イスラ・ドラクロスロード
「フン。」
イスラは音もなくレイジへと進む。
「なんだテメー!!」
魔法が打ち破られたこと、どこから出現したのかわからないこと、そして何よりレイジ視点では誰だかわからないということによって困惑と激昂がない混ぜになりながらレイジは攻撃のために低姿勢でイスラの懐に飛び込む。
「カスが。」
ドンッ!
と。
一撃でレイジが地に叩き伏せられる。
「ガッ…!!」
「雑魚は引っ込んでろ。」
「レイジ!!!」
ミューティーが叫ぶ。
しかし、一切を無視してアンクのみを射抜く眼光でイスラは佇んでいる。
「おい。」
呼びかけに答えないアンクに対し、そのまま歩みを進み始める
「お前だよ。お前。」
倒れ伏すレイジに目もくれずアンクに語りかけてくる。
「聞こえてんだろ?ボーヤ。」
相も変わらず答えないアンクにまぁ良いかという仕草をし。
「用があるのはお前じゃねぇ。あの白髪野郎を出しな。」
ミューティーがなんの話だという顔をしている。
「(…面倒だな。弟子よ、身体を使わせてもらうぞ)」
ノアがアンクと入れ替わる。
「あの人なら…」
右手を前に出し、視界を塗りつぶす眩い光と共に目の前にノアの姿が出現する。
驚くミューティー。
「(あれ…今後ろにいるのって…)」
「(あぁ、おまえを模した分身体だ。)」
実態はノアを呼び出したアンクの方が分身でノアの方が光と幻を合わせてそこから現れたようにアンクの姿から変容した形だ。
「よう、オヤジの前では世話になったな…!」
どうやらあの時ノアに叩き伏せられたことにご立腹のようだ。
「そうか、また跪くために来たというわけか」
「ぬかせ!!!!!」
イスラがこちらになんの体制でもない状態から一瞬で距離を詰めてくる。
炎王やミロクの攻撃速度を遥かに超えた異常な速度で格闘攻撃をラッシュで繰り出し続けるイスラ。
「(見ろ。弟子よ。コイツは武芸者としてはこの世界で見たものの中で今の所1番優れているぞ)」
そうアンクに語りかけながら左腕と姿勢変更のみで完全に捌き切っているノア。
「ハッ!まだまだァ!!」
次にイスラは両の手で掴みかかってくる。
「【神羅】、解放」
掴みかかってくるイスラの背には、まるで元々そこから生えていたかのように元の両腕とは別に更に二対の腕があった。
生えている箇所の影響か、元の腕よりも長いそれら4本の腕がさらに全く違った角度から打撃を繰り出してくる。
イスラが腕を解放し掴み掛かってくるまでは、その組みつきに対してグラップリング技術で、やはり左腕一本で打ち払うつもりであったノアだが、
イスラのその変化を見て後方へ、跳ねる様に下がりながら、指を交互に合わせる形で握る手印をつくる。
その手印は行動の実体ではない。
両の手を組む事でエネルギを体内で循環。
余剰エネルギーを飽和したエネルギーから産出し、エネルギーを増大。
コレを異常な速度でノアは行っていた。
「その変化はおそらく貴様の異能を介したものであろう?」
「しかしその程度の芸当であれば、異能の力など用いらずとも、再現可能であることを教えてやろう。」
ノアは全身を光の圧縮された膜のようなもので覆っていた。
それはミロクとの戦闘で見せたものであったが、
今度は腕を覆っていた膜から腕と同型にエネルギーが分裂し、中が空洞なオーラの腕が出来上がる。
さらにノアが力を込めると増大されたエネルギーが注ぎ込まれ、まるで光で作られた本物の腕の様に存在感を顕にする。
その間にもイスラは距離を詰め攻撃を繰り出すが先程のやりとりで完全に動きを見切ったのか、今度は左腕すら使わずに身動ぎだけで回避し続けているノア。
「ガァアアアッ!!!」
痺れを切らし、イスラが三対六本の腕全てで掴みにかかる。
「なんぞ。そんなに取っ組み合いがご所望か?」
しかし今度は避けることはせずに、ノアは真正面から全ての腕で組み合う。
ニヤッと笑みを浮かべるイスラだが、すぐに笑みが掻き消える。
グググ…とシンプルなパワーで押し倒さんばかりに圧力をかけるノア。
まるでイスラは大岩を抱き抱えるも重さで押しつぶされそうになっているかのように、上体を海老反りにして耐えている。
「バ…バカな…!!この俺がパワー負けするだと!!??」
ついに限界といったところまで押し込められたイスラは絶叫する。
「【魔竜】、解放!!!」
胸元から一斉に鱗が創出され、頭部、背部、腕甲部に生え揃う。
さらに頭部は大きく何か首元から生えてきた皮によってに包まれたことによって二重に鱗に覆われて竜の頭部となり、
肩口からは小さな物置程度の小屋なら軽く包めてしまいそうなサイズの翼が広がり、
腰の辺りからは人間の腕二本分はあろうかという太さの尾が生成された。
翼による羽ばたいた時の揚力と竜となった頭部の灼熱の息吹で文字通り煙に撒くイスラ。
距離をとったイスラは体内オーラを全開にする。
イスラはくぐもったのエコーのかかった声で、
「ハァ!!まだ俺の変化する様はこんなものではないぞ!!」
と躍起になったような声を上げ突進する。
しかし、それを無視して目を閉じたノアは、
「(すまんな弟子よ、やはり我が出張ってしまうと相手の積み重ねた物を壊してしまうようだ。)」
とアンクに語りかけた。
そして、
「もう一度鍛え直してくるが良い」
右手に渾身のエネルギーを溜め込む。
それにイスラは反応して、
「それは貴様の本力か!?!?面白い!!」
「そのチカラごと貴様を撃ち破ってくれる!!」
速度を上げ亜音速となってノアへと接触しに行く。
だがその言葉を聞き、やはり落胆した様子でノアは、
「 無 様 。」
イスラに触れさえせずに渾身の一撃を空で炸裂させ、
発生した空間が歪むほどの衝撃で後方の王城の裏門を破壊させるほどの速度で吹き飛ばした。
「(もうここに此奴を超える武芸者はおるまい。
あとはお前でやるのだ我が弟子よ、力は貸そう)」
そう言ってノアは、
能力解除され倒れ伏したイスラを、レイジにイスラがしたように目もくれずその横を通り過ぎていった。




