなかってさぁ。」


「女性の体経由じゃないと顕現できなくってと、思ってたらメリーアちゃんなんかオカシくなっちゃってたからちょっと便乗しちゃった…☆」


ものの見事なテヘペロ顔で戯けるリリスだがノアは全く笑っていない。


「わ、我が妻は…」


「案ずるな、先ほども言ったがコレは別の女だ、貴様の記憶通り部屋で寝ているだろうよ。」


安堵するダビダル。


「まぁー、おかげさまでこうしてノア様の器♡用意できたからいいんだけどねー!」


「まったく、おおかた、前に会った時にはこの未来が見えていたのだな?我もこの選択をするまでこの未来は見えていなかってからな…」


そんな話をしていると、無口の青年が涙を浮かべ始めた。


「今、元々【空の器】になる予定の子に自我を戻したからある程度したらちゃんと育てるんだよ?」


「え…?!あ、ハイ…」


「うぅ…」


歳に似合わず涙目を浮かべる青年とだらだら今日を残し、リリスとノアは出口へ向かう。


出口からは階段だったのでノアがリリスを抱き上げ飛ぶ。


一瞬で上空へと飛び上がった。


〜・〜・〜・〜・〜・〜


「ではこのまま器に我を投影し我の分身を作成する」


「えーー!!風情がなーい!!!」


仕方ないな、とノアが一体を暗転させる。


「えっ…?!」


そうしてしばらく時がたった。


〜・〜・〜・〜・〜


『さて、新たな肉体も得たところだし早速“やる”か』


リリスを街に下ろして、再び上空へと上がったノアとアンク。


そう、ここに来て、自我を器に移したことで能力の実態はアンクに残しつつ、独立してノアが行動できるようになっていた。


「僕、この姿でしばらくいないといけないの?」


「仕方あるまい、我が権能でこの器の肉体を保護しておく必要があるからな。」


破天裁魔が器に刻まれるまでは、いかに分身といえど

アンクの肉体ほど安全ではないようだ。


「まぁ、我が扱う以上この肉体がやられることはないが、どちらかと言うと御前の肉体がガラ空きになってしまうからそれがメインだ。」


「あー、なるほど」


「では行くぞ。まずは獣人の国と、妖の国の国境へ行く。」


「わかった。」


二人は後を置き去りにするほどの速度で飛んでいった。


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


角視機動部隊という巡回部隊の隊長は風の流れ変わりを敏感に感じ取った。


「…なんだ?」


バン!!


隊長室のドアを開けて部下が入ってくる。


「隊長、大変です!!巡回中のシカザとクマーダが緊急連絡を!!じょ!上空から…!!」


「落ち着け!上空からなんだ。違法鳥獣タイプの暴走族か?それともまさか…妖の国の不法侵入か?」


「そ、それが…ヒューマンタイプの2名が“音を置き去りにする”ほどの速度で国境侵犯してきたようなのです!」


「何!?ヒューマノイドが?!」


隣国でのやりとりや自国内の無法者ならともかく、国境侵犯ともなるともはや巡回部隊の領域を超えている。

「(ヒューマノイドとなると、1番考えられるのはやはりクロスロード王国か!?機構帝国の機械人と言うのも考えられるが…どちらにせよ良い話ではないであろうことに変わりはないか!?)」


即座に獣王軍に連絡を取り応援を呼んだ。


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜


「来たようだな。」


蹄をが大地を蹴る、鉤爪が草木を傷つける音が遠くから聞こえる。


しばらくすると数万を超える獣人が軍勢の姿を現した。


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